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2-17. アリワーヌ・アント・ジェミニの戦争数学概論

期待して 出席した、初めての 授業。初年度の 座学だ。

私は、一番前の席で、授業を 受けることにした。


ジェミニ先生の『戦争数学概論』は、人気の講座・・・みたい。


「兵站は、飛翔師兵が 行動を起こすために 必要な考えだ。

 補給を 疎か(おろそ )にした軍は、敗れる 運命にある。


 私の講義は、高度な計算を基礎にした軍事活動のための授業だ。

 ついて 来られないものは、容赦なく 切り捨てる。

 そのつもりで、講義を 受けるように。」



学校ーって感じ。 いいな。 なんか懐かしい。



「それでは、さっそく 問題だ。


 3月20日現在、食料が「22」残っている とする。


 兵数に 変動がなければ、食料の減りは 一定だ。

 1日に 食料は、2 減っていく としよう。


 3月1日から 食料を 消費していく とする。

 3月10日には、どれだけの 食料が 残っていたか?

 

 うん。 諸君には、まだ 分からない であろう。


 これを 計算するには、非常に 高度な 数学的知識が 必要だ。

 それでは、数式を教えよう


 3月10日は、20日から 見て -10だ。

 1日に 減る量。-2だな。

 現在の 残量は+22。


 よって、数式は、(-2)x(-10)+(22)。

 

 つまり 3月10日には、「42」の 食料が 残っていたのだ。


 注意する点は、マイナスと マイナスの 掛け算だ。

 -2と -10を 掛けると プラス20 になる。

 マイナスどうしを 掛けると プラスになる所に 気をつけろ。


 それでは、手元の 練習問題を 解いていけ。」



おーい。

これ、ただの 足し算と 掛け算じゃない・・・。

こんなのが、高度な 計算を 基礎にした 軍事活動って・・・。

ここ、どれだけ おバカが 揃ってるのよ。




[美容師の娘]  【 2-17. マイナスの掛け算 】




ヤバい。全然、分かんない。


誰が 誰だか、全く わかっていないの って 私だけ?


入学の式典の後、オリエンテーションが あったみたい。

みーんな、打ち解けて会話してる。


履修の(りしゅう )説明、健康診断、プレースメントテスト・・・。

ほぼ全員が、これを 受けた上で、授業に 出てきている。


あぁ マーガレット 行かないで・・・。


側仕えは、講義中に 教室の中に 待機することは できない。

私のマーガレットも、荷物を 置くと 退室した。


周りに、知っている顔は、無い。

あっ・・・。 フィリップス殿下・・・。


し・・ 知らない人しか 居ないね。 この教室。 残念っ。


私は、そぉっと フィリップスから 遠ざかるように 移動し・・・。


出来なかった。


来るなぁ。

ニコニコと、フィリップスが 近づいてくる。


「やぁ、アリー。 体の調子は、どうかな?」


不快です。 不愉快です。 近寄らないで。


前と違う 話し方。

馬場では、もっと お子ちゃまみたいな 話し方だったのにね。

背伸びしてる。


「式典を 欠席していた みたいで、心配 していた。」


イケメンっぽく 笑って 話しかけるフィリップス。

でも、あなた、階段の下から 泣きそうな顔で (のぞ)いてる イメージだからね。


「心配していただいて、ありがとう。 もう大丈夫です。」


すっと 距離を取る。 って・・・詰める なぁ。

フィリップスは、私が 1歩 下がると、1歩 近づいて 来る。


誰か、助けようよ。 さりげなく 周りを 見渡す。

え? みんな、こっちを 注視してる。


目立ってるよー。


「アリーは、兄上と 婚約したと 聞いたが・・。」


あぁ、手紙を書こうとしたら マーガレットが 泣いたのよね。

王子との 婚約の解消なんて あり得ません。って。

だから、まだ アレックスと 婚約している 状態だね。


春の宮に 入らなくてはならないって 言われたし、うーん。

美容院 できなくなるの、やだなぁ。 いい方法ないかしら?


