1-32. 馬上の戦い ⑥
非接触式 残滓 魔力 計測器。
それは、魔法を 使用したか どうかを 探知する 器具。
魔法を 使った人の、おでこに 当てると、魔力の 残りカスが 捉えられる。
完璧なもの では なくて、
魔法を かけられた人で あっても 反応して しまう。
けれども、とにかく、魔法を 使ったことは、バレて しまうのだ。
そして、ミラドール。
どうやら、前科が あるらしい。
神の 息吹 ショットの・・・。
ミラドールの ゴールに、東ハルサの 選手から クレームが ついたのだ。
ボールが、宙で 変な 跳ね方を した・・・と。
そ、そうだね。
ちょっと、というか、かなり おかしかったね。
うん。
計測器が、ミラドールの おでこに 近づく。
非接触式の 体温計 みたいな 形だね。
ピッ 無反応。
魔法の 痕跡が 見つかれば、地震計のような 針が、左右に 振れる。
けれども、針が 左右に 振れることは、無い。
魔法の 使用は、認められない。
当然 だね。使って いない もの。
私の所 には、検査の 人、来ない でね。
反応 しちゃうから。
[美容師の娘] 【 1-32. TIRO DI RIGORE 】
検査 されたのは、ミラドールだけ だった。
ドキドキ した。
巻き 込まないで ほしい。
あら?
いつの間にか、観客席の、魔光掲示板に 文字が いっぱい 流れている。
Tiro di rigore
Büntető lövés
Lovitură de pedeapsă
Enajstmetrovka
Elfmeter
JEDANAESTERAC
Једанаестерац
Gjuajtje dënimi
Удар од пенал
Penalty Shot
東ハルサ 地域は、 8つの 地域の 民族 連合。
使う言語も、たくさんあるみたい。
どれも ペナルティーショット戦って 書いてある みたいね。
全く 読めない けど。
同点の まま、試合終了 したから、
この後は、馬から 降りての ペナルティーショット戦 で 決着がつく。
私、やってみたい。
ミラドールは、決定よね。
誰が 出ることに なるのかな。
*** **** *** *** **** ***
ペナルティー ショット戦
各チーム 代表5人を 選出し、ゴール数を 競う。
ゴールから 距離を 12ヤード とった 位置より、
ゴールキーパー以外に 妨害される ことなく、得点を 狙うことが できる。
ホゥスボールの 中で、唯一、馬から 降りて 行う ショット戦 である。
*** **** *** *** **** ***
1人目。
西部代表の シューターは、守備の 名手 セリアロエさん。
東ハルサの ゴールキーパーは、イブコブさん。
セリアロエさんは、右へショット。
イブコブさん、コースを 読めなかった。
ボールは、ネットを 揺さぶって 西部代表 1-0.
東ハルサの1人目。
この日、最も輝いていた ピクシノビッチさん。
棍の 左側で ショット。
ボールは 高く 上がりすぎちゃった。
左上の バーに バーンって 直撃。
ピクシノビッチさん、頭を 抱え ちゃった。
ゴイコイスさん 喜んでる。
1 2 3 4 5
西部代表 〇
東ハルサ ×
2人目。
西部代表の プールチカさんは、棍の 側面を 使って、左上へ ショット。
イブコブさんは、右。
反対に 飛んだ。
西部代表 2-0。
東ハルサの シューターは、プロキシーチさん。
この 長身の プレーヤーは、左下へ 確実に、鋭く 打ち込む。
これで、2-1。
1 2 3 4 5
西部代表 〇 〇
東ハルサ × 〇
3人目、西部代表は、ミラドール。
あら?イブコブさんと 話を している。
「ペナルティショット戦ね。
PSが 決まったら、私が、唐辛子入りの カレーを 食べる。
私が 止めたら、あなたは、納豆を 食べるの だった わね。」
ミラドールの 顔色が、変わる。
あぁ、1回、間を 取って。
時間を おいてからー。
ミラドール・・・。
そのまま 棍を 振り 下ろす。
名手が、真ん中に 弱々しい シュート。
イブコブさんが、ボールを 掴み ニヤリと 笑う。
ミラドール。 手が 震えている。
うちの ゴイコイスさん。
PSを 外した ミラドールの、手を 握り、目を 見つめ うなずく。
これは、ゴイコイスさん、意地でも 止めて くれる はず。
東ハルサ 3人目、サビーチェさん。
あっさり 成功。
えー。 今の 止める 流れ でしょ。
これで、2-2。
1 2 3 4 5
西部代表 〇 〇 ×
東ハルサ × 〇 〇
西部代表の 4人目は、トログリフクオカさん。
右サイドを 狙った ボールは、ポストに 当たって 跳ね返る。
あぁん。ミラドールから 失敗の 連鎖だわ。
東ハルサの 4人目に パーンチフさんが、立ちあがって 歩きだした。
あれ? 審判が、近づいてきてる。
どうやら 届け 出た 人と、違って いた らしい。
東ハルサの 4人目は、スパシイチさんが、打つ のね。
スパシイチさん、心の 準備が 出来て いなかった みたい。
弱々しい ショットを、ゴイコイスさんが、跳ね 返した。
まだ、2-2。 同点。
1 2 3 4 5
西部代表 〇 〇 × ×
東ハルサ × 〇 〇 ×
そして 5人目は、もちろん 私。
ながーい 助走を とって、すごい スピードで 走りこんでみた。
シュート!
