2-27.【閑話】アレキサンドロスの嫁探し2
リンゴは、噛むとシャクリと音をたてた。
甘酸っぱい香りを感じながら、愛馬ブースケパレーを走らせる。
隣を駆ける馬を見つめる。
馬のたてがみは、黄金色に輝き、夕日を反射していた。
このリンゴは、私がもらう。
フィリップスに、パオラ妃に渡すわけにはいかない。
[美容師の娘] 【 2-27. リンゴの木の下で口づけを♪ 】
「陛下、エペイロ家の令嬢は、フィリップスの婚約者に。」
第2王妃パオラは、王に訴える。
何度目だろうか。執着がひどく浅ましく見えた。
「そうですね。これ以上、争っても問題が起こるばかりです。
フィリップスと婚約。良いかもしれません。
ただし、長幼の序と言うものがあります。
私の、婚約者が決まるまでは、お待ちいただきましょう。」
オリンピュアスなど、くれてやる。
私は、運命の相手を既に見つけたのだ。
「あら? アレキサンドロス。 それでよいのね。
では、すぐにでも、自分の婚約を 固めなさい。」
「困りましたな。
そういえば、西の伯爵家の娘が、学院に来ているとか。
私は、そちらを 婚約者と いたしましょう。」
「西? ヘドファン家に娘? 初耳ですわ。」
「アレキサンドロス。 そちは、耳が早いの。」
王が 重い口を 開く。
「ふと、耳にしただけで ございます。」
「いやいや、耳だけではあるまい。手も早いようじゃ。
すでに、2人で 出かけたと 報告にあった。」
「父上こそ、耳が 早よう ございますな。」
「よし。許そう。
ヘドファン家の娘アリーを アレキサンドロスに。
オリンピュアスは、フィリップスの婚約者に。
それぞれ、当主に 使いを出すことに しよう。
パオラも それで良いな。」
「ヘドファン家・・・それは、どのような者なのでしょうか?」
「パオラ、オリンピュアスは、フィリップスの婚約者とする。
それで良いな? と聞いておるのじゃ。
お主が、先ほどまで 繰り返していた 話じゃぞ。」
「は・・はい。」
私は、パオラ妃を出し抜いたことに、少し気分を良くした。
しかし、父には、驚かされた。
まさか、昨日の遠乗りの話が、もう耳に入っているとは。
何も知らぬような顔をしていても、王は王だな。
王宮を出て、馬車は走る。学院へ。
アリーを手に入れることに成功した。
そう思うと、ブースケパレーで、駆けだしたい気分だ。
馬車の中で、こぶしを握る。
貴族の婚約は、本人の意思で 決まるものではない。
むしろ、本人の意思など 無視されるのが 普通だ。
私と、ヘドファン伯爵家。そのつり合いを 王が許すかどうか。
パオラ妃が、アリーに気づく前に、それを認めさせる必要があった。
ただし、必要なのは、王の認知だけではない。
周知も 必要なのだ。
入学の式典の、朝。
「アリー。体調不良で 式典に 出られないらしいな。」
「は? 今から、遠乗りに行けるくらいには、元気だけど?」
その遠乗りに 誘いに来たのだが・・・。
「式典には、私のほうから 欠席で連絡し、届けを 出してある。
王族からの 届け出だ。 だれにも 文句は言わせない。
少し郊外に 出てみよう。 馬の用意を 急げ。」
「オッケー。そういえば、体調 悪かった気がするー。」
ふっ、わかりやすい。
おっと、アリーの お側付きが 固まっているな。
このような主だ。
早く慣れぬと、気も体も 持たぬ気がするが・・・。
ブースケパレーを、アリーの馬に並べる。
丁度よい時刻だ。 まだ、入学の式典は始まっていない。
あの、リンゴの木の下へ。
ブースケパレーを飛ばす。 隣には、アリー。
青い空は 澄み、風が、髪を 揺らす。
丘を のぼり、紅色の玉、赤い果実が 見える。
「護衛が、毎回 ついて 来れてないって 危なくない?」
こうして、話している姿だけみれば、アリーは、ただのチンチクリンな お子ちゃまなのだが。
「前にも 言ったように、すぐに追いつく。よくあることだ。」
アリーは、鞍の上に 立ち上がり、リンゴを 取る。
このように、日の光に照らされた瞬間、神々しさがあふれる。
美しい。絵画のような情景に、目を奪われる。
「今日は、私には くれないのか?」
ポイッ。
リンゴが まるごと 1個、こちらに 飛んできた。
何というか・・・。 ひどく 警戒されたものだ。
受け取らない。 コロリと リンゴが 下に転がる。
ブースケパレーを 前に進める。
丸呑み。ブースケパレーらしい。 笑みが こぼれる。
「こうするために リンゴを 取ったのだろう?」
リンゴを 半分かじりとり、右手で アリーの頬を撫でた。
「アレックスの ばかっ。」
「私は、イスカンダルだ。 間違えるな。」
私の護衛騎士たちが、追いついて来る。
もう少し 遅くても 良かったのだがな。
「イスカンダル。 行くよっ。 私の スピードで 帰るからね。
ちゃんと 合わせてよ。」
アリーは、スピードを 護衛たちに 合わせているようだ。
護衛が 遅れることを 気にしている。
「仕方ない。しかし、遅いな。
エンドーは、疾走するのが 楽しくないのか?」
「今は、これでいいよ。 来るとき、走ったからね。」
都合が 良い。私も そうするつもりだった。
今日は、入学の式典。 そろそろだな。
学院の 裏門をくぐり、馬を 乗り入れる。
「ん? 何? あの集団。 あっこっち見てる。」
いやいや、あの集団は、無いだろう。
護衛には、気を使うが、こういうものには 気を使わない。
アリーは、なんとも アンバランスだ。
「私、体調不良? だったような 気がする。
これって 大丈夫 なのかしら?」
「問題ない。 私が 届けを出している。 アリーは、病欠。
遠乗りに でかけたのは、イスカンダルと、エンドーだ。」
前に 言っただろう。 名前が違えば、どうにでも なる。」
あぁ、全くもって 問題ない。
入学の式典をサボってまで、私と出かけたことが周知された。
「姫の願いを かなえることが、私の幸せだ。」
ついでに、私の願いも 叶えさせて もらったしな。
「じゃねっ。 楽しかった。 ありがとうね。」
私が、馬から降りると、アリーも同じように飛び降りた。
馬から飛び降りる アリーの髪が揺れ、風に包み込まれる。
一歩進み、ふらついた アリーを 抱きとめた。
私は、アリーを体で感じたい。 鼓動が近づく。
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ふっと、リンゴの香りが したような 気がした。
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蛇足1.
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白血病からの大逆転。ちょっと涙が出そうでした。
記録が、53秒98だったのですが、あと1か月あれば、53秒31も出せそうな気が・・・。
31まで出せたら、自由形個人でも出場できたのに・・・。
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蛇足2.以降は、内容が全く面白くないので途中で書くのをやめました。
蛇足2.
「日暮れの鳴門でチュッ♪」は、顆粒球(特に好中球)の分化・増殖を促進するG-CSF製剤、「フィルグラスチム」「レノグラスチム」「ナルトグラスチム」の頭の、フィル-レノ-ナルトと、「好中球」のチュを・・・
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