2-54.砂嵐を呼ぶ「大砂放射掌」
「大砂放射掌っ。」
闘技場に響く ウロジーの声。
同時に、ウロジーを中心に砂が放射状に飛び散った。
大歓声が場内を包む。
砂の嵐は、観客の視線を全て奪った。
ウロジーは、手を砂に打ちつけることで、砂を周囲に まき散らし、視界を奪ったのだ。
ざわめきが収まるのと同時に、砂の嵐が徐々に晴れる。
視界が戻り、そこには 倒れる 1人の男性。
あぁ、決着だ。
[美容師の娘] 【 2-54.土下座のタイミング 】
「砂の壁みたいになってたよね。
今の・・・だ・・ダイシャホウシャショウ?」
「そう言ってたっけ?
ボク思うんだよね。
わざわざ、攻撃技の名前を叫ぶ必要ないって。」
「うんうん。
何をされるか 分かってたら 対応できるもん。」
「でも、違う名前を 言ったら、フェイントに使えるかも。」
納豆を食べながら言った、ピクシノビッチさんの アイディアは、面白い。
「あっ、それは 思いつかなかった。
それって、案外 面白いかも。」
「それって、ホゥスボールでも 使えそう?
ほら、これが私のドライブショットよ。とか言いながらパス?
そういうの できない?」
「いや、シュートする フリして パスしても意味ないよ。
パスに名前をつけて、叫びながら、シュートなら使えるかな?
どっちにしても、技の名前を言うのが 恥ずかしいね。
私は、使いたくないわ。」
私も、使いたくないな。
そんな 恥ずかしいことを したくない。
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闘技場の真ん中。真っ白い砂の上。
「大砂放射掌」という 大技の名前を叫びながら、砂を飛ばしたウロジーが、倒れている。
目潰しにもならず、距離も取れず。
その狙いを かわされた。
ディオクシパは、砂を飛ばされる前に、自分の目を閉じたのだ。
そして、大量の砂を飛ばすために、両手を地面の砂に突っ込んだことが、まずかった。
ウロジーは、顔面を無防備にしてしまったのだ。
ディオクシパの放った蹴りは、ウロジーのアゴを、あっさりと、打ち抜いた。
鼻水と血が飛び、唾液と血がポタポタと落ちる。
ドゥという音を立て、ウロジーの体は、そのまま倒れた。
「勝者、ディオクシパっ。」
審判の声が、響く。
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「うん。決着がついたね。
決勝は、あんまり見どころ無かったかなぁ。」
「見どころは、無くていいんだよ。
ボクは、ディオクシパが勝てばそれでいい。
優勝での 倍率5倍の配当が大切だからね。」
あぁ。忘れてた。
私たち、ディオクシパの優勝に賭けてたんだ。
私が、白金貨100枚。
ライレーンが、白金貨1枚。
ライリューンも、白金貨1枚。
オリンピュアスだけ、エウリュアの 優勝に 白金貨10枚だったけどね。
ん~、次は、魔道具、何をもらおうかなぁ。
「あら?アリーたちは、賭けていたの?」
「ピクシノビッチさんは、賭けはしないの?」
「昨日、王都に来たところだから。
そんな余裕なかったもの。
そっかぁ、アリー勝ったみたいだし、分けてもらおうかな。
うちの代表の 滞在費用分くらいは、いけそうよね。」
「え? それってどのくらい?」
代表の滞在費用って、おいくら万円するのよ。
払えるものと 払えないものが あるよ。
「だいたい、金貨100枚くらいね。
って冗談よ。本気にしないでね。
金貨100枚も 勝ってたら、4~5年遊んで暮らせるわ。」
「「「・・・。」」」
「ピクシノビッチさん?
アリーは、白金貨500枚も勝っていますわ。
ライレーンやライリューンは、白金貨5枚ずつ。
滞在費くらい出してもらっても、いいかもしれませんわよ。」
「ちょ・・ちょっと、アリーやりすぎ。
白金貨を使った賭けなんて・・・。
イベントのセレモニーとかでしか見ないわよ。
何してるのよ。」
「オリンピュアスが、そのくらい使ってたから・・・
ま・・真似しただけ・・・。」
「アリー、わたくしのせいに しないで くださいませ。
アリーが、一番多く賭けて、一番勝っていますわ。」
そ・・・それはそうだけど・・・。
「まぁいいや。ピクシノビッチさん。滞在費は、出すよ。
イブコブさんとかも、来てるんでしょ?
