❄38:フリーナは、ゴドフリーである。
結論から言うと、『コニング家』というファイルは、今までランヴェルト様が調べてきたコニング家の不正や怪しい繋がりなどがわかりやすく書かれたものでした。
「あいつ、マメなのよね。執務室、資料ばかりでしょう?」
「はい」
お父様も王城勤務の文官ですが、役職などは特についていません。家で執務をすることも多いのですが、執務室には本や資料はあまりありませんでした。
ランヴェルト様の執務室は、本当に資料が多く、普通の書籍でさえも基本は技術や知識系のものでした。物語などはあるものの少なめといった感じです。
「あら、物語系もあるのはあるのね」
「そうなんです。数冊だけ恋愛ものも。あとは冒険や歴史、戦争ものが多いですよ」
「恋愛!? アレが!? いっがぁぁぁい!」
フリーナ様が目を見開いて驚いたあと、バンバンと机を叩きながら笑い出されました。
恋愛ものの本を持っているのが、そんなにも意外だったのでしょうか?
装丁が綺麗だったので、わりと最近購入されたようだとお話すると、フリーナ様がニタリと笑みを零されました。
「ある意味、成長したのかしらね」
――――ある意味?
どういう意味なのかお聞きしたのですが、教えてくださいませんでした。
そして、どうしても気になるなら本人に聞くように、と言われてしまいました。
夜、寝室でランヴェルト様と寝酒を飲みながら、フリーナ様から言われたことをお伝えすると、ムッとしたように眉間に大峡谷を刻まれました。
聞かれたくないことだったのかしら? と少し不安になっていましたら、ランヴェルト様が大きなため息を吐き出されました。
「テレシア……アレは男だぞ?」
「アレ? あ、フリーナ様ですか?」
「違う、ゴドフリーだ」
一緒では? と喉から出そうになりましたが、ぐっと飲み込みました。
「どちらの性でも気にしていませんでしたが、なにか問題でもあるのでしょうか?」
「アレと……………………二人きりだったんだろう?」
「ええ」
なぜかランヴェルト様のお顔が苦々しいものになります。
「未婚の男だぞ」
――――あっ!
「なるほど、やきもちですか」
「っ!」
ランヴェルト様のお顔がみるみるうちに朱色に染まっていきました。
まさか、フリーナ様相手にやきもちを焼いていただけるなと思ってもいなくて、とても擽ったく感じます。
「そうですね、未婚の方ですものね。でも、お友達ですので、お会いするのをやめたくありません」
浮気など、絶対にあり得ないと言い切れるのですが、どうやって信じてもらったらいいのでしょうか?





