2-36.おいしいお米
「エウリュアっ」
ライリューンが、大きな声を出した。
背が高くがっちりとした体格男が、振り向く。
「あぁ、ライレーンと、ライリューンじゃないか。
あれから、元気にしていたのか?」
「ボクたちは、元気だよ。
エウリュアは、かっこよくなったねぇ。」
ライレーンが、嬉しそうに答える。
2人とも、仲が良さそう。
小声で、オリンピュアスにたずねる。
「オリンピュアスは、知っている人?」
ん?返事がない。
オリンピュアスは、エウリュアと呼ばれる男性の顔をじっと見つめていた。
[美容師の娘] 【 2-36.一目惚れ 】
パンクラチオン。
「全ての力」を意味する言葉を冠した格闘技だ。
この格闘技は、打撃技と組技の両方が使える。
この競技では、目潰しと噛み付きのみが禁止される。
試合の勝敗は相手がギブアップすることで決せられる。
しかし、多くの対戦者は、ギブアップの意思を示すことを拒む。
このため、勝負の決着が、一方の死を意味することもあった。
「まさか、エウリュアが、パンクラチオンに出るとはねぇ。」
「泣き虫エウリュアでしたもんね。」
エウリュアは、ライリューンとライレーンの幼馴染。
顔立ちは、きれいであったが、体も小さく、泣き虫エウリュアと呼ばれ、近所の男の子たちにいじめられていたという。
いつも、双子姉妹に守られて過ごしていたエウリュア。
ところが、12歳となってあらわれたエウリュアは、すごいイケメン。
背は高くなり、目鼻立ちは、はっきり、筋肉質のいい体。
ん~かっこいい。
彼は、騎士団学校の候補生として、格闘技種目のパンクラチオン学生の部に出場する。
「仲良さそうねぇ。実は、どっちかの恋人だったり?」
ちょっと、2人をからかってみる。
「「それは、ない。」」
あっ、声が揃った。
「さすがに、エウリュアは、無いよね。」
「まぁ、エウリュアですから。」
ライリューンとライレーンは、厳しい採点。
「らしいよ。良かったね。オリンピュアス。」
「な・・何が良かったですの?」
「ん-ダメだねぇ。
だって、オリンピュアス、ずーっと目がハートだよ。
エウリュアの顔をじぃぃっと見てるし。」
「そ・・そんなことございませんわ。」
「そう? じゃ、パンクラチオンは、見に行くのやめる?」
「え? あの・・・。いや・・・。
も・・・もちろん行きますわ。
親友の幼馴染ですもの。
応援して差し上げないとダメですものね。」
「飛翔師学院からも、代表が出てたような気がするんけどね。」
「そちらは、知り合いではございませんもの。
ライリューンとライレーンの方が大切ですわ。」
顔を赤くしたオリンピュアスを、みんな生暖かい目で見ていた。
「そうなんだって。
ライリューンとライレーン、大切にされてるよ。
オリンピュアスに。」
ライリューンとライレーンは、オリンピュアスを見てクスクス笑う。
「エウリュアは、6倍ですわ。
わたくし、彼に白金貨10枚です。」
誤魔化すように、オリンピュアスが声を上げた。
「オリンピュアス、とりあえず貴賓席についてからにしよ。」
「ここで、白金貨なんて出さないでよね。」
会場入り口近くで、馬車を降りることになった私たちは、一般入口とは別の要人専用入口へ案内されている所。
こんなところで、お金出そうとしないでよね。
でも、要人扱いするなら、馬車を乗り入れさせてほしかったね。
いま、オリンピュアスが、ちょっとおかしいし。
恋する乙女になってるから。
会場が、それほど大きいわけではないので、馬車の乗り入れが難しいらしい。
あら? 入口に 「 V I P 」 って書いている。
この世界でも、VIPっていうんだね。
階段をのぼり、貴賓席へ。
競走馬スタディオン走の貴賓席より、ちょっと狭い。
あら?パンクラチオンの冊子だけじゃなくて、何かある。
メニュー表と注文票?
あら、ここ食事も頼めるのね。
ぱらぱらと、メニュー表をめくる。
あぁ白いご飯がある。お米~。
西のヘドファン伯爵領だと、お米は、一般的なんだけれど、王都だとあまり食べられない。
これは、頼まなきゃ。
「みんなも、食べる?」
「「うん。」」
ライリューンとライレーンの声が揃った。
「わたくしは、必要ないですわ。」
あら?オリンピュアス食べないの。
ん-オリンピュアスに一番食べてほしかったのにな。
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いや、おコメの銘柄が、「ひとめぼれ」だったから だけどね。
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蛇足1.
格闘技は、競技の分類の一つで、球技、陸上競技と同じレベルの表現。
らしいですね。
球技と、格闘技が一緒だとは思えないんですね。
武道系競技が、スポーツと同じレベルで語られるとちょっと違和感があります。
でも、実際にやっているひとからすると、違うのかな?とも思います。
どうなんでしょうね。
蛇足2.
V I Pって、どういう意味なのかな?って思いました。
Very Important Person
かなり 重要な 人物。
んー。ベリー インポータント パーソン って言われたら、なんか軽くなったように思います。VIPの方が、要人ぽいですね。
蛇足3.
ひとめぼれは、イネの品種の1つ。
別名東北143号。
宮城県にある古川農業試験場で、コシヒカリと初星の交配から育成されました。
イネの耐冷性を上げるために作られた品種だそうです。
そういえば、昔って、冷害で不作ってあったらしいですもんね。
良く知りませんけど。
と、いうことで、ウチのお米は・・・コシヒカリ。
なんですけど、
ひとめぼれ をもらったんですよね。5kg。
食べ比べてみようかな?って思ってます。