2-29.匂うアルコール
エトリーヌ・チャト・ウィックの衛生学実習の授業。
ライリューン、ライレーン、そしてオリンピュアス様。
ん-。オリンピュアス様と一緒に受けるのは、ちょっとやだな。
[美容師の娘] 【 2-29.アルコールを作ろう 】
私のテーブルは、4人の美女が、揃った。
ライリューン、ライレーン、そしてオリンピュアス様と、私!
この一画は、華やかだわ。
今日のテーマは、消毒用のアルコールを作る。
水魔法の応用。
銅のような色の板の上に、水の膜を張る。
そこに火魔法で火を発生させて空気を送り込む。
そして、エトリーヌ先生の発明した魔道具に、張った水の膜を流し込むと・・・。
なんか、水滴がポタポタ溜まる。
これが、消毒用のアルコールの素。
これを水で80%くらいに薄めたら出来上がり。
なんだけどぉ。
今日の実習は、これが目的じゃない。
エトリーヌ先生の発明した魔道具の働きを、自分たちの魔法で行おうっていう実習。
3年生のライリューンと、ライレーンは、簡単に出来るみたい。
あっさり成功しちゃった。
2年生のオリンピュアス様・・・。
ポタポタと手の中から滴り落ちる液体は、アルコール。
成功だね。
うーん。次は、私。
魔道具の代わりに手の中の空間に、水の膜を流し込む。
火魔法から流れてくる空気が熱い。
これって、失敗したら手を火傷しそう。
ポタポタポタ。出来た。成功ね。
ん?
「臭いです。」
「何か、匂いますわね。」
「エトリーヌ先生。これは、消毒できるのでしょうか?」
ちょっと、3人、授業始まる前までケンカしてたでしょ。
なんで、仲良く私の魔法にクレームをつけてるの。
あっ、エトリーヌ先生。ほら、ちゃんと出来てるでしょ?
「・・・匂いますね。
アリー様。これは、いったい何をお作りになられたのですか?」
えーと。
教えてもらった通りに、アルコールを作りましたよ?
「一応、火をつければ燃えますし、消毒力もありそうです。」
ひどい。仲間外れだ。
3人は、1個の容器に自分たちのアルコールを詰めている。
なのに、私のアルコールだけ別の容器に・・・。
「だって匂うんですもの。アリー様。」
オリンピュアス様が、露骨に鼻をつまむ。
「なんで、こんなアルコールが出来るのかしら?」
ライリューンは、可哀そうな子を見る目で私を見る。
「これも、ある意味、才能ですわ。」
ライレーンは、褒めようとしているのか、けなしているのか、分からない。
いいもん。ちゃんと、消毒もできるし、火をつければ燃えるし、作成の試験には、合格したもん。
私は、マイ容器に匂うアルコールを詰める。
よし、完成。
ほら、3人がかりのそっちより早くボトルに詰め終わったよ。
これは、才能とかじゃなくて、魔力量の差だけどね。
先に終わったので、最後の課題。
エトリーヌ先生が、見てくれる。
お部屋内の空気を、きれいに消毒する。
これは、風魔法を持っている生徒だけ。
オリンピュアス様は、出来ないのよね。
マイボトルのアルコールを、風魔法でぴゅーっと発射。
液体のままのアルコールも、霧吹きのスプレーを噴出するように部屋中に充満させる。
「アリー様、もう結構です。おやめ下さい。」
鼻と口をハンカチで押さえたエトリーヌ先生が、走ってきた。
「みなさん。換気を。」
あわてて、皆が窓を開け、空気を入れ替える。
・・・匂いが耐えきれなかったみたい。
学生としての試験は、合格。
だけど、実地で仕事をするには不適格。
私の評価は、ABCDEの「C」。
ライリューンと、ライレーンは、双子仲良く「A+」。
オリンピュアス様は、「A-」。
なんで、そんなに仲良さそうにしてるのよ。
身分差があるでしょ。身分差が。
授業前の言い争いがなかったように、双子にコツを教わっているオリンピュアス様。
仲間外れにしないで、私にも、教えなさいよー。
「特徴的な魔法ですから・・・。」
「アリー様は、オリジナリティがあふれる魔法ですので・・・。」
「この、ボトルは、どう処理すればいいのでしょうか?」
・・・。3人ともキライだ。
いじけた私は、授業終了とともに、ナカヨシの研究室へ向かった。
ねーねー。私だけアルコールが違う匂いなんだけど。
なにやら論文らしきものを読んでいる、ナカヨシに聞いてみる。
「ん?ちょっと、ここに作ってみよ。」
ポタポタと、ガラス容器に匂いのアルコールを垂らす。
「あぁ、曲がったアルコールじゃな。
これは、貴重なものじゃ。なかなか作れる者はいない。
才能じゃな。」
えーと、私は、普通のアルコールが作りたいんだけれど・・・。
「込める魔力の量を減らせばよいだけじゃ。
今、アリーは、300の魔力を込めて取り出している。
それを、200の魔力を込めて取り出すだけじゃな。」
200とか300とか分かんないよ。
数字でいわれても。
「液体からアルコールを取り出す時の力を一定にせよ。
そして、今の力の3分の2の力にするのじゃ。」
ポタポタと、手の中の空間から、水滴が落ちる。
あっ匂わない。出来たよー。
ナカヨシ、いい仕事するね。先生みたいだよ。
「腐っても教授じゃからの。その程度はわかる。
しかし、匂うアルコールを作れるものは少ない。
そちらも意識して作り分けるようになると良い。
練習しなさい。」
オッケー。
マーガレットを、ナカヨシ研究室の私の部屋に残して走る。
エトリーヌ先生ー。もう一回、試験お願いしますー。
授業の片づけをしていたエトリーヌ先生を捕まえる。
再試験だ。結果?もちろん「A+」。
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よし、オリンピュアス様に勝ったよ!
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みりんに、酒税がかかることを知っていた人は、
高評価を押して次の話へ⇒
蛇足1.
みりん(本みりん)は、混成酒の扱いで、酒類調味料。
本直しは、みりんに焼酎を加えたもので、混成酒の扱い。
これらは、酒税が課税されます。
みりん風調味料は、食品。
酒税の対象ではありません。
そして、消費税。
みりん(本みりん)本直しは、10%。
みりん風調味料は、8%。
なんか納得いきませんね。
蛇足2.
消毒用アルコールは、酒税法上の「酒類」。
酒税が課税されます。
飲むわけでもないのに、なんか、納得いかないです。
ということで、イソプロピルアルコールやユーカリ油を添加して脱・・・
ごまかします。これで飲めませんよー。
ということで、出来たのがIPとか名前についている消毒用アルコール。
ちょっと安いですね。
あっ、消費税は、10%です。
蛇足3.
イソプロピルアルコールは、ちょっと匂いますが、そこまでひどくは匂わないですね。