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2-14. 【挿話】 ウエンディの独白 10

金のプレートを 返却することなく 帰ってきてしまった。

不安で 仕方がない。


夕食を終え、目の前に座るイアンに、決意を 伝える。


「西に、移住する?」


私の言葉に イアンが 問い返した。


「あれほど 王都に残りたいと 言っていたのに・・・。

 何が あった?」


ピーターの あの子を 見る目は、危険。

空を飛ぶアリーを 見つめるピーターは、餓えた虎の ようだった。


とても、我が子との 再会を 渇望していたように 見えなかった。

私は、大きな間違いを した かもしれない。


私は、金のプレートを 取り出し、今日の出来事を イアンに伝えた。




[美容師の娘]  【 2-14. エリザベト物語 恐怖の館 】




馬車が ゴトゴトと揺れる。 教会の 白い馬車。


イアンと 話し合った次の日の午後、教会からの 使者が訪れた。


「お返しいただくものを お預かりし 忘れていたようです。

 1度、教会に お越しください。」


教会からの 使者など、断れるものではない。

選択の余地もなく、私は、外出の準備を 整えた。


金のプ レートを持つ。

昨日、喜捨を行ったところでは あるのだけれど・・・。

やはり、もう一度 必要だろう。

私は、金貨の詰まった革袋を 用意した。


イアンは、ガッセネ老人のところへ 出かけた。

移住の話を してくれているのだろう。


アリーの頭をなで、よい子で 待つように言う。

連れていくわけには いかない。


今日は、受付は、通らない。

馬車は、道を迂回し、中庭へと まわる。


一般の人どころか、教会関係者とも 顔を合わさないルート。


馬車を降りていつもの部屋に・・・。


案内されない。

知らない通路。 地下へと続く階段。 初めて見る景色。


コツーンコツーンと 響く足音が とても不安。


司祭服の男が、言う。


「大司教様が、お待ちです。」



*** **** *** *** **** ***



ハンサムで 美しい顔。


  研ぎ 澄まされた 魔力。


吊り下げられている 女性の手からは、血が したたる。


ワイングラスが 傾くと、赤い液体が 唇を 濡らす。


後ろから ドンと 押される。

案内してくれた、いつもの 司祭の手だ。


「ウェンディ、そちらに かけてくれ。」


いつもと、話し方が 違う。

いつもの 丁寧な口調では ない 話しぶり。


この部屋は、何?

暗い地下の 石壁の部屋は、薄暗く、床には、灰が まかれていた。


真ん中に ポツンとテーブルが 置かれ、対面に、ピーターが 座る。

ピーターの 視線は、私から、壁際に 吊り下げられた 若い女性に 向かった。


手首・・・袖が 赤い。

ポタリと 落ちる液体を 受ける ガラスの容器。


「美しいでしょう。」


ピーターは、ワイングラスを その 唇から 離し 微笑んだ。


「これは、まるで、エリザベト物語では ありませんか。」


ようやく 言葉を発することが 出来たのだけど、足がすくんで 動かない。


「いや、そうではない。

 あれとは、違う。いや、違わぬか。」


不気味に 笑うピーター。

私の後ろには、若い司祭・・・。


「あの物語は、若さを求める 女性の 話だな。

 あながち 間違いでも ないのだが・・・。」


空になった ワイングラスが、テーブルに 置かれた。


「もう一度言う。 椅子に 掛けたまえ。」


私が、いつまでも 座ることが出来ずに 立ちすくんでいると、後ろの男が 私を 強引に 椅子に 座らせた。


「それでよい。要するに 魔力なのだよ。

 魔力を 含む血は、体に馴染むと 自分の魔力として、

 取り込むことが 出来る。この女は・・・」


ピーターが指さす先には、一人の女性。

天井から吊り下げられ、手の先から ポタポタと 血がしたたる。


「この女は・・・ 非常に繊細な 魔力を持つ。

 このような 繊細な魔力を 持つものは、体に 馴染みやすい。

 ウェンディ、意味は 分かるかな?

 魔力が 充実していると、若さも 保つことが出来るのだが。

 理解できるかな?」


繊細な 魔力・・・。

イアンの魔力のように 力強い魔力 ではない もの(魔力)

私の魔力。


ここに 居てはならない。

立ち上がろうとすると、後ろから 肩を 押さえられた。


「そういうことだ。

 というよりも、そういうこと で あった。」


「え?」


思わず 声が 漏れた。


「ウェンディ。その繊細な 魔力よりも 素晴らしいものがある。

 君の娘だよ。 あれは、素晴らしい。」


アリー。 やはり会わせたのは、間違いだった。


「もう少し、お話をしよう。

 王国神書を 覚えているかな?

 あれは、対の本と 呼ばれる 神書のひとつだ。」


預かっていた 白く光った神書?


「正確には『終わりの書』と言う。

 神の子を呼び出す 書物と言われている。

 これが・・・困ったことに、同じものが 数冊あってね。

 仕方がないので、全てを 預けてみたのだよ。

 そして、これに 署名してもらった。」


一枚の紙・・・。免罪符(めんざいふ)と同じもの。


「これは、神書から1枚、紙を破り取ったものだ。

 神書を全て私の目にかなった 女性に 預けてみたのだよ。

 繊細な魔力を持つ あなたのような 女性に。

 それで、何度も 子を成し、産んでもらったのだが・・・。

 誰も できなかった。

 子を産んだ後に、この紙を 光らせることが・・・。」


私が 署名を 行った日。

あの時、免罪符(めんざいふ)は、白い光を 放った。


「ありがとう。ウェンディ。 あなたは、素晴らしい。

 あなたに 預けた本こそ、本物だ。

 昨日、空を舞う あの子をみて 確信した。

 あなたの 子供こそ、この世に 招かれた 神の子だよ。」


私の肩を、押さえる 司祭の力が 強くなる。


「最近は、効き目が なかなか 良くない。

 私は、魔力も 若さも 維持する 必要が あるのでね。

 血の繋がりが あると、魔力も よくなじむ。」


「そ・・そんなことは、させな・・・。」


後ろの司祭の手が 首にかかり、私は、喉に苦しさを 覚えた。


「安心しなさい。

 少しだけ 先になりますが、あなたも 一緒に送ってあげます。

 親子で一緒に 天界を楽しむことが出来ますよ。

 繊細な魔力は、とても よく体に 馴染むのです。」


ピーターの口調が、いつものものに 戻る。


ド・・・ガンッ


後ろの 司祭の手を 振りほどき、椅子から 立ち上がる。

その瞬間、頭に重い衝撃を 受けた。


「新しい グラスを。」


薄れゆく 意識の中で、私は、ピーターの声を この上なく恐しく感じた。


「受ける容器も、新しいものに」


カラリカラリと、滑車を 回す音が聞こえ、自分の 体が上へと 引っ張られるのを 感じる。


=== ===== === ===== ===



アリー。アリー。アリー。

イアン、どうか アリーを守って。



=== ===== === ===== ===

Google Chromeより早いウェブブラウザを見つけた人は、

高評価を押して次の話へ⇒


点を打つ場所や、丸を書く場所で、意味がいろいろ変わります。

検索エンジンで、「検索」を検索すると、

Google Chromeより早いという言葉が、目に留まりました。


思わずクリックしそうになりましたが、

「Google Chrome」~より早いウェブブラウザ~

という意味でした。


これって、詐欺サイトとかで使えそうなワードだなぁって思いました。

けっこう引っかかっちゃいそうです。

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