2-15. 入学の式典~王立 飛翔師 学院
「飛翔師兵団は、王家を支える 矛であり、盾である。
私は、王家の血をひくものとして、皆とともに 学ぼうと思う。」
第2王子フィリップス殿下が、壇上で 挨拶を述べた。
少し 子供っぽい その姿は、ほほえましい。
「フルーク王国では、未来を担う 人材が 求められております。
本年もまた、この学び舎が 開かれました。
学院は、あなた方を 歓迎いたします。
師兵見習いとしての 誇りをもって お過ごしください。」
オリンピュアス様は、在学中の学院生を 代表され 発言される。
美しい。 たおやかで、麗しい 立ち姿。
なのに なぜ、なぜ、私の主は、この場所に いないのだろう。
もちろん、理由は、分かっているの だけれども。
私の名前は、マーガレット・タウンゼント。
お側仕えとして、私は、アリー様に ついているはずで あった。
馬に乗って、学院の 外に 飛び出してしまった 主の側に。
アリー様、少し ご自重 くださいませー。
[美容師の娘] 【 2-15. 入学の式典の裏で】
「ちょっと、イスカンダル。 飛ばしすぎ。
後ろ 誰もついて 来れてないよ。」
黒馬ブースケパレーで 駆ける 第1王子アレクサンドロス。
そのあとを 追う私。もちろん ベルの背に乗っている。
入学の式典の、 慌ただしい朝。
なにが 慌ただしいって、侍女頭の マーガレットが バタバタするから。
いや、お側仕えとして完璧な姿で、送り出すとか・・・。
いらないって。 ある程度、形が出来ていれば 問題ないでしょ。
こういうところ 融通が 利かないのよね。 この子。
向こう側に 立っている子と、チェンジして もらおうかしら。
「アレクサンドロス殿下が、お見えに なりました。」
え? アレックス?
「アリー。体調不良で 式典に 出られないらしいな。」
はぁ? めっちゃ 元気ですけど?
「式典には、私のほうから 欠席で連絡し、届けを 出してある。
王族からの 届け出だ。 だれにも 文句は言わせない。」
アレーックス。 わがまま言いすぎでしょ。 何してるの?
「少し郊外に 出てみよう。 馬の用意を 急げ。」
はいっ。 そういえば、体調 悪かったのを 思い出しました。
倒れそうです。
いやぁ。 アレックス、私の体調、よく分かってるなぁ。
ベルー お外だよー。
フリーズしてしまった マーガレットを残し、準備を お願いする。
「急いでね。アレックスを 待たせるのは、不敬だよー。」
王族を 待たせるなんて とんでもないよね。 わーい。
階段を 3段くらい 飛ばしながら 降りる。
ん? なんか オリンピュアス様みたいなのが 見えたな。
まいっか。
ベルを、ブースケパレーに 並べる。
「私は、外では、イスカンダルだ。 分かっているな。」
うんうん。知ってる。 だから さっさと出発しよう アレックス。
って、飛ばしすぎ でしょ。
そっちの 護衛騎士、まったく ついて 来れてないよ。
リンゴの木の下で、ブースケパレーが 止まる。
ベルっ 休憩だよ。
「護衛が、毎回 ついて来れてないって 危なくない?」
私は、アレックスに 尋ねた。
「前にも 言ったように、すぐに追いつく。よくあることだ。」
よくあるから、狙われると 思うんだけどね。
鞍の上に 立ち上がり、リンゴを 取りながら思う。
まいっか。
リンゴを 水魔法で洗い、風魔法で カット。
あぁ、ウサギさん 失敗。
耳の部分が 切れちゃった。
魔法で リンゴを ウサギさんカットに するの 難しいのよね。
ベルっ 失敗したほう あげるね。
私は、こっち。
「今日は、私には くれないのか?」
ポイッ。
この前 みたいなのは、やだ。
リンゴを まるごと 1個アレックスに 投げた。
ブースケパレーが、2歩前に 進む。
カプッ。
あっ、丸呑み。
馬って、喉 つまらないのかしら? 大丈夫?
