1-35. すだち 2
すだち うどんが、おいしい。
手打ち麺 の こし が、違う。
香る、すだちの 爽やかさが、違う。
イアンは、泣きそうに なっている。
生姜と すだちが、ちょっと 効き 過ぎかな。
私も ちょっと 泣きそう かも。
[美容師の娘] 【 1-35. 巣立ちの日 】
10歳に なった 私は、王立美容師学院に 進学する。
王都で 一人暮らし を 始めるのだ。
旅立ちの日、出発前の 寂しさ。
イアンと 別れて 暮らすのも 初めて。
でも、出発。
侍女が、館の ドアを あけて くれる。
え?
何、この馬車。
どこの かぼちゃに 魔法を かけたんだろう・・・。
とんでもなく 豪華な 馬車。
ちょっと 待って。
私、ベルで 駆けて いく つもり なんだけど。
「アリー様は、ヘドファン 伯爵家の
ご令嬢 として 学院に 参ることに なります。」
ガネッセが、ニコニコ 笑っている。
おーい。
どこの 世界の、伯爵家の 令嬢が 美容師学院に 馬車で 通うんだよ。
頭が、おかしくなりそう。
ベルは?
「サイレント ベル ディアン号は、すでに 王都に 向かって おります。」
えー。私、ベルに 乗っていくって 言ったのに。
うぅ。仕方が ない。
美容師学院に 向かうのに、3台も 馬車を 連ねて 行くって・・・。
ほんと、今回だけに してよ。
いくら お金が あっても、これは ヤダよ。
私は、お金持ち。
だって、石鹸の お金が 毎月 入ってくる んだもの。
え? 今回の お金は、伯爵家から 出てる?
なんで?
なーんか、やな 感じ。
豪華な 伯爵家の 馬車に、ピョンと 飛び乗る。
イアンー。 行って 来るよー。
窓を 開けて、イアンに 手を振る。
「嫌に なったら、スグ 帰って くれば いいんだよ。」
イアンは、泣きそうな 顔を している。
普通、心配させないように 笑顔で 送り 出す もんでしょ。
心配だな。
残ったほうが いいかな。って 思っちゃう。
あっ。
ガネッセが、パタリと ドアを 閉めた。
空気を 読もう。 ガネッセ。
あーん。
出発 進行 ・・・。
先行き 不安な 旅立ちだわ。
侍女に 渡された、すだちジュースを 飲みながら 馬車の 中を 見渡す。
ベッドも あるし、机も ある。
小さな 書斎だねー。
あれ?
机に 封筒だ。
お手紙?
馬車で 走りながら 読むと 酔うから イヤ なんだけどねぇ。
封を 切る。
はいはい。
ガネッセね。
どうせ、王都に ついてからの 注意事項 でしょ。
うん。
注意事項も 書いて あった。
「伯爵家の 令嬢として マナーを 守ること。」
「王家への 礼を 忘れぬこと。」
「神への 祈りを 忘れぬこと。」
どーでも いいよね。
でも、知らなかった 大切な ことも 書かれていた。
金色をした 金属の プレート。
教会の 入館証。
ウェンディが 最後まで 持っていた アレだ。
「ヘドファン伯爵家は、王家以外で あれば、多少の 無礼も 許されます。
しかし、教会は 別です。
王家とは 違う権力 であると 心得てください。
極力、教会関係者と、トラブルを 起こさぬよう お気を付けください。」
ほうほう。
イアンは、教会の 司祭の 右腕から 先を 吹き飛ばして なかったっけ?
トラブルとか、多少の 無礼どころでは ない 気が するけどね。
「以前 お渡しした、ウェンディ様の 教会のプレートには、
それを 持つ者の 罪を 許す 意味が あります。」
おぉっと。
免罪符と 交換してたけど、そんな スゴいもの だったのね。
「免罪符が、その書類に 書かれた 範囲での 許しであるのに 対して、
金の 教会 プレートは、所持する者の 罪を 全て 許します。
イアン様の 罪も、簡単に 許されました。」
そんな すごい プレート だった のね。
えーと・・・。
どこに 入れたかしら?