「そうですね。

 アレクサンドロス殿下から、突然、申し渡されました。

 びっくりして、まだ、実感が わいておりません。」


早く授業 始めて欲しい。フィリップスから 解放されたい。


「えー・・・その・・・アリーは、兄上が、好きなのか?」


ん? アレックス? そだねー、君よりは、好きかも。

性格も うじうじ してない もんねー。


「まだ、お会いしてから 間がございません。

 お(した)い していると までは、申せませんが・・・。

 素晴らしい方だと 思います。」


よしっ。完璧。

こういう 受け答えは、マーガレットに 叩き込まれた。

わがまま王子とは、さっさと 婚約解消したいとは、言えないよね。


「そうか。 私は、馬に 乗れるように なった。

 兄とは、遠乗りに 出かけられたと 聞きいた。

 私とも、一緒に遠乗りに 行かないか?」


え? 遠乗り? それいいねー。

思わず、行くーって 言いそうに なる。


でもね、よく考えると、フィリップスは 馬に乗り始めた ところ。

無理だって。 私と ベルに ついて来るの。

また、泣かれそうだわ。


「まだ、学院に 慣れておりません。

 いろいろな 授業が 始まったところ ですし・・・。

 殿下も、少し 馬に慣れてからというのが 良いと思います。」


もうちょっと、ちゃんと 乗れるように なってから 言いなさい。

っていう、お姉さまからの 助言。 うーん。 クールだわー。


あっ、お姉さまって、同い年だったな。


「そうか。 では、慣れたら 行くということで よいな。」


おいおい。ポジティブ すぎるでしょ。その思考。

もうちょっと、釘を 刺したほうが よさそう。


「二人とも、席に 着きなさい。

 君たちのように 身分の高い者が 先に座席に つかないと、

 ほかの者は、座席に つくことが 出来ない。」


あっ。 ジェミニ先生。


そっか、注目されていたのは、王子と 話していたからじゃなくて、

座席に つくことが 出来ないからだったのね。


フィリップスに 軽く頭を下げ、離れる。

そのまま 王子は、中団の席へ。 よし、一番前に 行こう。



******************************



疲れたよ。

1日中、足し算と 引き算を やらされるとは 思わなかった。

あっ。後、掛け算と 割り算も・・・。


私は、一瞬で 解けるけれど、周りが 延々と 間違い続ける。


ねぇ、マーガレット。 紅茶 いれてくれない?


「ご用意が 出来ました。」


マーガレットから カップを 受け取る。


「フィリップス殿下との 交流には、お気を 付けください。」


授業前の やり取りを、マーガレットに 話すと、注意された。

紅茶のカップを 置き、話を聞く。


「アリー様は、アレクサンドロス殿下の 婚約者です。

 フィリップス殿下と 親しくすることは、誤解を 生みます。」


いやいや、誤解も何も、あんな お子ちゃま 相手にしないって。


「いえ、第一王子と、第二王子の争いと 見られます。

 しかも、お話を お伺いする 限りですが・・・。

 フィリップス殿下は、アリー様にご好意をお持ちのようです。」


うそー。 まったく 気が付かなかった。

フィリップスが? 私を 好き?


私の あの子のイメージ、思いっきり マイナスだし。

あっ 遠乗りに誘う っていう点だけは、プラスの イメージね。


まぁ、マイナスとプラスを 掛け合わせたら、結果は マイナス。

無理ね。お付き合いは、して あげられないー。


「違います。 婚約者が ある身です。

 お付き合いを 考える時点で 間違いです。

 フィリップス殿下とは、一定の距離を お取りください。」


ん-と、3メートルくらいでいい?


あっ、こめかみの 血管が ピクピクしはじめた。

マーガレット、怒ってるね。


うんうん。 わかった。 ちゃんと理解してるって。


せっかくのモテ期だけれど、身分というもののは、メンドクサイ。

人との 距離を 考えなければ ならないのだ。


どうしようかなぁ。

ピョンっと ベッドに 飛び乗り 寝転ぶ。


=== ===== === ===== ===



「アリー様、ベッドに 飛び乗るのは、おやめ くださいっ。」


あっ、怒られた・・・。



=== ===== === ===== ===

非常に 高度な数学である、4桁の足し算が 出来る人は、

高評価を押して次の話へ⇒


蛇足1


天皇陛下 側近トップの 侍従長である 小田野展丈さんが、4月1日で 勇退するそうです。


アリーの世界で 侍女頭にマーガレットという名を 付けました。

いろいろ思い浮かんで、迷ったのですが、タノー・ブーケ・ダノーンと言う名前は、初期の廃案です。


おだの のぶたけ ⇒ たのー・ぶーけ・だのぉん


日本語の名前を、カタカナにして 組み換えると、妙に固いイメージの 名前になるんですよね。


マーガレットのほうが、柔らかそうです。


また、職名も 侍従や女官に するかも 迷いました。


お付きの侍女 や お側仕え の 表現との 比較でした。

侍従長や 女官長 という職名は、固い。そして、人数が多そう。

って イメージです。


やっぱり、お付きの侍女・マーガレットで 良さそうです。



このあと蛇足2が ありましたが、その書き出しは、


『戦争概論』で有名なアントワーヌ・アンリ・ジョミニは、兵站を・・・


でした。


このあと蛇足3がありましたが、


後の話に使えるかもしれないので、取っておくことにしました。


その書き出しは、ディオスクーロイ・・・でした。

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