2-59.課題の残る 月曜日 2
「後半、どっちのチームも一人ずつ交代ね。
どう?ミラドール」
「まぁ妥当な所だとおもう。
試合が、停滞してたから。」
王都ホゥスボール協会代表
→ OUT ゴウ・キシ・ハルフ
← IN オダ・ノブナ・ムド
東ハルサ地域連合
→ OUT グルイチニサン
← IN オオトロビッチ
後半の開始。
王都代表も、東ハルサ代表も、1人ずつ、メンバーの交代をしてきた。
「両チーム動いてきたね。もぐもぐ。」
それにしても、ライレーンが頼んだ2本目のソーセージは、太い。
「ソーセージっていうよりは、ハムみたい。」
イタリアのボローニャソーセージに似た感じ。
食べ方も、ソーセージというよりもハムに近い。
厚めに切ると、柔らかい口当たり。フワフワした食感がおいしい。
「私には、ちょっと辛いかな?
コショウが、効きすぎてる。」
あぁ、ライリューンもそう思う?
私にも、辛いのよね。
「でも、ビールに合うわよ。」
って、ミラドール何杯目よ。
あぁ、絶対酔っぱらってるわ。
[美容師の娘] 【 2-59.太いソーセージ と ビール 】
「交代出場のオダに、長いボールが、入るようになっわね。
プレーに奥行きたわ。」
ミラドール。酔ってる割には、分析が鋭い。
後半開始に入った、王都代表のオダ・ノブナ・ムドに、後方からの距離の長いパスが、集まっているのだ。
「サイドも攻め上がれるようになってるでしょ?
オダの所で、ボールが収まって、時間が作れているから。
これは、いい形になりそうね。」
後半2分、王都代表。
ヤンの短いパスに反応したフィリップスが、右サイドに抜け出すと、中に強くボールを打ち込む。
東ハルサ ヨイッチナスが、かろうじてクリア。
ボールを外に打ち出す。
〔後半3分〕 GOOOOOAL!!
東ハルサ地域連合 0-1 王都ホゥスボール協会代表
後半3分、王都代表。
コーナーショット。
フィリップス王子が、ペナルティエリアに打ち込む。
フィリップス王子の速くて柔らかいクロス。
ゴール前、王都ゴウシが、馬に当てて、方向を逸らす。
ゴールの逆サイド側に走り込んだのは、王都ヤン。
チョコンと棍を合わせて、ネットを揺らす。
ゴール!王都代表が、待望の先制点を奪取した。
大歓声。紙風船が舞い、スタジアムを彩る。
王都のホゥスボールは、華やかだね。
「速いボールをフィリップスが打ち込んだでしょ?
それをニアでゴウシが、棍でファーに流す。
マークを外して飛び込んだヤンが棍でゴールを叩き込む。
計算された、すばらしいゴールね。」
セットプレーからのゴールは、練習の成果だね。
フィリップス王子。いいプレーしてる。
私より、うまいかも。
後半5分、王都代表。
味方とのパス交換から、ミクタが左サイドの敵陣深くに持ち込む。
ミクタが、グラウンダーのクロスをオダに向けて送った。
しかし、GKライスビッチ、読んでいた。
上手く防ぎ、シュートに持ち込ませない。
後半8分、東ハルサ。
キモイリッチが、ボールを持つ。
王都 ゴウシが思わず馬体を寄せて、強くぶつけてしまう。ファールだ。
東ハルサ、左サイド中央でフリーキックを獲得。
フリーキック。ヨイッチナスが、クロスを上げる。
反応したのは、オオトロビッチ。
ゴウシのマークをモノともせず、高いボールに棍を振り下ろす。
王都ゴールに向かったボール。
ミクタに当たり、コースが変わるが、王都GK チイは、危なげなくキャッチ。
東ハルサ、得点できず。
後半14分、王都代表。
ヤンが右サイドをえぐりペナルティーエリアに侵入も、東ハルサ マテマテッチ、ヨイッチナスの2人に囲まれて、ボールを失う。
「今の王都のヤンが、象徴的ね。
守備を怠らず、献身的に戻る。
だけど、前に飛び出すこともできる。
囲まれて、ボールを失っちゃったけどね。
これを、繰り返されると東ハルサはキツイわね。」
監督のピクシノビッチさん、イライラしているみたい。
首にかけてある関係者用のプレートを、下に投げつけている。
「後半になって、王都代表は、前がかりになったわね。
東ハルサは、その裏を狙いたいみたい。
でも、上手くいっていないのよね。
王都の 強度の高い守備に 苦しんでるわね。
ほとんど 自陣から 出られてないもの。」
東ハルサは、王都代表のプレスに苦しみ、自陣から出ることもままならない。 しかも、疲れからか、プレー精度が低くなり、リズムもゆっくりになっている。 ピクシノビッチさんじゃなくても、イライラしそうだわ。
後半16分、東ハルサ。
キモイリッチに警告。
キモイリッチは、ゴウシに対して後ろからボールを奪いに行く。 しかし、棍が、ゴウシの腕に当たり、ファール。警告の対象となってしまった。
「ミスが、出始めたわね。
試合が動きそう。」
ミラドールの喉が、ゴクリと動き、ビールを飲みほした。
後半18分、王都代表。
密で、硬質な王都代表の守備は、東ハルサのパスワークにも難なく対応。 パスミスを誘い、ボールを回収してしまう。
ミラドールの言う通り、ミスが多くなってきた。
〔後半19分〕 GOOOOOAL!!