知ってる人達に、使ってもらえるなら いいよ。
ホゥスボール頑張ってよ。期待してる。」
「あっいや、今回は、スルプース人だけ。
イブコブは、フルヴチア人だから、きてないんだ。」
東ハルサ地域と 呼ばれる 騎馬民族連合は、「スロヴモニム」「フルヴチア」「ボジナ」「スルプース」「ボスナヘルナ」「ツルコラナ」「マケドスコピニア」「クロウターヴァ」の 8つの地域の 連合。
オリンピュアス大祭の東ハルサ代表には、「スルプース」だけが参加したらしい。
東ハルサ地域使節団の偉そうなスルプース人、ボダン・ミ・シェロさんが、他の地域の参加を制限したという。
「政治的に 難しいところが、いっぱい あったみたい。
私は、選手に プレーをさせるだけ だけどね。」
ピクシノビッチさんの歯切れが悪い。
もしかすると、シム監督じゃなくて、ピクシノビッチさんが監督っていうのも、そういうのに関係あるのかな?
あまり触れないほうが、いいのかもしれない。
「あっ、そういえば・・・。
オリンピュアスは、エウリュアのことは、もういいの?
砂と紙風船は、まだ馬車に積んであるけど。」
さりげなく、話題をかえておく。
「エウリュア様は、目覚められましたもの。
折れた腕も、動くようになるとのことでしたわ。
ウロジーの右目は、治らないようですわよ。
一生、失明したままですわ。
それなら、十分、悪事のむくいは 受けてございます。」
いや、それ、聞いてないって。
目をちょっとケガしただけじゃなくて、失明?
大問題じゃないの。
ライレーンと、ライリューンが、じっと、私の方を見ている。
そして、ピクシノビッチさんも興味深そうに こちらを見る。
オリンピュアス、もう しゃべらなくていいよ。
ピクシノビッチさん居るからね。
つまらない事故の詳細なんて、この場で話する必要ないよね。
タラタラと冷や汗を流しながら、オリンピュアスを見る。
ピクシノビッチさんに、ウロジーの右目のケガの原因について、知られたくないよ。
「失礼いたします。」
その時、貴賓室の入り口が開かれた。
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あっ、土下座トリオ。
ナイスタイミングだわ。
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蛇足1.
「砂の壁みたいになってたよね。
今の・・・だ・・ダイシャホウシャショウ?」
よく、「10秒の壁」って言いますよね。
6月6日。
鳥取で開かれた布勢スプリントの男子100メートル。
山県亮太選手が、9秒95の日本新記録を樹立したそうです。
タイム表示された9秒95のタイマーの青い表示盤には、日本新の文字。
横に表示された+2.0は、追い風2メートルと言うことですね。
そして、下には、NISHIの文字。
おしいっ。
タイマーが、ニシ・スポーツではなく、セイコーの時計だともっと素敵でした。
セイコー所属なんですね。山県亮太さんって。
蛇足2.
「そう言ってたっけ?
ボク思うんだよね。
わざわざ、攻撃技の名前を叫ぶ必要ないって。」
神経が乱れているならば、叫ぶ必要があるかもしれません。
山県亮太さんは今季から、ボイストレーニングを始めたそうです。
行うのは、火曜日。
午前中、3時間も防音室にこもるとか・・・。
大声で、「アー」「オー」「ワー」などと叫ぶそのトレーニング。
呼吸は自律神経に作用しうるということで、腹式呼吸を身に付け、乱れていた神経を整え、メンタルトレーニングとしたそうです。
1週間に1回、火曜日って決めて3時間もそれをやり続けるっていうことにビックリしました。
蛇足3.
「鼻水」と血が飛び、唾液と血がポタポタと落ちる。
ドゥという音を立て、ウロジーの体は、倒れた。
トルコのマルマラ海では「海の鼻水」と呼ばれる粘液が大量発生しているそうです。
水質汚染を好む藻類によって引き起こされるそうで、海洋汚染による富栄養化と温暖化が原因だとか。
「瀬戸内海環境保全特別措置法」の改正。
瀬戸内海がきれいになりすぎて、窒素やリンが不足し、養殖の生育不足、藻類の生育不良、ノリの色落ち、不漁などが起こり「ちょっと、汚しましょう」ということになったみたいですので、こちらとは、逆ですね。
2-51.ダダ もれ アリー 蛇足2.
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マルマラ海の解決策としては、海洋の適切な監視に加え、周辺の都市や工業地帯の廃棄物処理システムの整備が必要だといわれているようですが、法律を整えてきれいにしすぎると、いつか瀬戸内海のように汚す必要が出る日が来るかもしれません。