❄39:固い決意と揺るぎない意思。
ランヴェルト様からのやきもちは、なんというか可愛らしいものでした。美麗かつ冷淡な見た目とのギャップのせいかもしれませんが。
ちょっといじけられているところも、また可愛いところのひとつでしょうか。
「男性に対して『可愛い』と感じる意味が理解できました」
「かわ…………いい」
「はい。ランヴェルト様は可愛いです」
「かわいい…………」
「はい!」
うんうんと頷きつつ返事をすると、またもや眉間に大峡谷を刻まれてしまいました。
「嬉しくないが、嬉しい」
「どっちなんですか」
「ぐぬぬ…………どちらかといえば、嬉しい」
「うふふふふ」
悔しそうにそう言われるランヴェルト様は、やっぱり可愛かったです。
ランヴェルト様とちゃんとお話をしようと決めてからというもの、毎日がとても彩り豊かになりました。
相変わらず、アーデルヘイト嬢や他のご令嬢からの謎の手紙は届いていますが、ランヴェルト様が勢いよく破り捨てています。
「中身は確認する?」
「いえ、大丈夫です……というか、飽きました」
「飽きた! んはははは! そうだよな、飽きたよな!」
二度ほど確認はしていたのですが、意味不明な文章の羅列は、もうお腹いっぱいになってしまいました。
ランヴェルト様がお腹を抱えて笑っていますが、そんなに可笑しいことだったのでしょうか?
「んははっ。ん、飽きた。私も飽きたんだよな、うん。そろそろ、終わらせるか」
「終わらせる?」
「ん。今までは、あれらの対応で余計な仕事が増えるのが嫌だった。私が放置していれば、たぶんなんの変化もなく時が過ぎるからな」
アーデルヘイト嬢は精神病院に入れられており、外出などは一切ないうえに、決められた回数の手紙のみ。
妄信者のご令嬢たちは、何年も何年も手紙を送って来たり、夜会で挨拶したそうに近寄ってくるだけだったそう。
「だが、終わらせる」
「なぜですか?」
放置していれば何も起きないのであれば、そのままでも良いのでは? と私は思いましたが、ランヴェルト様は違ったようです。
スッと真面目なお顔でこちらを見つめて来られました。
「これ以上、他人に私たちの生活を邪魔されたくないと思ってね。君やいつか産まれる子どもを守るのは、私でありたい。だから、私が終わらせる」
晴れ渡ったような空色の瞳には、固い決意と揺るぎない意思が宿っているように見えました。
「できる限りで構いませんので、私にもお手伝いをさせてください」
「ん。ありがとう」
感謝の言葉とともにふわりと微笑んだランヴェルト様は、とても美しく眩しかったです。





