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シシリア入魂の天使、爆誕

 私が平民になり、グロスロード侯爵家で働くようになって1年が経った。

 

 

 

 私の家族同様の使用人だったイザベラ、ボブ、ジョーンズも、マメに手紙のやり取りをしている。

 

 

 紹介して貰った伯爵家では、ご年配の穏やかな主人夫婦にとても優しくして頂いており、前からいた数名の使用人とも円満な関係を築けているそうで、ルーツおじ様には感謝の手紙を書き、自分も頑張って働いているので心配しないで欲しい、と追記した。

 

 

 

 さて。

 勤めて早々に取り組み出したサラ様のヘルシーダイエット計画だが、

 

「チョコレートを……チョコレートをちょおだぁい」

 

 と時々ゾンビのような発作が起きるサラ様に負けてケーキやチョコトリュフなどを与えてしまったため、ちょいちょいリバウンドが起きたが、食べて増えた分は運動で減らして頂くということで、縄跳びや反復横飛びなど地味に辛い罰ゲームを増やしたところ、体を動かすのが苦手なサラ様が、

 

「食べたいから運動する」

 

 という主に食欲による積極性を見せるようになったので、段々とリバウンドする事も少なくなった。

 

 食べたい物をずっと我慢するのは大人でも辛いのだ。少々のリバウンドはしても、たまにはストレス解消もしないとね。

 

 

 食事の回数も今ではご主人様と同じく1日3回。

 少々食べ過ぎるのも大好きなメニューが出る時だけで、許容範囲である。

 

 一番良かった事は、野菜もそれなりに粉々にしたりドロドロにしなくても食べて頂けるようになった事。

 それと、体調不良になる事も殆どなくなった事だ。

 

 まあ風邪ぐらいは誰でも引くが、以前のように4、5日はベッドでぐったりなんてこともなく、1日2日大人しく寝ていたら治る。

 

 バランスのいい食生活って大事だわー。

 

 

 そして昨日、サラ様の体重はとうとう30キロを切り、29キロになった。ほぼ1年で13キロ減だ。少し背も伸びた。

 もうデブとは誰にも言わせない。

 

 フワフワのプラチナブロンドの髪も艶やかで、グリーンの瞳もキラキラ輝くぱっちり二重の美少女である。

 元から可愛いとは思っていたが、痩せたら想像以上の可愛さである。

 

 感動したご主人様には金一封まで頂いてしまった。

 

「本当にすごいよシシリア! うちの天使が本物の天使になった!」

 

 ふっくらした手でぶんぶん握手をされたが、この1年でまたご主人様は少々膨らんでしまった。

 恐らく130キロ前後はあるんじゃなかろうか。

 

 180センチほど身長があるし、割りと領地の視察やお仕事でアクティブに動いている方なので、ぼこんとお腹だけが出るような太り方はしていない。

 それでも前に立たれると視界が一気に悪くなる位には大きい。ふくよかの限界突破だ。

 

 つい前世の好みとリンクしてしまい、包容力のありそうなボディーにうっとりしそうになるのだが、もうリフォームに取りかからないと健康に悪い。

 

 

 

 だが、今日の休みはサラ様のトラウマ除去だ。今はそちらを優先せねば。

 

 

「シシリアー、お出かけの準備出来たわー」

 

 私の部屋をノックしてサラ様が顔を覗かせた。

 本日はサラ様のドレスの注文や、普段使いのワンピースなどを買いに行くのである。

 

 身長が伸び、痩せてサイズがかなり変わったせいで、持っていた服が流石に見栄えがよろしくない状態になったからである。

 

 運動をするようになったサラ様は、屋敷の中では運動着トレーナーとゴムウェストのパンツに馴染んでしまい、全くワンピースなどを着なくなってしまった。

 

 屋敷の中では運動もするしそれでもいいのだが、侯爵令嬢がいつまでも運動着でわーいではマズいのだ。

 

 そろそろ一般教養やテーブルマナーなど淑女としての教育も始まるだろうから必要になりますよ、と気乗りしないサラ様を無理矢理買い物に誘ったのである。

 

 気が進まない理由は分かっている。

 

「すっげーデブ」

 

 とイケメン少年に言われた事を気にしているのだ。

 

 もうデブじゃないですよと何度も言ってるし、本人も前よりは痩せたという認識はあるのだが、屋敷の外に出ないので、どうしても客観的に見られないのだろう。

 

 私たち使用人やご主人様が可愛くなったとかスリムになったとか言ったところで、身内目線でオーバーに言ってるだけだと思っている。

 

 あれから町に用足しに出る時も全く付いて来たがらなくなったので、気になっていない筈はない。

 乙女心は傷つきやすいのである。

 

 もうあの時のサラ様ではないのだ、という事を本人にもキチンと理解して頂かなくては。


 

「お待たせしました。では参りましょうか」

 

 来たばかりの頃に作られたという白いワンピースは、まだあれほど太る前の物だったが、それでもかなりブカブカだ。でも、レースのカーディガンを合わせてカチューシャをしたサラ様は、それはそれは可愛らしかった。

 

 将来引く手あまたの美貌の令嬢になりますねえ。

 流石シシリア自慢のお嬢様ですわ。

 

 ……ですから、心のトゲは早めに抜きませんとね。

 

 

 

 私はサラ様と手を繋ぎ馬車へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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