2-46.ガラス 処理
「これ、目立つよ。
アリー、やっぱり こっちから 手を付けよう。」
貴賓席の 大掃除。
理由は、さっぱり 分からない。
うん。全然 分からない。
なぜか 水浸しになった 室内と、穴の開いた 窓ガラス。
私たちは、これを 元に 戻さなければ ならない。
アタリヤ商会が 来る前に。
そのままに しておこうと 思っていた 窓の穴が 目立つ。
ライリューンは、水浸しの床より、穴を 先に埋めるべきだと 言う。
いや、切り出した 丸いガラスより 穴の方が 一回り大きいんだよね。
そのまま はめ込む だけでは、元通りにはならない。
できたら、放置したいん だけどねぇ。
「どうにか くっつけないと ダメなんだよね。」
「あっ、これ どうかな?」
私の目に、おにぎりの 乗った 皿が 目に入った。
お米の種類は、今回も「ひとめぼれ」だ。
粘りが強く、飽きのこない 甘み。
バランスがとれた やさしい味わいで、冷めても おいしいため、おにぎりに最適。
そう、ご飯粒で、ガラスを くっつけるのだ。
「アリー、それは、無理があるでしょ。」
いや、できるかも しれないじゃん。
「ボクでも、それは、やろうと思わない。」
ライレーンまでっ・・・。
「そもそも、お米で くっつけようなんて・・・。
どこまで、おバカですの?」
オリンピュアス、そこまで言わなくても・・・
だったら、みんな アイデア 出してよ。
[美容師の娘] 【 2-46.正しい、正座のススメ 】
「このグラスが、使えそうだね。
そこの 小さな革袋 取ってもらえる?」
ライリューンが、革袋に 水が入っていた グラスを 放り込む。
革袋の、口を 縛る。
パリィン
革袋が床に叩きつけられ、乾いた音を立てる。
「たぶん、まだ 大きいんだよね。」
つぶやきながら、2度、3度と 革袋を 足で踏む。
ザシュ、グリュッ
ミシミシでもなく、グシャでもなく、革袋は、押しつぶされるような 不思議な 音を立てた。
「これくらいかな?
お皿を 取って もらえる?」
おにぎりを取り分けるための小皿。
ライリューンは、革袋の口を開ける。
ザラリっ
お皿の上に 砕けた ガラスを 取り出した。
「ちょっと 破片が 大きいかもしれないけど、これを 使おう。」
革の手袋を、手に はめ、ビーズほどの 大きさになった ガラスの破片を 手に取る。
「じゃ、穴に 元の丸いガラスを はめ込んで。」
ライレーンが、丸いガラスを 穴に はめ込む。
やっぱり、スカスカだ。
「じゃ、ここに これを 詰めるね。」
ライリューンは、隙間に、ガラスビーズを 詰めていく。
「下に 落とさないように 気を付けてよね。」
元の 丸いガラスを 下に落としたら 大変だ。
「いや、無理だって。
ボク、こんなの 落とさないように 持っておくの、無理。」
ライリレーンが、悲鳴を上げる。
「ふふーん。大丈夫だよ。」
さっき、バカにされたけど、やっぱり いいアイデアじゃん。
ご飯粒の 出番だ。
少し潰して、粘性を上げる。
そして、箸の先に付ける。
ペタッ。
どう? これなら、落ちないように持っておけるでしょ?
ご飯粒を トリモチのように ネバつかせ、箸の先に つけたのだ。
それを2個。
ライレーンは、丸いガラスを、2本の箸で 固定する。
「アリー、ナイスっ。
これなら、外側に 落とさないで 持っていられるよ。」
「うん。このくらい 詰めたら いけるかな?
アリーの、ご飯粒も 使おう。」
トリモチ状にした、ご飯粒で、窓ガラスを 固定する。
「これ、仮止めね。
じゃ、そっちに離れて。アリーは、こっち。」
ライリューンに言われ、ライレーンは、2本の箸を 窓ガラスから離し、後ろに下がった。
代わりに、その位置には、私。
「アリー、ご飯粒は、焦げちゃっていいからね。
熱を加えて、ガラスの粒を 溶かしてくれる?」
火魔法を 調整する。
手の先から、熱を発生させ、だんだん強く。
700度を 超えた あたりで、ガラスの粒が 溶け始める。
1000度・・・1100度・・・1200度。
さらに温度を上げる。
「あっ、忘れてた。
こっちに、氷をお願い。」
ライリューンは、さっき、グラスを砕いた 革袋の口を 開いた。
あのね。ライリューン?
