2-60.悪戯な火曜日
「オリンピュアスは、アルコールを飲んじゃダメね。」
アリーが、そう言うのも、分かる。
そもそも、こんなにビールを飲んだのは初めてだ。
グラスを伝う雫が、私には、涙に見えた。
そっと、指で涙をぬぐうと、一気にグラスの中身を飲み干した。
胃に、冷たい液体がしみる。
口の中に、苦味が残り、その苦味をすすぐように、次のグラスを空けた。
ビールは、あっという間に無くなっていく。
明日、エウリュア様が、教会前診療所から、退院される。
想いを伝えるまで、時間がない。
新しいグラスから、あふれようとする泡を、黄金色の液体と共に飲む。
「馬車の用意が整ったみたいね。
オリンピュアス。ちゃんと、寮に帰るのよ。」
遠くで、アリーの声が聞こえた気がした。
[美容師の娘] 【 2-60.Tuesdayにkissをして 】
「へぇ、ここがアリーの王都の家なのね。」
私は、シンデルラララ城・・・じゃない、寮には、戻らなかった。
オリンピュアスたちは、戻ったけどね。
たちの悪い酔っ払いは、さっさと帰らせるに限る。
で、なんで戻らなかったかっていうと、ミラドールだ。
宿を引き払っていたらしい。
そだね。
観戦チケットを取れなかったから帰るって言ってたもの。
寮に連れて行くわけにもいかず、美容院の方に帰宅することにしたのだ。
マーガレットには、寮に戻ってもらった。
この、お家で侍女が居るのは、なんかヤダから。
「アリー、こっちに来て。飲むよー。」
いや、ミラドール。
私は、アルコールなんて飲まないから。
オリンピュアスも、ライレーンも、ライリューンも、何も気にせずビールを飲んでいたけれど、こんな年齢からアルコール飲んで大丈夫なのかしら?
ここの世界の常識が、分からない。
「アリーは、付き合いが悪いわね。
こういう時は、一緒に飲むものよ。」
明日も、試合見に行くんでしょ?
そんなに飲んでどうするのよ。
二日酔いで起きれないわよ。
この酔っ払いも、たちが悪い。
私は、庭の野ばらに少し手を入れた後、昔のままの、お風呂に入った。
寝室も、昔のままで、このベッドは、久しぶり。
なんか、懐かしい気分。
私は、思い出に包まれながら、眠りに落ちた。
ビールを飲み続けるミラドールを残して。
******************************
左腕は、まだ革のベルトで吊られているけれど、体は、すでに元に戻った。
荷物は小さな袋のみ。右手で持つことが可能だ。
診療所の前に立つ エウリュアの目の前に、馬車が止まった。
エペイロ伯爵家の紋章が刻まれた馬車の扉は、音もなく開き、中から一人の少女が降り立つ。
もちろん、オリンピュアスである。
「エウリュア様。お迎えに上がりました。
どうぞ、エペイロ家の客人として、お越しくださいませ。」
今日の朝、退院のための準備をするエウリュアの元に、エペイロ伯爵家の使者が、訪れたのだ。
パンクラチオン優秀者として、客人として招きたい・・・と。
騎士団学校を中途で辞めることに、躊躇や迷いがなかったとは、言わない。
しかし、意識を失っていた間、献身的な介護をしてくれていたのが、このエペイロ伯爵家の令嬢であること。 そして、客人として令嬢の護衛に当たってほしいとの要望を聞き、それに応えることにした。
この馬車は、そのための迎え。
目立つことはしたくない。
周りの目を気にしながら、馬車に乗り込んだ。
馬車は、音もたてずに 飛翔師 学院の門をくぐり、その寮へとむかった。
寮と言うには、あまりに豪華。
城と呼んでも良いその建物の上層部が、私の新しい仕事場である。
「エウリュア様。こちらですわ。」
令嬢自らが、案内をするあたり、客人として、私は厚遇されているのであろう。
豪華なフロアの中の小さな一室・・・と言っても私が今まで住んでいた部屋の倍はあるのだか・・・そこが私の居室であった。
「あぁ、左腕がまだ使えませんものね。
お手伝いいたしますわ。」
いくら少ないからといって、伯爵家の令嬢に、私の荷物の片付けなどをさせるわけにはいかない。
あわてて、止めようと、自由になる右腕を伸ばした。
「あら、エウリュア様。
ずいぶんと、積極的・・・大胆なのですわね。」
いや・・・そんなつもりは。
