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2-51.ダダ もれ アリー

「で、闘技場の方はどうだったの?」


「それがね、落とし穴っぽい。」


ライレーンと、ライリューンは、オリンピュアスに 聞こえないように 話し始めた。


まぁ分かる。

聞いたら、大騒ぎしそうだから。


「落とし穴?」


「紙風船を砂の下に敷き詰めて、それが潰れる感じ。

 ただ、風船を膨らんだままで置いておく方法が、分かんない。

 仕掛けを発動するまでは、潰れちゃダメだから。」


「今、どこ? その風船。」


「アリーの実験室に 置いてある。

 闘技場の砂と、紙風船を、回収してる。」


「後で、ボクも 見てみるよ。」




[美容師の娘]  【 2-51.落とし穴の仕掛けは? 】



やられたっ。


まさか、氷の皮袋にガラスが 仕込まれているとは・・・。

革袋から飛び出たガラスの破片が、ウロジーの顔面に刺さったのだ。


すぐに、顔面に刺さったガラスの破片を抜く。


床に飛び散った赤い飛沫。

出血は、それほどでもないが・・・。


まずいな。

ウロジーは、目を押さえている。


明日の決勝は、難しいかもしれない。


「教会前 診療所だっ。 馬車を回してくれ。」


プレパラツィオネ・ファカデレ・トラポラは、事務員を怒鳴りつけた。



******************************



「じゃぁ、オリンピュアスは、残るんだね。」


「後で、迎えが参りますわ。」


「どうするの? ナカヨシ研究室に戻る?」


「教授、居ないんだよね。

 んー まぁいいや、ボク、行ってみたい。」


私たち3人は、オリンピュアスを残して、教会前 診療所を後にした。


向かうは、私の実験室。



「ちょっと待ってね。鍵開けるから。」


「ん?ドア開いてるよ。」


私が研究室のカギを開ける前に、ライレーンがドアを開いた。


「ん? 誰じゃ? アリーか?」


あら? ナカヨシが戻ってる。


「丁度良かった。見てもらいたいものがあるんだけど。」


私の部屋の、砂と、紙風船。


「私が持つと、膨らむんだよ。コレ。」


紙風船が、膨れるのを見せる。


「なるほど。ダダ()れじゃな。」


「ダダ洩れ?」


「アリーは、魔力が、()れてるのじゃよ。

 断と、放と、吸を覚えたほうが良いな。」


ナカヨシが、紙風船を持ち上げる。

手の平の上で、ふぅっと膨らむ。

そして、何もしていないのに しぼむ。


「魔力を込めると、膨らむ紙風船なの?」


「いや、この砂じゃな。」


ナカヨシが、紙風船を ビリリと破る。


サラリと 小さな砂粒が 落ちる。


「これが、魔力を保持する。」


「こんな、ちょっとの砂が?」


「これは、砂のように見えるが、海の魔生物の死骸じゃ。

 清い水でしか生きられぬ、珍しい生物での・・・。

 この砂に魔力を込めると、風船内の空気の圧力が高まる。

 それで、膨らむのじゃな。」


「ボクも、魔力 持ってるよ?

 でも、膨らまない。なんで?

 なんで、アリーだけ膨れるの?」


そう。

ライレーンが持っても、ライリューンが持っても、紙風船は、膨らまない。


「だから、ダダ洩れじゃな。

 アリーだけ、魔力が漏れておる。」


もう一つの紙風船を、ナカヨシが手に取る。


「これが放。」


ふぅっと、風船が膨らむ。


「これが吸。」


シュンって、風船がしぼむ。


「これが、断。」


しぼんだ風船は、そのまま動かない。


「魔力を放出する。吸収する。断つ。

 アリーは、放出しっぱなしじゃ。

 2人は、放出しつづけるには、魔力量が足りない。

 必然的に、魔法を使わないときは、断になっておる。

 風船が、膨らむのは、漏れている アリーの魔力のせいじゃ。

 それを、砂が 吸い取ってるのじゃな。」


ほえぇ。 私、魔力が 漏れてたんだ。


「ナカヨシ教授。

 闘技場の拳格闘で、落とし穴の仕掛けにコレが使われました。

 どうやったか分かりますか?」


ライリューンは、真面目だ。

授業みたいに 質問する。


「今の通りではないのかの?

