❄15:黒髪の少女と友人。
アレイダが前のめりで氷の貴公子様とのデートの内容を聞いてきます。
何が面白いのか、話すたびにくすくすと笑われています。
「無自覚って、面白いわね」
「何が?」
「あははは! テレシア、あなた以前より驚くほど表情が出るようになってるわ」
そう言われて、ふと気付きました。
氷の貴公子様がとにかくずっと見つめて来るのですよね、顔を。だから頑張って笑顔を作ってみたりしていましたが、その効果があったのでしょう。
「うん、絶対にそれじゃないわ」
「えぇ?」
「あははは! ほんと、面白いわ!」
「私は面白くないのだけれど?」
「ごめんごめん」
アレイダは終始楽しそうに笑いながら、もっと聞かせてと言ってきます。
私も色々と話したいことがあったので、ついついおしゃべりしてしまいました。
「よく分からないのよね、彼」
「何が?」
「初対面の時のあのセリフ」
「うん」
契約結婚だからこそ、相手もそのつもりだったんなら生活しやすいだろうなぁと思うと、ホッとしたのよね。
愛せるか少し不安になっていたところだったから。
そもそも愛さなくてもいい、と本人から許可が出るなんて思ってもみなかったし。
なのに、蓋を開けてみれば、普通の恋人たちのようにデートを重ねている。
普通、愛のない契約結婚ならば、次に逢うのは結婚式当日か前日じゃないのかしら?
「対外的な行動だとしても、週一でのデートって多すぎない? 彼、いままで恋人とか居なかったのかしら? それとも、過去にお付き合いした方とのデートが頻回だったせい?」
そもそも、折角のお休みを私で潰して良いのかしら?
「ふふっ。安心なさい、氷の貴公子様にそんなお相手はいなかったわ」
「安心?」
「そ、安心」
アレイダがうんうんと頷きますが、意味が分かりません。
「それがなんで安心に繋がるの?」
「うーん。無自覚よねぇ、ふたりとも。それを外野の私が言うのって、何だか出歯亀感が酷いのよね」
「意味が分からないわ」
「そうね、次に氷の貴公子様とお会いするときに、もっとちゃんと会話をしなさい。貴方たちは、先ずお互いを知ることから始めたほうがいいわ」
アレイダの話している言葉はとても簡単で、理解できるはずなのに、意味がわかりません。
結果、『お互いを知る』というなんだか友だちになる初歩の初歩のようなことを勧められてしまいました。
ですが、実際のところそれさえも出来ていないのが私たちなので、アドバイスは真摯に受け止めて、実行に移してみようと心に決めました。