1-6.ダイエットしなきゃダメ? [1]
母ウェンディは、水魔法を使う。
彼女が 魔力を込めると 水があふれ 花を潤す。
その場が パッと明るくなる。
その雰囲気に 人は 噂話に 口を開く。
曰く、東にある帝国からの流民に 地方の村が襲われた。
曰く、偉い研究者が作り出した バニラ豆の成分の香水が 売り出された。
曰く、貴族の女性の 長く美しい髪を 平民が真似するようになってきた。
父イアンは、ハンサムで優しく 力強い。
ただ、不思議なことに 私を 抱っこする時に、重そうな素振りをするようになった。
本当に不思議だ。全く、ぜんぜん、これっぽっちも、理由が分からない。なんでだろう。謎っ。
気にしちゃダメっ!
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私は、4歳になった。
母と、口数は少ないが優しい父と3人で暮らしている。
ウェンディは、お客さんの髪を石鹸で洗った後 、椿の花の油で髪をコーティングする。
そして最後に使うのが「ナカヨシ印 バニラの匂い」の香水だ。
人と仲良くなりそうな名前だけど、偉い学者の「ナカヨシ」という人が作り出したものらしい。
何故か木材を扱う商会が独占販売をしているそれは、とても人気で とても貴重で…。
そう、香水の瓶は 子供の私には 触らせてもらえない。
そして、私は気づいてしまった。
この世界の石鹸は、アレが足りないことに。
香りが ほとんど 無いのだ。
「石鹸に香りがあれば、バニラの香水いらないよね?」
ナァイス アイディアっ。
私、天才かも。
ここで登場するのが「野バラ」。
この世界のバラも品種改良が進んでいるし、バラの香水も存在する。
しかぁし、バラの花びらを馬車一台分集めても10mLほどの香り成分しか抽出できないため、「バラの香水」 は 非常に高い。
そこそこ高価だが平民でも購入できる「バニラの香水」と比べて、「ニ」の文字1つで桁が、ゼロ3個分違ってくるのだ。
貴族か 大商人 でないと 使えない代物だし、貴族でも 石鹸に使うなんて 贅沢なことはしない。
そこで~ 私の「野バラ香水」大作戦!がスタートしたのだ。
この世界の高級な「バラの香水」 は、花びらから 水蒸気蒸留で 抽出される。
大きな縦長のお鍋の中に網のような仕切りをつくり、水を入れて網の上にバラの花びらを置く。
お鍋を熱して、水を沸騰させると、水蒸気が上昇。
この時、水蒸気とぶつかったバラの花びらから、香りの成分が抜けて上昇していく。
香りの水蒸気は、最上部まで上昇したところで、鍋蓋に取り付けた管へとすすむ。
この逆U字の形の 金属の管を 冷却すると、香りの成分は 再び液体となって 下に落ち、油が浮いたような状態で 受け皿に溜まる。
この油みたいなのが 香りの成分なのだ。
まぁ、こーんな 複雑で 面倒なことを しなくても大丈夫。
実は、私にとっては「野バラ香水」を 取り出すの自体は難しくない。
と、いうのも 普通に 水魔法で 花びらから、抽出できてしまう。 私は・・・。
ウェンディは、水魔法が使えるんだけど、できない。 なんでだろね?
じゃぁ、やってみよう。バラの花びらに手を当てる。
そのまま、香りの成分に意識を集中して、水魔法をかける。
薄いピンクの 花びらから 零れ落ちる 滴からは、甘くて フローラルな 香り。
サンショウバラは、美容院に来る マダムにも 好かれそう。
ただ、足りないんだよね。量が。
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そう、一番の問題は 収量なのだ。
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子曰く、教科書の正岡子規に
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曰く、東にある帝国からの・・・から、子曰くが、出てきたんでしょうね。一応、「東にある帝国からの流民」も、「偉い研究者」も、「バニラ豆の成分の香水」も、「何故か木材を扱う商会が独占販売」も、伏線を回収している所を見ると、けっこう真面目に先のことを考えて書いているようにも見えます。