2-58.消化不良の 月曜日 1
「はいっ。ありがとっ。」
馬車の中で、ミラドールから、パンフレットを返された。
「ん?いらないの?」
「すごく薄い羊皮紙だし、文字もキレイよね。
貴重なものでしょ?」
「あぁ、これ植物紙だよ。
文字も印刷だし。
西だと、あんまり使われていないよね。」
西の辺境では、まだ羊皮紙が主流だ。
王都のように、植物紙は、一般的ではない。
印刷物も少なくて、ほとんど手書きだもんね。
「このパンフレット、何部か、持って帰る?
試合が終わってから、発行されるペーパーも一緒に。」
あんまり、使われていないなら、いいお土産になるはず。
あっ、ピクシノビッチさんにも、持って帰ってもらおうかな?
「お金、大丈夫なの?」
「大丈夫。
私、パンフレット買える程度には、お金持ちだから。」
うん。アタリヤ商会から、いっぱい貰ったからね。
「まぁ、私は、自分の出ていない試合のはいらないけどね。」
あら?必要ないですか。
じゃ、ピクシノビッチさんのお土産用だけ購入しておこうっと。
[美容師の娘] 【 2-58.vs王都ホゥスボール協会代表 】
王都ホゥスボール協会代表
1 GK チイ・ウユシ・ダンゴ …エスポ所属
2 攻撃 ミクタ・ノ・ミナミ …サウサ所属
3 攻撃 ゴウ・キシ・ハルフ …ヴィッセ所属
4 攻撃 ヤン・ユジウ・トイ …クヘン所属
5 攻撃 王子フィリップス …飛翔師学院所属
6 守備 ゴウシ・チグニータ …フロンタ所属
7 守備 キミーネ・マーヤ …フロンタ所属
8 攻撃 オダ・ノブナ・ムド …マリーノ所属
東ハルサ地域連合
1 GK ライスビッチ …ランース所属
2 攻撃 キモイリッチ …シーテイ所属
3 攻撃 グッタリン …セビジ所属
4 攻撃 グルイチニサン …リバプ所属
5 攻撃 ヨイッチナス …フラン所属
6 守備 マテマテッチ …シールケ所属
7 守備 ナスナスッチ …ユナイテ所属
8 攻撃 オオトロビッチ …フラフ所属
前半 開始の 笛。
東ハルサ ボールで、試合が始まった。
前半11分、東ハルサのゴール前にボールが転がる。
王都ゴウ・キシ・ハルフが、ボールをキャッチした、ゴールキーパー、ライスビッチに馬体をぶつけて、激しいプレス。
「ちょっと、やり過ぎね。」
あら?ライレーン?
王都代表を応援してるんじゃないの?
「今回は、どっちでもいいかなぁ?
賭けてないから。
あっ、このソーセージおいしいね。」
そ・・そうですか。
ライレーンと、ライリューンは、ソーセージを頬張りながらの観戦。
んー、おいしそう。
「ゴウは、いい守備をしたと思うわ。
前線から守備の意識があるのはいいことよ。」
あら?ミラドール、王都代表の守備を高評価ね。
前半12分、王都ヤン・ユジウ・トイが、守備の切り替えから素早く前線に飛び出す。
右サイドの敵陣深く切り込んだヤンは、鋭いクロスを棍で打ち込んだ。
飛び出して来たのは、東ハルサのゴールキーパー、ライスビッチ。
ひょいと、馬を操り、ボールをはじく。
「うまいわね。あのキーパー。」
「ミラドールさんなら、あれ、決めれます?」
「ライリューンだっけ? サンは、いらないわよ。
まぁ、今のは無理ね。私までボールが届いてないでしょ。」
前半13分、ミクタ・ノ・ミナミが、棍を操り、細かいボールタッチで、東ハルサを翻弄。相手の左サイドに馬を進める。
そして、東ハルサ守備の背後に抜けるボールを打ち出した。
フィリップス王子が、このボールに反応。
素早く、馬を駆けさせて突っ込む。
スタンドから地面が揺れるような歓声。
透明なガラス板が、揺れているのが分かる。
「フィリップス王子、すごくうまくなったのよ。
馬を自在に操ってる。」
「下手だったの?」
「ちょっと前まで、すぐ落馬してたから。」
貴族用の馬場で、落馬を繰り返していたころの話をする。
「それは、面白い。今、すごくうまく乗れてるもの。」
ライスビッチが、ボールを棍で大きく打ち出して、フィリップス王子は、シュートすることが出来なかった。
前半19分、東ハルサ グルイチニサンが、王都 ゴウシ・チグニータの持つボールを奪取。
素早くカウンター攻撃に転じる。
慌てて戻るゴウシ。
馬体を、グルイチニサンの前に投げ出すようにした守備で食い止める。
前半26分、東ハルサ GKライコビッチは、前線のヨイッチナスに大きくボールを打ち出す。
ヨイッチナスに、上手く渡る直前、王都 ゴウシが、しっかりと競り、東ハルサの攻撃の芽を摘んだ。
「王都代表は、守備がいいね。
攻撃途中で、ボールを失った時、守備に入るのが早い。
これは、西部代表であっても苦戦したかもしれないね。」
「アリーと、ミラドールでも、難しい?」
「アリーが居たら、何とかはできるかもしれない。
でも、ボールを持った人に対して、寄せてくるのが早いのよ。
