２－４０．極技～きめわざ 絡む足。
大歓声が、上がる。
大きく 持ち上げられ、叩きつけられる 体。
「砂で よかったね。地面が。」
ライレーンが言う。
「そうね、石畳だったら、死んでる。
土であっても 意識を 失ってるんじゃ ないかな。」
たぶん、ライリューンの 言う通り なんだろう。
「あっ、外れた。」
ノキマの 右腕に 絡んでいた エウリュアの 足が 外れてしまった のだ。
「エウリュア様・・・。」
オリンピュアスの声は、震えている。
[美容師の娘] 【 ２－４０．サブミッション ホールド 】
まずいっ。 足が、外れてしまった。
慌て、右足を ノキマの 左腕の上に入れる。
なんとか 肩にかかった。
相手の鼻を 狙って、こぶしを 投げる。
殴るのではなく、投げると言った方がいいだろう。
ペチンッ
なんとも 力のない 一撃。
鼻を殴り、出血をさせるのが 目的だ。
何とか、鼻に あてることが 出来た。
危ないっ。 ノキマの 右腕が、しなる。
これだけは、受けてはいけない。
トンっ。
左足の親指で、ノキマの 右肩の 付け根を 突くように 蹴る。
これをされると、力が入らず、ふにゃふにゃ とした パンチに なるのだ。
そして、左の手で ノキマの 顔面を 擦る。
鼻からの 出血で ノキマの 顔は、真っ赤だ。
流れる血で 鼻が、詰まっている はずだ。
どうだ、息が 苦しいだろう。
さらに、追撃 する。
頭は、固い。 こぶしは、使いたくない。
私は、ノキマの 頭蓋骨の 左側に 右の肘を 打ちつけた。
ゴンッ。
どれだけ 筋肉が あろうとも、ここは 鍛えられない。
ダメージは あるはずだ。
肘を嫌がり、右に 頭を振る ノキマ。
そこだっ。
ノキマの 右腕を つかむ。
そして、肩の上に 左足を振り上げ、私は、左足を ノキマの 首に 巻き付けた。
よしっ。反対 から 右足。
巻きつけた 左足の足首を 固定するように、上からロックする。
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それは、観客席。
騎士学院の ジンホは、エウリュアを、応援していた。
まさか、あそこから、逆転の目が あるとは・・・。
逆転は、瞬く間の 出来事だった。
騎士高等専門学校の対抗戦で、まれに見られる、高専柔術のテクニック。
絞め技・関節技の 多くは、騎士高専で 生まれたと 言われる。
不利な 仰向け状態から 決まる この技は、その典型だ。
この 動きは、相手の ガードを 簡単に 飛び越える。
まずは、上から 攻撃する 相手の腕を つかむ。
その肩の上に、片足を 上げ 首に 巻きつける。
あとは、もう片足の ヒザの裏の 部分。
ここで、巻きつけた側の足首を、固定し三角形を作る。
『三角締め』だ。
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この形になったら、私は、離さない。
あとは、どの手順で、相手を倒すか 考えるだけ。
パワーだけで、人に勝てる なんて 思わないことだ。
左手を 動かし、ノキマの 右腕を さばく。
ついでに ノキマの 顔面を 口を 軽く 攻撃する。
攻撃で、直接 ダメージを 与える つもりは ない。
ノキマの 口を 塞ぐ のが 目的だ
鼻からの出血で、彼は、鼻呼吸が 出来ない。
そこに、口を 塞いだら どうなるか。
ノキマの 顔が、真っ赤になった。
それでも、手を緩めない。
足が外れないように 右手で 自分の 左足の先を 押さえる。
ズズズっ
突然、体が、ずれた。
なんと、ノキマが、両足を 踏ん張り 腰を上げ、立とうと しているのだ。
後頭部が、すれる感覚で、体が 少しずつ 浮いているのが 分かる。
ノキマは、腰を上げ、反動を使い、後ずさりするように、ズルッズルッと 体を動かす。
ボグゥ
体をずらして 飛んできたのは、ノキマの 右ひざ。
かろうじて、顔面への 直撃は 避けたが、左腕が 動かない。
彼の 右ひざが、私の 左の上腕部を 捉えたのだ。
ノキマの 右パンチが、飛ぶ。
感覚のない 左腕で 受ける。
アゥっ。
感覚が なくても、衝撃と 痛みは、感じる。
動かない。感覚がない。のであれば、痛みも 感じなければ いいのに。
動く 右手で 相手の 頭を 殴る。
先ほど、肘を 入れた 頭蓋骨だ。
もう、肘を 使う 余裕が 無い。
固い 頭で こぶしを 傷めるなど と 言って いられない。
ふわりと 体が 浮いた。
なんてパワー。なんて精神力。
１０ｃｍ？１５ｃｍ？
持ち上げられた体が、下に落とされる。
ドン。
大丈夫。 たいしたことは ない。
さっきの ように、大きく 持ち上げられた わけでは ない。
強く、叩きつけられた わけでは ない。
ただ、低い位置から、落とされた だけ。
もう、そのような力は、ノキマに、残っていないのだ。
足で、首を絞める。
右のこぶしで、頭を殴る。
しかし、ノキマの 右は いまだに 危険だ。
動かぬ左腕を 無理に動かし、相手の 右のこぶしを 押さえつける。
一瞬、体が、浮いた。 そして、落とされた。
どうっと、ノキマの 体重が 私の 胸に かかる。
