❄26:操作されるお茶会。
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初めは違和感などもなく、穏やかに始まったように思えていた王城庭園でのお茶会。
だがしかし、三十分もしないうちに異様な空気が漂いだした。
とある令嬢がグラスをフォークで叩いて高音を鳴らし、注目するよう合図したのだ。
「ランヴェルト様の美しさを後世に残すためにも、私が認めた者しか婚約相手として認めませんわ!」
そう高らかに宣言したのは、侯爵家令嬢であるアーデルヘイト・コニング。
意味がわからずぽかんとしていると、周囲にいた令嬢たちから拍手が起きた。まるで、その宣言を支持するかのように。
そう話すと、テレシアがぽかんとした表情になった。
やはりそうなるよな? 私も今の君と同じ顔になったんだよ? と微笑むと、テレシアがほにゃりと微笑み返してくれた。
同じように感じてくれている人があのとき側にいてくれたのなら、もしかしたら何か変わっていたのかもしれない。
だがそれは『たられば』であり、きっとあの場にテレシアがいたとしても、私は恋に落ちなかっただろう。今の私だからこそ、テレシアを愛することが出来た。
あの日に参加していた者たちは、全員が憎悪の対象だったから。
アーデルヘイト・コニング。
その女は、参加していた未婚の令嬢の中で年齢が一番上だった。
そして、地位も。
参加者たちは異論を唱えることもなく、アーデルヘイト・コニングの意味のわからない宣言を受け入れ、自分は不適格だとか、あの子なら合格ねとかなんとか話し始めた。
その中でも一番多かったのは「アーデルヘイト様が一番お似合いですわ」という声だった。
だが彼女は言う。
「私は、年齢が離れすぎています。貴女たちの中で、一番の不適格者よ。私は、貴女たちを応援したくてここに来たの」
それはまるで、この茶会の主催者のような振る舞い。
父はそれをジッと見て、微笑んでいるだけだった。ただ、その笑顔の後ろには恐ろしいほどの思惑が隠されているのだろう、ということだけは解った。
その後も、アーデルヘイト・コニングの暴挙は続く。
私に話しかける人間を厳選し、順番を決め、合否を決める。
なぜ当たり前のように皆が受け入れるのだろうか。
私は反発したかった。制御したかったし、排除したかった。
だが、父が視線のみで『待て』と言う。
まだ身体も心も幼かった私は、それに従うしか出来なかった。





