2-06. ガネッセの返信
「アリー様に 求められる こと、誓約書の 中身は、
1年間、王立 飛翔師 学院に 通って いただく こと。
それだけで ございます。
学院には、同じ年齢の 第2王子、フィリップス殿下が、通われます。
ヘドファン伯爵家としては、もちろん、殿下と 仲良くなって いただき、
婚約者候補と なっていただくこと を 考えて おります。
金の教会プレートを 所持する アリー様が、王族と つながることを、
王家は、望んでいます。
ヘドファン伯爵家も、王家との つながりを 望みます。
しかし、これも、アリー様の 自由です。」
そだね。
フィリップス殿下かぁ。
ごめんねー。
私、アレックスの 婚約者に なっちゃった みたいだよ。
[美容師の娘] 【 2-06. お引越しの事情 】
ガネッセの 返信。
乗りに 行く前に 読んで おいた方が良い、大切な 情報が いっぱい。
というよりは、学院に 来る前に 知っておいた方が いい話 ばっかりだよ。
同じ年齢の、第2王子、フィリップス殿下・・・。
知ってる。
朝、泣きながら、覗いていたね。
1つ年上の、第1王子、アレクサンドロス殿下・・・。
知ってる。
すごーく、わがまま。
1つ年上の、王都筆頭 貴族の子女、オリンピュアス様・・・。
知ってる。
さっき、下から にらまれた。
「オリンピュアス様は、王都 筆頭 貴族エペイロ家の ご令嬢です。
王都貴族は、領地が ございませんので、
ヘドファン伯爵家より、格下と なって おりますが、
都での 政治力が、ございます。
どうぞ、ご縁を 大切に なさってください。
また、女子寮の 第1フロアは、前年まで、オリンピュアス様が
使っておられました。
フロアを、お譲り 頂いて おりますので、
対面 されるとき には、御礼を 申し上げて おくことも 必要でしょう。」
ちょちょちょ・・・。
わざわざ、移動 しなくて いいでしょ。
私が、下で よかった じゃない。
「それは、できません。」
あら、後ろに 居たのね。
仕事 熱心ね。
お付きの 侍女さん、ずっと 後ろに 控えていた。
「東と 西の 伯爵家が、ともに1位。
次が、王都筆頭 エペイロ伯爵家。と、序列が、決まっております。
そして、その下も、細かい 序列が ございます。
その 1つに 誤りが 起こると、全ての 秩序が 崩れます。
ましてや、トップで、それが 起こることは ありえません。」
オリンピュアス様が、部屋を 移動するのは、特別な こと じゃないのね。
「はい。今回の場合、アリー様が ご入学と いうことで、
すべての 方が、下に 部屋を ずらしております。
また、昨年は、オリンピュアス様の ご入学ということで、
すべての 方が、下に部屋を ずらしていると 聞いております。」
うわぁ。 面倒だわ。
でも、東と西の伯爵家が、ともに1位。って、問題が 起こらない?
「その場合は、年齢、あるいは、役職や 他の爵位などで 決まります。」
じゃぁ 王女さま とかが 来たら、どうなるの?
「通常の場合は、フロアを、お譲りする ことと なります。」
通常 じゃない 場合が あるの?
「はい。 アリー様です。」
え? なんで 私?
「アリー様は、第1王子の 婚約者と なられました。
正式発表が ありましたら、
アリー様の地位は、王女さま よりも、上と なります。」
うわぁ。
それ、ちょっと ヤダな。
婚約 してなかったら、どうなの?
「アリー様が、上位と なります。」
え? ちょっとおかしくない?
その順位規則?
「金の教会プレートを 所持する 西の伯爵家の令嬢と、
王女さまの場合、前例が ございません。
しかし、このたび、アリー様を、上位と するよう
王家より 指示が ございました。」
金プレート・・・。
教会にしか 効力が ないんじゃ なかった のね。
「王家に 対する 効力は、ございません。
ただ、所持していることに 王家が 遠慮をした という所 でしょうか。
特例で ございます。」
そうなのね。
ちょっと 難しすぎる。
その 時々で 教えてもらうことに しようっと。
で、問題は、オリンピュアス様よね。
挨拶しに 行った方が いいの?
