❄17:すれ違う氷たち。
結婚式の打ち合わせだなんだと、忙しく過ごしているうちに、いつの間にか式まで残り一ヶ月になっていました。
相変わらず氷の貴公子様とのデートは続けています。
会話は…………相変わらず少なめですが、以前よりは話しているような気がします。
今日もいつも通りのデートをし、馬車に揺られながらの帰路。
いつも通りに特に会話もせず、流れる景色を眺めている時でした。
「来月、結婚式だな」
氷の貴公子様がぽそりと呟かれました。
「それがどうかしましたか?」
何か問題でも発生したのかと思い、そう聞き返しましたら、氷の貴公子様にスッと視線を逸らされてしまいました。
「あー…………私はお前を愛することはないと言ったが――――」
「ああ、そのことですね。はい、大丈夫ですわ。私も愛だの恋だのに興味はありませんでしたから」
「――――君に興味が…………あ、うん」
「ん? はい?」
氷の貴公子様と言葉が被ってしまい、聞き逃してしまいました。
もう一度お話をとお願いしたのですが、馬車の向かい側に座られていた氷の貴公子様は、顔を窓の方に背けてそれ以降は無言になられてしまいました。
ただ『あの時の言葉は気にしていない』と伝えたかったのですが、言葉のチョイスを間違ってしまったようです。
眉間には皺が寄り、固く目を閉じられていました。
これは、話しかけられたくないという、意思表示なのでしょうか?
氷の貴公子様のご機嫌を損ねてしまったようですね。
窓から射す夕陽に照らされた氷の貴公子様のお顔は、うっすらピンクとオレンジの間のような色に染まっていました。
妙に神秘的でいて声を掛けづらい雰囲気です。いつもなら気にせずに私も窓の外を眺めるのですが、今日はなんだか落ち着きません。
何かを話しかけなくてはいけないような気持ちになるのですが、何を話したら良いのかわかりません。
こんな時、友人たちやフリーナ様ならどうするのだろう?なんてことを考えているうちに家に到着してしまいました。
馬車から降りると、氷の貴公子様は「失礼する」とだけ言い、馬車に乗り込み去っていかれました。
なんとなくいつもと違う去り際に、すこしだけ寂しさが募ります。
馬車で何かを聞きそびれて以来、氷の貴公子様が我が家に訪れることはありませんでした。
お父様は「結婚は確定している。式をして子どもを生めばいいだけだろう」と何も気にしていません。
良くも悪くも、家の存続以外に興味がない人なのです。