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2-47.夜の闘技場、はかなげな月光

私立 格闘家 学院。

それは、総合格闘家を 育成する 私立学院である。


「理事長、ウロジーが、準決勝 進出です。」


オリンピュアス大祭

パンクラチオン(拳格闘)学生の部。


我が、格闘家学院の代表、ウロジー・ソード・カッシーニが、順当に コマを 進めたのだ。


「2位。 最低限2位だ。

 私立学院が 生き残るためには、実績が必要だ。

 もちろん、優勝するのが 一番良い。

 わかっているな。トラポラ。」


プレパラツィオネ・ファカデレ・トラポラは、小さく うなずいた。




[美容師の娘]  【 2-47.コメ料理が好きなんだもん 】




「アリーって、お米が、好きだよねぇ。」


「朝から、おにぎりですもの。

 さすがに、朝、コメ料理は、重いですわ。」


「ボクは、朝でも、別にいいけどね。

 ただ、朝も昼も 両方 コメ料理は、ないかな?」


私の勝手でしょ。

別に 何 食べても いいじゃん。


午前中の観戦で、おにぎりを食べていて、お昼の注文も、お米を頼んだら、この言われよう。


でもね、見つけたら、注文したくなっちゃう。

コメ料理が、メニューに載っていることって、あんまりないから。


鶏湯がゆは、鶏肉の入った 体を温める お粥。

四製と呼ばれる 処理をされた 鳥のスープの 粥だ。


アカヤジオウの根、芍薬の根、センキュウの根茎、トウキの根。

これらの 植物の根を、鶏肉と一緒に煮込んだだけ なんだけどね。


ズズズっ


んー。おいしい。


「アリー、音を たてないでくださいまし。」


音を たてて スープをすすると、オリンピュアスに 怒られる。


そういえば、小学生のころ、山に登る途中のうどん屋さんで、麵をすする音に 外国人観光客の夫婦が、嫌な顔をしていたな。


久しぶりに、前世?のことを思い出した。


あの時は、ひどかった。

夫婦が、嫌な顔をしたのを見て、男子が「うどんは のどこし」って言いだしたんだよね。


みんな、ワザとズルズル音をたてて食べた。

あれ、きっと感じ悪かったんだろうなぁ。


きっと、オリンピュアスにとっては、あんな感じなんだろう。

オリンピュアスに 怒られないように、気を付けて 粥を すする。


ん-。おいしい。


「明日も、エウリュアに 賭けるの?」


「もちろんっ。

 金貨100枚。限界まで賭けますわ。」


んー。

エウリュアに 賭け続ける オリンピュアスは、順調に 金貨を 増やしている。


私、どうしよっかなぁ。


「あっ。

 ボクは、ウロジーに 金貨100枚。」


「そうね。10倍は、大きいね。」


ライレーンと、ライリューンは、対戦相手のウロジー。


「ウロジーって、強いの?」


「オーソドックスで、特徴のないタイプだね。

 ボクが見たところ、そこまで強くない。

 でもね、格闘家学院の 出場選手だから。

 あそこって、5大会連続、2位以上を取ってるんだ。」


へー。それって すごいね。


「それでも、エウリュア様が 勝ちますわ。

 アリーは、もちろん、エウリュア様に 賭けますよね。」


エウリュアの倍率は、4倍。

ウロジーは、6倍。


「これ、エウリュアに、100枚賭けるでしょ?

 その上で、ウロジーに、100枚賭ければ、勝ちじゃない?」


エウリュアが、勝てば、400枚戻ってくる

そして、ウロジーが勝てば、1000枚。


これは、両方に賭けると、損をしないパターンだ。


「アリー。片方にしか、賭けられない ルールだよ?」


ライリューンに、つっこまれる。


「うん。だから、オリンピュアスが、エウリュアに100枚。

 ライレーンと、ライリューンが、ウロジーに各100枚。

 私も、ウロジーに100枚。」


これなら、エウリュアが勝っても、400枚戻ってくるから、プラスマイナスゼロ。全員を合計すれば、損しない。


そして、ウロジーが、勝ったら、合計1800枚戻ってくる。

オリンピュアスを含めた全員の合計なら、1400枚の儲けだ。


ん-。私、頭いいな。


「アリー、ずるい。」


「商人みたいですわ。」


「1回、頭を開けて、中を見てみたいよね。」


いや、普通、考えるでしょ。

って、いうか、アタリヤ商会、破産するんじゃない?