うまく攻撃につなぐことが出来るかどうかは、分からないわ。」
前半35分、東ハルサ キモイリッチが、単独で持ち上がると、王都ゴウシのファールを誘い、東ハルサが、フリーショットを得る。
「ゴールに近い位置での反則は、厳しいね。
得点が入るかも。」
グッタリンが、ボールを棍で打ち込む。
ペナルティエリア右に向けて、柔らかい浮き球のパス。
競り合うが、シュートチャンスに持ち込めない。
「あら?うまく競ったわね。
馬体を寄せて、ゴールに向かわせなかった。」
「ほんと、王都代表は守備がいいね。」
前半41分、東ハルサ ヨイッチナスが、ペナルティエリア手前から、思い切りよくシュート。ボールは、ゴール枠の上に大きく外れた。
前半45分、王子フィリップスが、右サイドのヤンに大きくサイドをかえるパス。
受けた 王都 ヤンは、得意のドリブルで仕掛ける。
抜けた。
ヤンは、敵陣深くから、鋭いグラウンダーのクロスを入れる。
ミクタ、ゴウ、飛び込む味方にボールは届かず、東ハルサ GK ライスビッチがキャッチ。得点を奪えない。
ここで、前半終了の笛。
王都ホゥスボール協会代表 0 前半 0 東ハルサ地域連合
「うーん。消化不良ね。
王都代表は、守備はいいのよね。
相手のチャンスはあるんだけど、決定的にはならない。」
「うん。だけど、攻撃で、ボールが、前線で収まらないよね。
ミラドールが、必要だわ。前に。」
「パスを中心に攻め込む時間は、長いんだけどね。
決定機が、作れていないよね。」
「そう、そのせいで、逆に、東ハルサがリズムを掴んでる。
東ハルサは、馬体が強いわ。
体を当てて、ボールを取って、ゴールまで攻め込んでるよね。」
「こっちも、ピクシノビッチさんが、必要ね。
チャンスはあるんだけど、決定機にならない。」
=== ===== === ===== ===
どっちも、得点が入る気配がない。
後半の残り45分。
監督のピクシノビッチさんは、どうやってゴールを取りに行くんだろう。
=== ===== === ===== ===
今日、ソーセージを食べた人は、
高評価を押して次の話へ⇒
蛇足1.
ライレーンと、ライリューンは、ソーセージを頬張りながらの観戦。
G7が行われているイギリスで、英仏首脳会談が行われたそうです。
そこで話し合われたのが、ソーセージについて。
英国って、EU離脱しましたよね。
このせいで、イングランド本土から、北アイルランドへ冷蔵肉を運ぶ際に、検査が必要になったのです。
北アイルランドがEU側って見なされるためですね。
同じ国内だから、検査を無しにしろ。
いや、北アイルランドはEUの制度範囲内の島だから・・・。
みたいな感じでしょうか。
数年前にも、英仏海峡でのホタテ漁をめぐって対立して、漁船の衝突などが起こっていますが、今回は、何か起こるでしょうか。
蛇足2.
それは、面白い。今、すごくうまく乗れてるもの。
ミクタと、フィリップス王子が、いいペアよね。
呼吸が合ってる。
フィギュアスケート2012年世界選手権ペアで、銅メダルを取ったのが、高橋成美
とマーヴィン・トランのペア。
その高橋成美さんが、日本オリンピック委員会の理事になるそうです。
森発言問題の時、男性理事ばっかりって問題になりましたよね。
引退した時25~26でしたから、たぶん、30歳になってないですよね。
あぁなんか、女性理事作らなきゃ。っていうプレッシャーがあった感じがしてなりません。ある程度、若い女性っていう目玉にもなりますし。
まぁ、その結果、いろいろ彼女の意見が通ったら、それはそれで面白そうですけどね。
蛇足3.
スタンドから地面が揺れるような歓声。
透明なガラス板が、揺れているのが分かる。
Experimental investigation to verify if excessive plastic sheeting shielding produce micro clusters of SARS-CoV-2
2021年5月27日に、アクリル板やビニールシートによる空間の遮蔽が、空気を滞留させ、換気状態が悪化し、コロナのマイクロ飛沫感染のリスクを高める可能性があるという論文が発表されたそうです。
まぁ、普通に考えたら、空気がとどまりますよね。
透明なビニールシートとか、アクリル板で遮断してたら。
あれは、直接飛沫が飛び散る、飛沫感染を防ぐためのものだから、無い方が、換気に良いのは、分かります。
つまり、飛沫感染対策としてパーテーションを設置する際は、十分な換気が必要ってことですね。
蛇足4.
そのコロナのワクチンの接種率が一番高い国といえば、イスラエル。
13日、イスラエルで、新たな連立政権が発足し、ネタニヤフ政権が交代しました。
8つの政党が参加した、連立政権って・・・。
意思決定まで、すごく時間がかかりそう。
なんかパレスチナ問題が大変になりそうですね。