「通常は、こちらに お越し いただきます。
しかし、ご年齢が、オリンピュアス様が 上でございますし、
フロアを、お譲り 頂いて おります。
こちらから お伺い できるよう、ご予定を 確認してみます。」
おっけー。
じゃ、お願いねー。
オリンピュアス様、にらんで た からねぇ。
下の階から。
なるように なるしか ないんだ けれど、不安ね。
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ガネッセの 手紙で、
1年間、飛翔師 学院に 通うだけでいい って 分かった けれど、
王子の 婚約者って、美容師 学院に 通っても いいのかしら?
どうせ 10歳と11歳の婚約なんて、おままごと みたいな ものだから、
破棄は できるだろうけれど、ちょっと 心配ね。
どうせ1年は、転校できないんだから、きちんと 考えておこう。
もう1個だけ、ちぎって 持って 帰って 来た リンゴ。
ポケットから、そっと 取り出す。
アレックスねぇ・・・。
ハンサムで、才能にあふれ、ワガママ。
そして、王子さま。
世間的に 見たら、いい物件 なんでしょうね。
条件面で、文句を言ったら、怒られそう。
だけど、動く歩道の上に 乗ってしまった ようで、居心地が 良くない。
行き先が 決まり、ゆっくりと、人生の 先に 連れて いかれるような気分?
乗るつもりの なかった、道に 間違って 乗った気分?
イアンと、ウェンディって、どうやって 出会ったんだろう?
2人は、どんな 恋愛を したんだろう?
もう どうやっても、聞くことは できないけれど、
ウェンディから、聞き逃していたことが、いっぱいあることに 気づいた。
こういう時、イアンは、役に立たないよね。きっと。
あぁ。でも、どうだろう?
もしかしたら、すごく 経験豊富で、アドバイス なんか してくれるかも しれない。
イアンも、王都に 来ないかなぁ。
ガネッセは、いらないね。
来なくていい。
1度、イアンに 昔の話を 聞いてみるのも いいかもしれない。
ウェンディのとの 出会いも、聞いてみたい。
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静かになった部屋で、リンゴが、コロコロと、床に転がる。
そして、くぅくぅという 寝息が、響き始めた。
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耳無し芳一は、耳にお経を書き忘れたので、耳をちぎられた。
知っていた人は、高評価を押して次の話へ⇒
耳にお経が書いていなかったので、耳だけが見えてしまった。
知ってる。
有名。聞いたことがある。
勇者アキレウスの弱点は、アキレス腱であった。
知ってる。
有名。聞いたことがある。
女神テティスは、モテモテ。
大神ゼウスと、海神ポセイドンが、彼女を求めて争ったくらいに。
そんな彼女が、人間ペレウスの元に嫁ぐことに。
2人の間に出来たかわいい子供。
それが、勇者アキレウス。
冥府の川は、浸かる赤子を不死身にする。
女神テティスは、我が子を不死身にしようと、
アキレウスを、川の霊水に浸けた。
しかし、ついうっかりの大失敗。
テティスは、赤子のくるぶしを持って霊水に浸けこんでしまった。
握りこまれていた、くるぶしが、川の水にさらされることは無く、
この部分、アキレス腱が、アキレウスの弱点となってしまった。
書き忘れと、浸け忘れ。
同じパターンの話だったんですね。
このふたつ。
さて、くるぶしを持って、川に赤子を浸け込むのを、想像してください。
逆さですよね。子供の体。
頭を下にして、冥府の川に子供を浸けこむ。
私がその話を書いていたら、
そのまま、子供を冥府を司る神ハーデスの元に送り込みます。
死ぬって・・・。普通。