❄42:ゴドフリー様かフリーナ様か。
フリーナ様とアレイダとはブックカフェの前で別れ、お屋敷に戻りました。
馬車を降りると、既に王城から戻られていたランヴェルト様がエスコートしつつ迎えてくださいました。
「本日は早かったのですね」
「ああ、色々と準備が必要になってね」
アーデルヘイト嬢に対する告発状が受理されたため、早急に裁判の準備を始めなければならなくなったそうです。
「とうとう……」
「ん。裁判では嫌なことを聞かされるだろうが……すまない、耐えてくれ」
「大丈夫です。何があろうとも、私はランヴェルト様を信じていますから」
「っ、ん」
ランヴェルト様の照れたお顔は、何度見ても素敵で可愛らしく、ずっと見つめていたいです。が、あまりじっと見ていると怒られてしまうので程々にしておかねばなりません。
調節が難しいところです。
夕食にはまだ早い時間でしたので、二人で執務室へと向かいました。
コニング家のファイルを取り出し、必要なデータを抜き出して行きます。
断罪すると決めてから、アーデルヘイト嬢たちから届く手紙は全て取っています。開くことなく、そのままの状態で。
「破り捨てていたことを少し後悔したが、問題ない程度に溜まってしまったな」
「はい。少し変な気分ですが、感謝のようなものを感じてしまいますね」
「ふっ……確かにな」
二人でクスクスと笑いながらも、しっかりと書類の相互確認。
抜かりなく、準備を進めます。
夕食時はなるべく断罪裁判の話はしないことに決めました。
なので、今日あったことの報告などの話に花を咲かせました。
フリーナ様とばったり出会ったこと、アレイダと意気投合し仲良くなっていた事など。
「あいつがブックカフェに? 外出するなんて珍しいな」
「そうなのですか?」
「あの見た目だし、地位のこともあるからね。店も完全予約制で訪問は無しだろう?」
そういえばそうでした。
初めてお伺いしたとき、なぜ直近の予約なのにドレスを作っていただけたのかしら? と不思議でたまらなかったのを思い出しました。
「もしかしたら私がおすすめしたせいかも?」
「ん?」
あそこのブックカフェは、マスターの趣味が高じてオープンしたお店で、とても希少な本が多数置いてあるのです。
普通のものならば、読みながら食事も可能なのですが、マスターの認めた本好きの人物のみが入れる飲食厳禁の稀少本部屋というものもあるのです。
「なるほど。ゴドフリーはそれに釣られたな」
「ランヴェルト様っ」
「ん?」
「フリーナ、様です」
「…………突っ込むのは、そっちなのか」
なぜか大きなため息を吐かれてしまいました。