東ハルサ地域連合 0-2 王都ホゥスボール協会代表
後半19分、王都代表。
素早い攻守の切り替えから、カウンター攻撃を展開。 ヤンがスピードを生かして一気にディフェンスラインの背後に飛び出すと、ペナルティエリア右に進入。
並走するオダにパスを送ると、飛び込んだオダが、馬体でボールを押し込んでネットを揺らした。
ゴールを決め、ゴールポストを棍で叩いて喜ぶオダ。
「あぁ、これで決まっちゃったわね。
今の東ハルサに、王都から、2点を取る力は無いわ。
ピクシノビッチが居ないと、こんなものなのねぇ。」
やっぱり、ピクシノビッチさんがメンバーに居ないのは、厳しいみたい。 試合に、興味を失ったミラドールは、ビールをあおる。
ライレーンと、ライリューンは、次のソーセージをどれにするか選んでいる。
後半43分、王都代表。
ゴウシがディフェンスラインの背後に精度の高い浮き球のパスを送る。 これに反応したフィリップス王子が、マテマテッチを引き離し、ペナルティエリア中央に抜け出すと、GK ライスビッチと1対1に。 ゴール左を狙ってショットを放つが、ライスビッチに阻まれて決定機を逃してしまう。
これを、外してるようじゃだめね。フィリップス王子、まだまだかな?
試合は、そのまま終了。
審判の吹くホイッスルが、スタジアムに響いた。
「後半開始早々に、デザインされたセットプレーで決めたよね。
あれが大きかった。
でも、あれが無くても、王都代表の方が上だったわ。
守備はいいんだけどね。攻撃が問題ね。」
フィリップス王子がゴールを外した場面が象徴的だったけれど、王都代表は、決められる場面で、ゴールすることが出来なかった。
「東ハルサは、問題外だわ。
あれなら、アリー抜きの西部代表でも、勝てるんじゃない?
ほとんどチャンスなんて無かったもの」
馬を並べて、強固な守備を敷いているから、大きな破綻は無かったけれど、攻撃が出来ていない。 ピクシノビッチさんが、居ないから、前線でボールが収まらないのよね。 その上、王都代表の守備が早いから、ミスが出てボールを失ってしまう。ミラドールの言う通り、ほとんどチャンスは無かった。
「まぁ、王都代表にしても、東ハルサにしても・・・。
課題の残る試合になったわね。
で、この子たち、どうするの?」
ふっと、後ろを見ると、オリンピュアスが、ソファーに寝転んでいる。
これ、オリンピュアスが壊しちゃったんだろうな。
寝ているオリンピュアスの前に置かれた、ビールサーバーの接手が、破損してる。
接手のガラス部分を火魔法で、熱する。
700度を 超えた あたりでガラスが溶け始めたので、部品を持っておさえつける。 火傷をしないように慎重に。 よしっ、くっついた。 証拠隠滅完了っと。
これで大丈夫よね? ライレーン?
ん? ライレーン?ライリューン?
・・・赤い顔。
ライレーンと、ライリューンは、現在進行形。
ビールを飲んで、ソーセージをポリポリ。
「オリンピュアスは、人前で飲んじゃダメねぇ。
もぐもぐ。」
「うん。貴族の女性として、この格好はいただけない。
淑女の嗜みというか、そういうのが感じられないよね。
ぷはぁ。」
いや、ライレーンも、ライリューンも、顔、真っ赤よ。 飲酒が、すぐばれるレベルだわ。
困った。 少なくとも、オリンピュアスを、周りバレないように、連れて帰らなければならない。
仕方がない。
マーガレットを呼び出し、エペイロ伯爵家の侍女を呼ぶ。
がんばって。他の貴族に見つからないように、オリンピュアスを馬車まで運んでよ。
「じゃ、アリー帰って飲みなおしましょ。」
=== ===== === ===== ===
ミラドールっ!
私は、飲まないわよ。ビールなんて。
=== ===== === ===== ===
ライレーンとライリューンがソーセージを食べるシーンが唐突に感じた人は、高評価を押して次の話へ⇒
蛇足1. ソーセージ
ライレーンとライリューンがソーセージを食べるシーンが唐突に感じたという感想をいただきました。
どこかで、ソーセージを食べさせたかったんです。
ライレーンとライリューンは、双子。・・・双生児。
はい。ごめんなさい
蛇足2. 破損
寝ているオリンピュアスの前に置かれた、ビールサーバーの接手が、破損してる。
中国には、生態環境省という省庁があるそうです。
6月16日、広東省の原発において、原子炉内の燃料棒の破損で、放射性希ガスが大気中に放出されたと放射性物質の濃度が上昇したと発表したそうです。
珍しいですね。こういうのは、発表されないと思っていました。
原潜の日本海への原子炉冷却水廃棄とか、使用済イオン交換樹脂の投棄や、艦内作業から出る放射性廃液の海中投棄なんて、どの国からだって発表されてませんし、濃度上昇程度なんて、サラッとスルーされると思っていました。
蛇足3. 風船
大歓声。紙風船が舞い、スタジアムを彩る。
あぁ王都のホゥスボールは、華やかだね。
6月15日に、パレスチナ自治区のハマスが爆薬のようなものを載せた風船を飛ばし、イスラエル南部で山火事を発生させ、その夜、イスラエル空軍は、ハマスの武装施設を空爆。
5月に、停戦してたはずなんですけどねぇ。
6月15日は、パレスチナがイスラエルにエルサレムを奪われたとする「怒りの日」とされるので、それに合わせての攻撃と言われています。
前話のあとがきに書いた通り、寄せ集め連立政権を発足したばかりのベネット新政権が、夜にスグ攻撃ってことは、6月15日に何かあるって、予想してたんでしょうね。
イランもありますし、中東で火の手が上がる未来は見たくないですね。あっ、ご近所で火の手が上がるのも嫌です。