「ヘイ、ストップ。」
審判の手が、私の足と、肩にかかった。
パシパシと、手の平が、私を叩く。
「ストップ。エウリュア。」
強い力が、私の足を、ノキマの首から ひきはがした。
大歓声。
周りを 見る。
ノキマは、意識を失い、倒れていた。
私は、彼を 絞め落とすことに 成功した のだ。
審判が、ノキマを あお向けに転し、 彼の 上に またがる ように 立つ。
そして、両手を 横隔膜の位置に あてる。
大歓声の会場だが、それでも、審判の声が、響く。
「ハッ」
彼は、腹部 を押し上げるように、力を込めた。
意識を 失った ノキマに 活を 入れたのだ。
ふしゅぅぅ。
大きな 息の 音とともに、ノキマが 意識を取り戻した。
そのまま立ち上がり、審判は、私の隣に立った。
彼は、私の 右手首を つかみ、すぅっと 上に 持ち上げた。
「勝者、エウリュアっ。」
会場は、再度、大歓声に包まれた。
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やった。 ２回戦突破だ。
私は、そのまま、意識を失い崩れ落ちた。
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高専柔道の大会を見たことがある人は、高評価を押して次の話へ⇒
あっ、最後の高等専門学校柔道大会は、1944年（昭和19年）だそうです。
蛇足１．
騎士高等専門学校の対抗戦で見られる、高専柔術のテクニック。
絞め技・関節技の 多くは、騎士高専で 生まれたと 言われる。
不利な 仰向け状態から 決まる この技は、その典型だ。
高専柔道は、旧制高校、大学、専門学校の寝技中心の柔道。
柔術だと思いこんでいたんですが、柔道なんですね。
講道館柔道で、寝技への引き込みが禁止されているのは、
高専柔道の寝技を嫌った講道館が、ルールを変えて、
寝技を封じ込めたためと、言われているそうです。
さて、国際柔道連盟ルールと、講道館ルールとの違いは、
いろいろありますが、１つに「青い柔道着」があります。
全日本柔道連盟は「柔道の心は白」と「青い柔道着」には反対。
しかし、世界の大勢は、「青い柔道着」でした。
アトランタオリンピック後の 1997年10月、パリでの総会で、
「青い柔道着」の採用が、決まります。
しかし、日本国内での試合では、現在でも白の柔道着だけが使用されているようです。
いろんな意見があります。面白いものでは、
テニス、ウィンブルドン選手権では、練習用ウェアまで白と決められている。
大昔、相撲のまわしは、黒と紺のみだった。
しかし、今は、色のついた まわしも 認められている。
なるほど、って思いますよね。
ただ、「寝技への引き込み禁止」っていうルール変更を、
高専柔道の選手に寝技で負けるという理由で行っているのなら、
「青い柔道着」くらい大した問題ではないような気がします。
って思ってたら・・・
２０２１年、選抜柔道体重別選手権と、講道館杯で「青い柔道着」を採用。
あっ、そういえば、、３月２４日に亡くなったバルセロナオリンピック金メダリスト古賀稔彦さんの息子、古賀玄暉さんが、４月４日に、優勝してニュースになっていましたね。
あれが、選抜柔道体重別選手権大会だったみたいです。
柔道着の色ですか？
覚えていないっていうか、たぶん 写真すら、見ていません。
※柔道連盟のＨＰを見てみると、表彰式の写真が載っていました。
見事に、白と青でした。
蛇足２．
騎士高等専門学校の対抗戦で見られる、高専柔術のテクニック。
絞め技・関節技の 多くは、騎士高専で 生まれたと 言われる。
不利な 仰向け状態から 決まる この技は、その典型だ。
高専柔道？
本文に、使えそうな技を色々調べたのですが、読んでいてもわかりにくい。
素人なので仕方ないですね。
すごいのは、分かりましたけど。
特徴は、寝技中心の柔道。
寝技において「待て」の規定がない。
「場外」という概念がない
寝技への引き込みが認められている。
※柔道は、もつれたときのみ、寝技への移行が許される。
高専柔道では、自由に寝技にいける。
投げれば投げの一本勝ちも認められる。
ブラジリアン柔術などの 絞め技、関節技の多くは、高専柔道で開発された技術らしいです。
ヒール・フック、ヒール・ホールドは、かかとをひねって膝を極める関節技。
開発は、明治43年。高専柔道。しかし、禁止技となる。
ニーバー、膝十字固め。相手の膝が可動域の反対に曲がる関節技。
大正10年。しかし、禁止技となる。足の大逆と呼ばれる。
前三角絞。自分の内腿と相手の肩で、頚動脈を絞める関節技。
大正15年。高専柔道本。
腕挫三角固。三角絞めを仕掛ける様な状態からのアームロック。
大正15年。高専柔道本。
横三角絞。頭と腕一本を両脚で挟んで絞める三角絞。
昭和12年。
立三角絞め。スタンディングから入る絞め技。相手の背後から絞める。
昭和12年。
大正９年、高専柔道の強豪校が警視庁との２５人団体戦で５人を残して圧勝。
高専柔道の寝技を嫌ったっていう原因の１つは、コレみたいですね。
そういえば、高専柔道系統の七帝柔道っていうのが、現在もあるみたいです。