カバンの どこかに 放り込んだ 気が するんだけど・・・。
「プレートは、どんなことが あっても、人に 渡しては いけません。
教会関係者で あっても です。
所持している者の、罪を 許すもの です。
相手に 渡してしまえば、所持していない と 判定されます。」
わぁ・・・。
「確認のために プレートを 見せて。」
なーんて 言われて 渡しちゃったら、ダメなんだ。
「プレートは、通常の 罪には 適用 されません。」
は? 意味が 分からないよ。
「プレートが、許すのは、王国の教会や 教会関係者に 対する 罪です。
くれぐれも、お気を 付けください。」
うーん。
揺らさないで。酔っちゃうよ。
要するに、
ヘドファン伯爵家は、ほかの 貴族に 対して 優位。
ただし、教会と、王家に 対しては、その 神通力は 効かない。
金色の プレートは、教会に 対して 効果がある。
ただし、ほかの貴族や 王家に対しては、その 神通力は 効かない。
ってことだね。
ということは、今、やるべきことは・・・。
金色の プレートを 探すこと ね。
どこに入れた? 私・・・。
もぉ。
そんな 大切なものなら ちゃんと 言っておいてよ。
あぁ。あった。
そう、ウェンディ関係の ものは、全部 まとめて 入れた のよね。
プレートの 入っていた、小さな 手さげの袋 も、ウェンディの もの。
手さげの 袋に 金色のプレートを 入れ直す。
すぅっと 魔力を 込める。
袋が、きゅっと 縮む。
どう? 魔力鍵。
袋に 紐を つけて、魔力を 込める。
私の 魔力と 同調した波 で なければ、開かない 袋。
私の 魔力より、強い魔力 で なければ、切れない 紐。
これを、首から ぶら下げる。
うーん。 完璧。
後は、こうやって 服の下に 入れてしまえば、なくす ことは ない。
魔力鍵は、銀行とかで 使われている らしい ん だけど、
とーっても 繊細な 魔法 みたいで、使える人は、少ない。
石鹸の お金を 預ける時に、そんな話を 聞いたの。
真似してみたら、簡単に できちゃったので、日記を 入れる箱に 今まで 使っていた。
そうね、大切なもの には、ドンドン 使っていって いいかも。
私、魔力が 多いから 魔力切れに なることも、まず ないでしょ。
あぁ ダメ。
馬車で、お手紙 読んでたから 気持ち 悪くなっちゃった。
ベッドに ピョン。
やっぱり、ベルが、良かったよー。
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馬車は、行ってしまった。
すだち酒を 一気に あおる。
きゅっと 胃にしみわたる。
とうとう アリーが 行ってしまった。
賢い子 では ある。
ただ、トラブルを 呼び込む子 でも ある。
今回 だって そうだ。
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美容師に なりたいと 言っていたが、
まさか、あんな 進路を 選ぶ とは・・・。
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「金色のプレートの 存在を 今まで 忘れていたでしょ」
って思った人は、高評価を押して次の話へ⇒
詳しい 事情は、良く 知りませんが、
森さんって人が、辞任して、
川淵さんって人が、会長に なるとか ならないとか・・・。
アリーの世界でも、コジョーン・キ・ノマートって人が、
「男が、たくさん入っている 理事会は、時間が かかる。」
って言っています。
うん。1-32話 ですね。
実は、王都ホゥスボール協会の 理事の 名前。
コジョーン・キ・ノマート
サビュローン・カ・ワブーチ
どっちに するか 迷ったんです。
ワブーチ氏に しなくて 良かった。
今回の ニュースを 見て、そう 思いました。
ニアミス 過ぎ です。