❄25:ランヴェルト様が幼い頃は。
いつもはほぼ無言の食事。
今日も、ほぼ無言ではあるのですが、お互いにチラチラと見つめ合っては照れ笑いのようなものをしています。
「――――美味いな」
「はい」
「ん」
そんな会話のみなのに、心臓がキューッとなります。
ときめきが止まりません。
以前の私なら、『何かの病気かしら?』と悩み、医者を呼んで診察してもらったに違いありません。
人は、いくつになっても学べるし、成長できるのですね。
夕食を終え、向かったのは夫婦の寝室でした。
ソファに並んで座っていると、侍女がワインやおつまみなどをテーブルに並べ始めました。どうやら、少し飲みながら話したいようです。
ランヴェルト様がワインを一口飲んでから、ぽつりぽつりと話し始めてくださいました。
ランヴェルト様が幼い頃は、それはそれは可愛らしく女の子と見紛うほどだったとのことでした。
そこで、今も大差ないのでは?とは言えませんでした。時折、美女に見えることがあるのですが、どうやらご本人的にはそれが不服なようです。
当時、陛下や王弟殿下はランヴェルト様と他国の姫の婚約も視野に入れており、積極的に交流をしていたそうです。
何度か話が進むものの、結局は国同士の権力争いの温床になりかねないとのことで、国内で探すことにしたそうです。
「当時、十歳だったが――――」
婚約者探しとして開催されたお茶会に参加したのは、二十歳から一歳の令嬢たちを連れた国内の貴族たち。
ずいぶんと幅広い年齢の方が……と思っていましたら、大っぴらに集めたわけではなく、近しい年齢の令嬢や子息がいる家に招待状を出したとのこと。友人探しの名目で。
子息のみの家にも招待状を出していたそうですが、ほとんどの家が子息ではなく、親族の娘を同伴させていたとのことでした。
「あー……」
「予想通り?」
「はい」
王族との結婚は、どの貴族も喉から手が出るほどに魅力的なのでしょうから。
「テレシアは参加していなかったな」
「伯爵家ですし、そもそも招待していないのでは?」
「いや。子爵家まで出していた」
「あら? では故意的に参加しなかったのでしょうね」
王族に一人娘を嫁がせたら、産まれてきた孫を伯爵家にもらえないかもしれない、という懸念で。
「……伯爵は昔からブレないのだな」
「ええ」
「まぁ、それは横に置くとして」
発端と言える出来事は、このお茶会から始まったそうです――――。





