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2-08. 【挿話】 ウエンディの独白 3

「父が、亡くなった。

 西に 一度、戻らなければ ならない みたいだ。

 一緒に 来て くれないか?」


そう言った イアンは、私の目を 見た。


訃報を 伝えた 使者は、ドアの 向こう。


イアンにも、父親がいるのは、当然だ。


ただ、その存在を 意識したことが なかった。


私は、彼の 両親を 知らない。


初めての 両親の話題が、まさか、訃報だなんて。




    [美容師の娘]  【 2-08. ホームカンシ教 】




カネッセ という 老人が、訪ねてきたのは、その日の 午後だった。


午前中に 降っていた 雨はやみ、空に きれいな 虹が かかっていた。


美容院の前に飾った、野ばらに 水をやると、空と 同じ 七色の虹。


思わず、にっこり してしまった。


「失礼いたします。

 イアン様は、いらっしゃいます でしょうか?」


振り返ると、立派な馬から 下馬した、老人が、こちらを 見つめていた。


「お初に お目にかかります、ウェンディ様。

 わたくし、ヘドファン伯爵家の使いで、カネッセと 申します。

 イアン様に、お会いすることは、できますか?」


イアンに 来客が 来ることは、めずらしい。

中に 入っていただき、イアンを呼ぶ。


「私が、ここに 居ることを 把握していたか?」


あまり 見たことのない、不機嫌そうな イアンの顔。


「イアン様が、出奔さ(しゅっぽん )れ、

 すぐに、前伯爵さまより、ご指示を受けました。

 なにか、大きなトラブルが無ければ、

 手を出さぬように言われておりました。」


「前伯爵・・・。 そうか。

 お父上は、亡くなったのだな? いつ?」


「先々週で ございます。

 ムサマ様が、当主として お立ち あそばされました。」


どうやら、イアンの 父親が 亡くなったらしい。

お兄さまの ムサマさんって人が、後を 継いだのね。


「一度、西に お戻りください。

 継承 していただく、領地も ございます。」


「伯爵家に、戻るつもりは 無い。

 領地も、兄にまかせる。」


「それは、できません。

 すでに、王家に 承認をいただくための 届けを 出しております。

 必要であれば、わたくしが、その地の 管理は、致します。

 どうか、自領に お戻りください。

 その後、王都で 暮らされるのは、問題ございませんので。」


老人を、部屋に残し、私とイアンは、奥の部屋へと 移動した。


「西に 戻らなければ ならないみたいだ。

 3カ月程度の 旅行に なると思う。

 一緒に来てくれないか?」


ヘドファン伯爵領は、西の辺境。

王都から、離れたことがない 私にとって、未知の 世界だ。


美容院を休む? 3ヶ月?

ちょっと 長いかな?

それは、あまり やりたくない。


「大丈夫よ。 イアン。

 いつ頃に なるのかしら?」


それでも、イアンが 一緒に 来てほしいというなら、ついて行こう。


「おそらく、用意が 出来次第、すぐに 出ることになる。

 伯爵家の 馬車を 用意して もらえると思う。」


え?

そんな話 していなかった。

なんで わかるのかしら?


「あぁ。 おそらく、父は、突然死している。

 西から、ここまで、馬を 飛ばしても 1週間で来るのは、難しい。

 王家に 承認の届けを 出したのも、今日、昨日と いった ところだろう。

 このタイミングで、私を 呼び戻すということは、王家からの 査察を、

 受け入れる前に、急いで 形を 整える 必要が あるのだと思う。」


承認のために、査察を受けるって、貴族の社会も、大変なのね。

旅行の間、アリーは、どうしよう?

連れて 行っても 大丈夫かしら?


老人の居る部屋に 戻ろうと ドアを開けた イアンの 背を 見ながら、

私は、西への 旅行のことを いろいろと 考えていた。



*** **** *** *** **** ***



出発は、2週間後。


旅行の 準備自体は、それほど 困らない。


でも、お休みするから、そっちが 大変。

美容院の 常連のみなさんに、お知らせ しなきゃ。


入っていた 予約も1件、取り消しを させていただいた。




その日、豪華な 馬車が 美容院に 止まった。


真っ白い 2頭の馬。

こんな キレイな馬は、見たことがない。


馬車は、白銀色に キラキラと輝き、側面には、芸術的な 彫り物。

(ぜい)を 尽くした というのは、このことを 言うのだろう。


でも、出発の 予定日までは、まだ 1週間ある。

なぜ、今日、迎えが くるのかな?


少し不安になった、私の目に 見えたのは、馬車の ドアの紋章。


ホームカンシ教・・・。

ピーターの 教団だ。


「こちらで、子供が 働いているという情報が あります。

 一度、教会に、ご同行 いただきたい。」


そう告げたのは、教団の司祭服に 身を包んだ 若い男性。

別に、武器を 持っているわけでもないのに、威圧感が ある。


そう。私は、油断していた。


ホームカンシ教 ・・・それは、人や家庭を 道徳的に チェックする 教団。


『子供には 教育を 受ける権利や 経済的搾取(さくしゅ)を含む

 あらゆる 搾取や(さくしゅ)暴力・虐待か(ぎゃくたい)

 保護される 権利がある』


12歳未満の 子供に 働かせると

聖職者が(せいしょくしゃ) 取締まりに 来る。


アリーに、美容ケアを(まか)せているのは、問題が あったかもしれない。


イアンに、教会からの 召喚があったことを 告げ、馬車に乗る。


「申し訳ない。

 1人だけで、来ていただくことに なります。」


私に、続いて、馬車に 乗りこもうとした、イアンが 止められる。


「本日は、事情を お伺いするだけです。

 今日中に、お戻り いただけます。

 どうぞ、ご安心ください。」


丁寧な、優しそうな声。

しかし、有無を 言わさぬ態度で、イアンを 制する 司祭服の男。


あっ、ダメ。

イアンが、手に 魔力を集めている。


「イアン、大丈夫よ。一人でも。」


内心は、不安な 気持ちで、いっぱい。


でも、それを 見せてしまうと、

相手が、ホームカンシ教であろうが、王家だろうが、

イアンは、気にしないだろう。


ゴトゴトと 動き始める 馬車の窓から、見送るイアンに 軽く手を振る。


あっ、アリーにも 声をかけておくべきだったかな?

お出かけに 連れて行って もらえなくて、()ねないか、ちょっと 心配。


イアンが、ちゃんと、なだめて くれれば いいんだけど。



*** **** *** *** **** ***


教団の 薬草園が、王都のはずれに あるのに 対して、

教会は、中心部にある。


王都ホームカンシ教の 教会は、多くの人で あふれていた。


何年ぶりだろう? この場所に 来るのは。

あの診療所も、まだ やっている みたいね。


受付を しなければ 普通は、通ることが出来ない 入口も、

馬車は 迂回し、豪華で 大きな門をくぐる。


奥へ、奥へ。

この道は、見たことが ある。


気づいてしまった。

あぁ、私を 呼び出したのは、きっと あの人。



=== ===== ===



馬車を 降りた 私は、再会を 覚悟した。



=== ===== ===

最近、くしゃみが止まらなくなった人は、高評価を押して次の話へ⇒



花粉が、飛び始めていますね。

薬を 飲んでいないと、

くしゃみと 鼻水が、忘れたころに 突然 襲ってきます。


別に、苦しくは 無いのですが、周りの冷たい目が 気になります。


今年は、仕方ないですけれど、

来年は、もう少し温かい目で見てもらえる世界になっているといいですね。

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