みんな、このくらい考えるだろうし・・・。


本当に、配当の分割払いが できるのか、心配になってきた。

アタリヤ商会から 担保を押さえることも、考えておこうっと。




うん。おなか いっぱい。

満足っ。

ごちそうさまでした。




「あっ、アリー。

 そのガラス、こっちの革袋に詰めておいて。

 間違えて、誰か怪我したら 困るから。」


窓を修理した時に割った、グラスの破片。

これを、小皿に盛ったまま、放置していたら危ない。


ライリューンに言われ、革袋に詰める。


「どうしよっか? この袋は。」


「下の医務室の前に、破砕ゴミを出す場所が、あったよ。

 そこに、捨てて帰ればいいんじゃない?」


ライリューンって、そういう観察眼があるのよね。

私、気づかなかったもん。


選手控え部屋にも、医務室にも、部外者は、入れない。

しかし、私たちは、そのルールを無視して、ゴミを捨てるために 医務室へと向かった。


エウリュアは、すでに 目の上の治療を終え、宿に、帰宅したらしい。


「エウリュア様は、もう帰られたのですね。」


「ほら、お昼ご飯食べてたから。私たち。

 さすがに、もう、帰ってるでしょ。」


「あぁ、お昼なんて、後にすれば よかったですわ。

 アリーが、お粥を食べたい なんて 言うのが 悪いのです。」


そ・・・そんなこと言われてもね。

まっ、ノキマ戦の後みたいに、意識が 戻ってないより よっぽどマシでしょ。


破砕ゴミを、ポイッと投げる。


カチャリと音を立てる革袋。

ナイスコントロール。


積み上げられた袋の上に、革袋はきれいに着地した。




******************************




夜の闘技場は、暗く、静かだ。

はかなげな、月の光に照らされた 無人の観客席。


トラポラは、そっと柵を乗り越える。


2位。 最低限2位。

ブランド価値を 維持しなければならない。

格闘家 学院が、今後も 生き残るためには、連続記録を 絶やすわけには いかない。


そっと、砂地をなでる。

さらさらとした 砂の感触が 心地よい。


エウリュアという、騎士団学校の生徒は、面倒だ。


1回戦で、ウーク・ゴンソを、ほぼ ノーダメージで 倒した。

2回戦では、優勝候補、帝国の暴力王に、打ち勝つ。

そして、3回戦は、あのスピードスターを捕まえた。


ウロジーが、勝てるかどうか。

私の感覚でいえば、勝つかもしれないし、負けるかもしれない。


しかし、それではダメなのだ。

準決勝は、勝たねばならない。

最低限2位。この言葉が、重くのしかかる。


私の手は、サラサラと気持ちの良い砂を、すくい取り、埋め戻した。


砂に埋もれる足。

可能な限り繊細に足を運ぶ。

消えてゆく足の跡。


月に照らされて、そっと目を閉じ、トラポラは、つぶやく。


「明日は、ウロジーが、勝つッ。

 格闘家 学院が 勝つのだッ。」




=== ===== === ===== ===




トラポラは、砂のついた両手で 頬を ピシャリと叩き、夜の闘技場を 後にした。




=== ===== === ===== ===

ソバを 音を立ててすする人は、高評価を押して次の話へ⇒



蛇足1.


昔、山に登る途中のうどん屋さんで、麵をすする音に 外国人観光客の夫婦が、嫌な顔をしてたな。



コロナ発生のだいぶん前の話ですが・・・。


香川県の八栗寺参道沿いにある、讃岐うどんの老舗で、外国人夫婦が、うどんをすする音に嫌な顔をしたところ、地元のお客さんが、わざと麺をすすって食べた話があります。


うどんは、コシと のど越し。


その通りなんですが、心がすさんだ世界では、炎上しそうです。




蛇足2.