 微量の魔力を放出しておいて、相手が来たら吸収する。

 それだけで、落とし穴が 開くのではないか?」


「人が、居ない時間は?」


「この砂は、魔力をためることが出来る。

 風船を膨らます程度なら、微量でいい。

 半日程度なら、膨らませておくだけなら出来るじゃろ。」


「じゃぁ、これが証拠になるね。」


「いや、ならんじゃろう。

 ここに持ってきている段階で、証拠には ならぬ。

 移動させては、ダメじゃな。」


あっ・・・そっか。持って帰っちゃダメだったんだ。

結果を撤回させるのは、無理?


「まぁ、そんなことよりも、おぬしは、覚えるのが先じゃな。

 断、放、吸を覚えるには、この紙風船は、丁度良い。

 これを使って、練習しておけば良いな。」


断、放、吸・・・を覚える・・・。


いや、そんなことより、私にとっては、オリンピュアスだよね。


証拠を持って帰ったせいで、証拠にならない・・・。

エウリュアが、負けた結果を撤回できない。


ぜぇったい、怒られる。

明日の朝が怖い・・・。


「ライレーン、ライリューン、私たち友達よね?

 一緒に怒られてくれるよね?」


「ボク、エウリュアに付き添っていたから。

 持って帰ってないもん。

 ライリューンと、アリーが、怒られたらいい。」


「まぁ、仕方ないね。

 一緒に怒られるよ。共犯者として。」


え?主犯が、私?いつの間に?


「じゃ、そういうことで、寮に帰りましょう。」


あぁ、上手く まとまったみたいな話になってる。




=== ===== === ===== ===




明日の 拳格闘 決勝の観戦、お休みしようかな・・・。




=== ===== === ===== ===

論文を書いたことがある人は、

高評価を押して次の話へ⇒


蛇足1.


あっ・・・そっか。持って帰っちゃダメだったんだ。

結果を撤回させるのは、無理?


エウリュアが、負けた結果を撤回できない。



リトラクション・ウォッチ(撤回監視)は、学術雑誌に掲載された論文撤回などを分析しているブログ。


2021 年 5 月 28 日の記事

Anesthesiology researcher guilty of misconduct in more than 140 papers

(140 件以上の論文で不正行為を行った(日本の)麻酔科の研究者)


2021 年 5 月 26 日の記事

Two Japanese universities revoke PhDs, one for plagiarism and one because of cell line contamination

(日本の大学が2つの博士号取り消し、1つの理由は盗作、もう1つは、細胞株の汚染のため。)


ここ最近の5つの撤回記事のうち、2個が日本。


そして、論文撤回研究者ランキング。

1位、3位、4位、6位が日本人。


1位が183本。2位118本、3位96本、4位74本、6位53本。


ん?

2021年 5月 28日の記事は、140本以上の論文?

あっ、2位ですね。

これで、上位10人中5~6人日本人になりそうです。


研究ってイロイロ大変ですね。



蛇足2.


2-51.ダダ もれ アリー

「これは、砂のように見えるが、海の魔生物の死骸じゃ。

 清い塩水でしか生きられぬ、珍しい生物での・・・。

 この砂に魔力を込めると、風船内の空気の圧力が高まる。

 それで、膨らむのじゃな。」



白河の清きに魚も棲みかねて もとの濁りの田沼恋しき


白河侯、松平定信の厳しい財政改革が経済を停滞させ、文化も廃れさせた。

腐敗があったとしても、豊かで華やかだった田沼意次の時代が恋しい。



「瀬戸内海環境保全特別措置法」の改正。

4月9日に参議院で可決され、5月27日に衆議院に送られました。


もともとの、瀬戸内海環境保全特別措置法は、工場排水などに含まれる窒素やリンで、海が富栄養化し、赤潮などが起こるといった公害の改善のため、窒素やリンを「減らす」法律。


1973年に施行されたそうです。


今回の改正案は、下水排水基準などを緩和、窒素やリンの排出を「増やす」目標値を知事が策定するもの。


海がきれいになりすぎて、窒素やリンが不足し、養殖の生育不足、藻類の生育不良、ノリの色落ち、不漁などが起こった「ちょっと、汚しましょう」ということになったらしいです。


ダダ洩れはダメですけど、漏れないのもダメ。


何事も、バランスが大切ですね。

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