どうしたことだろう。
何のはずみなのかは、分からないが、まるで、飛び込んできたかのように 美しい令嬢は、私の右腕の中に。
「エウリュア様。
私のことは、オリンピュアスとお呼びください。」
「オリンピュアス・・・さま。」
「様は、必要ありませんわ。」
令嬢・・・いや、オリンピュアスの体温が、服ごしに、私の体を焦がす。
彼女の腕が伸び、私の首にかかる。
「エウリュア様の体は、大きすぎますわね。
全然、届きませんわ。」
ぐっと、腕に力を込められ、彼女の顔が私に近づいてきた。
吐息が、首筋にかかる。
「オリンピュアスさま・・これは、よいことではありません。」
突然の出来事に、声が出ない。やっと出た言葉が、これであった。
「このように、誰もおらぬ部屋ですわ。
様は、必要ないと言っておりますのに・・・。
エウリュア様は、 きまじめ ですわね。」
彼女の高い鼻が、私の頬とぶつかった。
「エウリュア様。
ここが、あなたの居場所でございます。
しばらくお休みになって、英気を貯めてくださいませ。」
=== ===== === ===== ===
ふんわりと、甘い香りが鼻をくすぐる。
私の口に、やわらかな唇が押し付けられた。
=== ===== === ===== ===
ちゅーズディに、チューしたことがある人は、高評価を押して次の話へ⇒
蛇足1.シートベルトの耐久性。
左腕は、まだ革のベルトで吊られているけれど、体は、すでに元に戻った。
寧波均勝電子という「中国」の会社があります。
「米国」のキー・セイフティー・システムズの100%の親会社です。
2017年6月26日、負債総額1兆円以上の負債を抱え倒産した「日本」のタカタという会社は、このキー・セイフティー・システムズに譲渡されました。
2018年4月11日に、事業買収は完了し、タカタは、ジョイソン・セイフティ・システムズに改称しました。
さて、この会社、先日、シートベルトの品質に関する数値を改ざんしていたことが、2020年10月に判明しました。 6月18日に、このデータ改ざんの調査結果が発表されたのですが、滋賀の工場では20年間、フィリピンの事業所では14年間、改ざんが、続いていたそうです。
安全性に問題がないそうなので、内容自体はそこまで気にしていないのですが、この会社、中国の会社、米国の会社、日本の会社、どこの国籍の会社として報道されるのか、ちょっとニュースが楽しみです。
蛇足2.スマホの充電
エウリュア様。
ここが、あなたの居場所でございます。
しばらくお休みになって、英気を貯めてくださいませ。
充電とは、電気を貯めることです。
例えば、清掃員などをしていて、清掃をしているときに、スマホの充電が切れそうだったら。
もしかすると、問題なさそうなコンセントを抜いて、充電してしまうかもしれません。
清掃業務を受けている会社で。
キルギス共和国の首都ビシュケク州立診療所。
ここで、清掃業務を請け負う清掃員も、そのような形で、スマホの充電をしてしまったそうです。
コロナワクチンの保管用の冷蔵庫のコンセントを抜いて。
1000回分が廃棄となったそうです。
日本でも、職場接種が始まっていますので、清掃員の方、スマホの充電には注意してほしいですね。
蛇足3.イラン
いや、ミラドール。
私は、アルコールなんて飲まないから。
ビールなんていらないよ。
いらない、いらない、いら・・・。ごめんなさい。
イラン大統領選。
今日の夜に結果が分かりそうな感じらしいですね。
ラリジャニ前議長や、ジャハンギリ第1副大統領など、ロウハニ政権を支えた穏健派・改革派の有力候補者が事前失格していますので、反米・保守強硬派のライシ師が当選するのは決定的だそうです。
イランの選挙では、イスラム法学者などでつくる「護憲評議会」が「イスラム体制に忠実か」などの条件を下に候補者の資格事前審査を行います。 ラリジャニさんも、ジャハンギリさんも、理由が明かされないまま失格になっており、あぁなんか宗教国家らしい選挙だなぁっておもいました。
イスラエルの新政権が行った、2日続けてガザを空爆したと聞きますし、 イラン・イスラエルは、今後、強硬派どうしのぶつかり合いになるんでしょうか?