って・・あぁん。
また、口から リンゴを 半分かじり取られた。
「こうするために リンゴを 取ったのだろう?」
唇を離した アレックスは、シャキシャキと リンゴを噛む。
「アレックスの ばかっ。」
「私は、イスカンダルだ。 間違えるな。」
ブヒヒン。
くちょ。 この主従は・・・ むー、腹が立つ。
「おっ 来たぞ。」
王子の護衛騎士たちが、追いついてきた。
ほら、息きらしてるじゃん。馬。
これじゃ、護衛なんてできないよ。 危ないよね。
「戻るか。」
ちょっと待とう。 もうちょっとだけ ここに居ようね。
「どうした? 余韻に 浸りたいのか?」
この、ばか アレックス。こっちの人たち あなたの 護衛でしょ。
馬の息が 切れている 状態で、仕事 なんてできないよ。
フィリップス殿下は、見るからに お子ちゃま だったけどねー。
アレックスも、周りが 見えてないよね。 この国 大丈夫かしら?
護衛の人たちが いるので、あまり うかつなことは 言えない。
仕方がないので、しばらく 何も言わず、ベルの 首筋をなでる。
もういいかな?
「イスカンダル。 行くよっ。」
今度は、私が 先に駆ける。
後ろの人たちが ついて来られる スピードでね。
「私の スピードで 帰るからね。
ちゃんと 合わせてよ。」
「仕方ない。しかし、遅いな。
エンドーは、疾走するのが 楽しくないのか?」
「今は、これでいいよ。 来るとき、走ったからねー。」
これ以上、護衛の人たちを 振り回しちゃ 駄目よね。
アレックスは、少し、私を見習うべきだと 思う。
自重という 言葉を 覚えるべきだわ。
王子様、ちょっと 自重してくださいねー。
私たちは、学院まで 軽く駆けるように 走った。
うん。 ご満足。 楽しかったねー。
ん? 何? あの集団。 あっこっち見てる。
あぁ、そういえば、入学の式典だった。
私、体調不良? だったような 気がする。
「これって 大丈夫 なのかしら?」
「問題ない。 私が 届けを出している。 アリーは、病欠。
遠乗りに でかけたのは、イスカンダルと、エンドーだ。」
前に 言っただろう。 名前が違えば、どうにでも なる。」
偽名で 押し通すのね。 権力、振りかざしてるわ。
こういうのは、アレックスに 任して おいたほうが よさそう。
「じゃねっ。 楽しかった。 ありがとうね。」
「姫の願いを かなえることが、私の幸せだ。」
んー、王子様、かっこいい じゃない。
ベルと 厩舎に向かう。
優秀ね。 私の侍従武官は、きちんと 待機していた。
ベルを預けて、シンデルラララ城に 戻る。
オリンピュアス様 みたいな 生き物は、見なかったことにする。
そういえば、お伺いする、予定を 確認するって 言ってたよね。
あれ、どうなったのかしら? マーガレットに 聞いてみなきゃ。
部屋に帰ると、目の周りを 真っ赤にした マーガレット。
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あぁ ごめんって、その ジト目で みるのは、やめてー
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侍女頭の名前に迷っていましたが、やっと名無しじゃなくなりました。
侍女・側仕えは、手紙を代筆したり、使用人に指示をだしたりする少し上位の使用人ですね。
この「おそばづかえ」お傍仕えなのか?お側仕えなのか?漢字は、どっちが正しいのでしょうか?と迷いました。
側近っていう言葉もありますし、側でいいのかなぁって、こっちにしております。
蛇足1
英国のマーガレット王女は、ローマの休日のモデルとなった方だそうです。
この方の有名なエピソードが、お側仕えの武官ピーター・タウンゼントの恋。
離婚歴があり16歳年上のタウンゼントとの結婚を目指すも、王位継承権をはく奪されそうになったり、英国国教会と敵対したり。
英国国教会は、国王が離婚経験者と結婚する事を認めない規定があるんですよね。
なかなか珍しい人だと思いましたが、よく考えると、ウェールズ公チャールズ皇太子は、カミラさんと結婚してますね。
そんなに珍しい話じゃないか・・・。
このあと蛇足2がありましたが、その最初は、
キャサリン王妃は、ヘンリー8世の6番目の妻で、その妹の・・・
でした。