私、右手で、ガラスに 熱を かけてるんだけど・・・。
人使いの荒い ライリューンには、敵わない。
左手を、革袋の 上に 差し出す。
水魔法で 水滴を 作り、火魔法で それを 冷やす。
小さな 氷の 出来上がり。
ザラザラと、袋に落ちる氷。
ライリューンが、再び 袋の口を しばる。
「じゃ、アリー、場所を代わって。」
私と交代したライリューンは、氷の詰まった革袋を 窓ガラスに 押し当てた。
ジュワァァ
熱気を 帯びた 蒸気が 立ちのぼる。
ライリューンは、革の手袋をしたまま、確かめるように ガラスを擦った。
「んー。まだ ちょっと、滑らかさが足りないよね。」
窓ガラスのへこんだ部分に、ガラスの粒と、米粒を 押し付ける。
「うん。アリーもう一回、熱をかけて。」
繰り返すこと6回。
やっと ライリューンの OKが出た。
「たぶん、外側から触ったら、すぐ分かるんだけどね。
だけど、部屋の中からなら、たぶん ばれないよ。」
「じゃ、次は、床ですわね。」
困ったことに、床は、まだ 水浸し。
「私に、任せてっ。」
そう、いいアイデアを 思い付いたのだ。
床全体に、火魔法を 適用する。
温度を上げすぎると、燃えてしまうので、慎重に。
90度くらいが、丁度よさそう。
「ちょっと、アリー、何する気?」
「それ、ヤバイッ。ドアを、開けてっ。」
「アリー、それは、ダメですわ。」
3人が、大騒ぎする。
大丈夫だよー。一瞬で蒸発させちゃうから。
ジュワァッ
熱気を 帯びた 蒸気が 立ちのぼった・・・部屋中に。
「ケホケホ。」
「ボク、死んじゃうかもしれない。」
「アリー、あなた、どこまで、おバカですの?」」
一瞬で、蒸し風呂状態になった、貴賓室。
窓が開かないため、ドアを解放。
風魔法を使って、空気を入れ替える。
もちろん、正座しながら・・・。
いや・・・。いいアイデアだと思ったんだけどね。
それにしても、換気に、窓を 開けられないのは、不便だ。
「ん?
そういえば、1回戦の時って、窓、開けてなかったっけ?」
「確かに・・・。
ボク、窓を 開けて 応援してた気がする。」
「あっ、アリーは、まだ 正座ですわよ。」
そぉっと 立とうとしたのを、オリンピュアスは、見逃さない。
足が ジンジン しびれてきたよー。
換気も終わり、やっと、部屋が、元に戻ったころ、アタリヤ商会がやって来た。
配当を受け取り、ふぅっと 一息つく。
「そういえばさ、ここって 窓、開かないの?
昨日の部屋は、開いてた 気がするんだけど。」
アタリヤ商会の おじさんに 聞いてみた。
「あぁ、今日からの措置です。
昨日の試合で、物を投げ入れた人が おられるとか。
選手の安全確保のためですね。
高い位置の部屋は、窓を 開けられないようになっています。」
物を投げ入れる?
そんなことした人が、居たんだ。
もぉ、そんな人が居なければ、足のジンジンもなかったのに・・・。
ん?ん?ん?
どうした?
ライリューンと、ライレーンが、オリンピュアスを見ている。
オリンピュアスは、じっと下を向き うつむいている。
あぁぁぁぁっ。 花束っ。
エウリュアが 勝った時に、投げ入れてた。
私が近づくと、犯人は、顔をそらす。
さっき「まだ 正座ですわよ。」とか、言ってらっしゃいましたよね?
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アタリヤ商会の おじさんが退出した後、オリンピュアス下された罰。
それは、1時間の正座であった。
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ご飯粒・・・ご飯粒・・・ご飯粒・・・
辞書を見ずに、サッカー選手のリオネル・メッシさんを
きちんと「???」と漢字表記できる人は、第4話へ⇒
そして「???」を、覚えている人は、高評価を押して次の話へ⇒
蛇足1.
一昨日、リーグ戦30得点目を決めたメッシさん。
得点王獲得を、ほぼ確実としているそうです。
今季、カンプノウで戦う最後の公式戦とのことですが、来年も、バルセロナの選手として、その場所にいるのかな?って少し気になりますね。
蛇足2.
700℃を 超えた あたりで、ガラスの粒が 溶け始める。
例えば、ビール瓶を、バーナーで、部分的に加熱した時、割れます。
1200~1300度まで、アリーは、加熱したとは思います。
この方法で、本当に、うまくいくのかどうか・・・ん-、分かりません。
蛇足3.
ロンドンブーツ 田村亮さん
俳優・田村正和さんが、4月3日、亡くなられたというニュースを昨日見ました。
古畑任三郎の再放送を、見たことがあるのですが、シリーズ通して見てみたいなって思いました。
その時に、ふと、目に入ったのが、「弟の田村亮さんの追悼」という言葉。
ロンドンブーツ 田村亮さんしか、思い浮かびませんでした。
ほんと、全く知りませんでした。
田村亮さんの名前。
テレビで、顔は見たことあったんですけどね。
俳優の田村亮さんと、ロンブー亮さんは、同姓同名の別人。
ところが、家が近所のため、俳優・田村亮宛の小包が誤ってロンブー亮さん宅に届いた。
というトラブルなどは、けっこう有名な話らしいです。
ん-、ちょっと知らなさすぎですね。私が。