月の光に照らされた 無人の観客席。

砂に埋もれる足。

可能な限り繊細に足を運ぶ。



ベートーヴェンピアノソナタ第14番

月光 第1楽章

冒頭に「全曲を通して可能な限り繊細に演奏すること」との指示があることから、

月の光に照らされた闘技場で、トラポラには、可能な限り繊細に足を運ばせてみました。



蛇足3.


次の対戦相手、私立格闘家学院

ウロジー・ソード・カッシーニ



うろじうそどかしに ⇔ にしかどそうじろう

西門 総二郎。


この名前の、カッシーニの部分、すごく気に入っています。



蛇足4.


前回も書いた、田村正和さんのお話。

田村正和さん追悼特別番組


「古畑任三郎ファイナル~フェアな殺人者~」前編

フジテレビ 2021年5月20日(木)14:45~15:45

「古畑任三郎ファイナル~フェアな殺人者~」後編

フジテレビ 2021年5月21日(金)14:45~15:45


あら?関東だけなんですね。もったいない。



これ、イチロー選手が出た作品だとか。


アメリカで成功した日本のすし職人という設定ではどうか?

イチローさんはなく、ハチローという野球選手ではどうか?


脚本の三谷幸喜さんが、提案したと言われています。


でも、イチローさんは、本人を演じたほうが、面白い。と・・・。


三谷さんは、見た人が、イチローさんにイヤな感情を抱かないよう気遣って脚本を書いたと言われているそうです。

見た人が、イチローは、殺す以外に道がなかったと思い、かつ、イチローに保身のための嘘をつかせない脚本。


こんな制約の中、脚本を書くって、三谷幸喜さん天才だなって思います。


素人がプロの集団の中に入るのだから、これくらいはやらないと。って、台本を読み込んで、本番前の本読み(セリフ合わせ)の時、台本を開かなかったと言われる、イチローさんもすごいですね。


逆に、明石家さんまさんは、古畑任三郎出演時、長台詞にNGを出しまくり、ほとんどNGを出さないことで有名な、田村正和さんまでつられてNGを出したと聞きます。


明石家さんまさん出演の話は、「NG出たから、くるま回して」エピソードや、「裁判長の審議を始めますNG」エピソードなどあって、興味を惹かれます。


77歳。田村正和さん、惜しいなって思いました。



蛇足5.


そう、惜しいなって、思っていたんですよね。


そういう時に、大阪の麻雀のお店をしている人が「生きてても、もう、古畑任三郎することもないんだから、別に残念って気持ちはない」って言ってるって話を、聞きました。


麻雀ってゲームのことを、きちんと分かっていないので、間違ってるかもしれないのですが、私は、麻雀って、役満?とか、夢を追うようなゲームだとイメージしていたので、現実を厳しく見る意見に「あぁ麻雀する人って現実的な判断を重視するんだな」って、そのゲームのイメージがクルっと反転しました。


もしかしたら、その世界って、私のように、夢見るような生ぬるい話をしていると、すぐダメになってしまう、厳しい世界なのかもしれません。


私なんかだと、例えば、新キャストで、新・古畑任三郎やるときに、田村正和さんのゲスト出演があったら・・・とか、そういうのって夢想しちゃうんですが。 ほら、セリフが無くても、犯人の後ろの椅子に、話の筋には全く関係ないけど、田村正和さんが座っていたら、見てみたいって思ってしまいます。


で、何が言いたいかといいますと、上に書いた、良く分かっていない麻雀ってゲームのイメージを間違っていた可能性があるという部分。今も、良く分かっていない格闘のことを書いています。良く分かっていないことに、自分勝手にイメージをつけて、勝手なことを書いている可能性があると思います。いろいろと思い込みが強い部分もあると思います。そこらへん、どうぞご容赦くださいということですね。

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