❄34:考えを整理する。
ランヴェルト様がお仕事に向かわれたので、もう一度だけアーデルヘイト嬢の手紙を読み直してみました。
ランヴェルト様から聞いた話によると、アーデルヘイト嬢はランヴェルト様に相応しい婚約者選びに尽力されていた、とのことでした。
ご自身の婚約者の生まれ変わりだと信じていたのなら、なぜ他の人物を充てがおうなどと思ったのでしょうか?
そもそも、彼女の婚約者が亡くなられた時、ランヴェルト様は既にお生まれになっていたはず。
『アーデルヘイト嬢の頭が可怪しいから』では済ますことが出来ないズレのような気がするのですが、生まれ変わりだと思った要因は何なのでしょうか?
ランヴェルト様が帰られたら、またお話してくださるそうなので、それまでに考えやお聞きしたいことをまとめておこうと、資料棚から当時の新聞を探しました。
ランヴェルト様の執務室の本棚は、右手側が資料で左手側が書籍になっています。
自由に見ていいと言われていたので、書籍棚の方から本をお借りしていました。資料棚の方はお仕事関係も多いでしょうから、あまり勝手に見ないようにしていました。
「えっと、四年前の……あ、これね?」
火災が起きた頃の新聞を捜し出し、ファイルを抱えました。一ヵ月毎にファイリングされているので、とても助かりました。
火災の翌日は侯爵様たちの死と怪我人の報道記事。
数日後には追悼式の記事。
そして、その二週間後に侯爵夫人が心の病から、祖国に帰る事になったという記事。
そして翌月の新聞に、アーデルヘイト嬢も心を病んだとして、精神病院への入院が決まったという記事を見つけました。
アーデルヘイト嬢は、それからずっと病院にいらっしゃるようです。
どなたかと面会した際に手紙を渡しているのか、決まった期間で手紙を書くことを許されているのか、よくは分かりませんが、そこは横においていてもいいでしょう。
なぜ、ランヴェルト様は手紙を送り付けることを許しているのでしょうか?
読みはしないものの、アーデルヘイト嬢からの手紙や彼女の取り巻きからの手紙さえも、屋敷に届いています。
正直、気持ちの良いものではありません。
ランヴェルト様のお気持ちや考えをしっかりとお伺いしたいです。
どこまで踏み込んでいいのかも悩みます。
いくら夫婦とはいえ、全てを知り尽くし秘密など一切ない、ということは無理だと思っていますし、そうしたくないとも思っています。
私は、お父様とお母様のことを聞かれたくはありませんし…………。
秘密ではないものの、話して気持ちいいものではないし、説明したくない、という思いが大きいのです。
もし、アーデルヘイト嬢のことがそれと同じような気持ちなら、無理に聞き出したくはありません。
でも、知りたい気持ちも大きくて、とても悩ましいです。
――――ままならないわね。