あっ。 失敗。
勢いを つけすぎて 棍の 左側が 当たっちゃった。
ボールは、左下へ。
イブコブさんも、左。
でも、いっぱいに 手を 伸ばしても 届かなかった。
目いっぱいで 走りこんだから、スピードだけは あったのよね。
なんとか 決めることが できたよー。
東ハルサ 5人目は、さっき、順番 間違いを した パーンチフさん。
右上隅へ 見事に コントロール。
ダメッ。 うますぎる。
ゴイコイスさん!
読んでいた。
見事に、セービング。
止めたぁ。
1 2 3 4 5
西部代表 〇 〇 × × 〇
東ハルサ × 〇 〇 × ×
東ハルサ地域連合 2-2 西部ホースボール協会代表
PS戦
負 2-3 勝
3-2っ。 私たちの 勝ちだ。
控えの プレーヤーも、ベンチから 飛び出してきた。
コーチも、監督も。
観客席からは、「ミラドール、ミラドール、ミラドール」の声。
お祭り 騒ぎだ。
あれ? ミラドールは、外したのに。
最後に PSを 決めたのは、私 だよー。
*** **** *** *** **** ***
皆に、もみくちゃに される ミラドール。
そんな 彼女が こちらに 近づいてきた。
「アリー、魔法は、まだ 使える?」
えー。
次は、何を 企んで いるの?
「ううん。
試合が 終わった でしょ?
キレイな 格好で 取材を 受けたいと 思うの。
みんなに、あなたの 美容ケアの 魔法を かけて あげて。
もちろん 東ハルサの選手 にもね。」
んー。意外すぎる 提案。
「東ハルサの 選手 にも」って、素敵。
ミラドールぅぅ。
天使的 発想。考えが、かっこ 良すぎるよ。
こういう、繊細な 優しさが、彼女の 人気の 秘密 なのかも。
神の子って 呼ばれる わけだわ。
*** **** *** *** **** ***
それではっ。 おまかせ下さいっ。
ピクシノビッチ さん の 周りに、甘い しゃぼん 玉が 舞う。
飴色の バラが ふわりと 香る。
どう?
これが ウェンディ式 魔法の 美容ケアよ。
「あぁ コレ 気持ち いいわ」
ピクシノビッチ さんも、イブコブ さんも。
ミラドール も、ゴイコイス さんも。
みーんな、ご満足。
あら?
木陰から 人影が・・・。
東ハルサの ホージ・チャイ・シム監督。
なんでだろう?
ピクシノビッチさんに よると、
シム監督は、馬から 降りて行う ペナルティーショット戦を
見ているのが、耐えられないそうだ。
「PSは、ホゥスボールではない。」って、いつも 言っている らしい。
それで、木陰に 居たのね。
こちらに、近づいて くる。
な・・なに?
神の 息吹 ショットが、バレた の かしら。
ミラドールぅぅ。
あなた、神の子で、天使 なんでしょ。
こっちに 来て、助けてよ。
あっ、ずるーい。目を そらした。
ドキドキ・・。
えーと?
び・・・ 美容ケア ですか。
出来ますよー。
シム監督 にも、バラの 美容ケアを 施す。
東ハルサも、西部代表も 関係ない。
みんなが、ニコニコ 笑っている。
言葉 なんて いらない。
これが、ホゥスボールの 力。
これこそが、心の 絆だよ。
友好を 保つための、対抗戦。
最初は、「どこが友好よっ」と思っていたけれど、
仲良くするための ヒントは、どこにでも ある。
ケンカの 種を 作るのも、簡単。
仲良くするために 行動することも、自ら 意識さえすれば、簡単。
私は、ミラドールから、大切なことを 学んだのかも しれない。
やっぱり、ミラドールは、神の子で、みんなの 天使ね。
*** **** *** *** **** ***
「検査だ。検査っ。全員、測定しろっ。」
ホント、ケンカの 種を 作るのは、簡単。
声の主は、東ハルサ地域使節団の
なんか偉そうな人、ボダン・ミ・シェロさん だった。
ペナルティーショット戦で あっても、
彼に とって、負けは、許されない みたい。
選手 全員。
これは、東ハルサの 選手も。西部代表の 選手も。
検査用の テントに、押し 込め られて しまった。
みんな、せっかく キレイに なったのに・・・。
友好ムードが 台無し。
キレイに セットされた 髪のまま、東ハルサの 選手から 検査を 受ける。
どうしよう。
私、検査で 引っかかっちゃう。
ピクシノビッチ さん。
ピッ。
地震計の ような針が、左右に 大きく 振れる。
え? 検査に ひっかかった。
イブコブ さん。
ピッ。
針が、左右に 大きく 振れる。
検査に、ひっかかってる。
プロキシーチ さん。
ピッ。
おかしい。
東ハルサの 選手が、全員 検査に 引っかかって いる。
ピッ。
えー。 シム監督 まで?!
不安に なって、ミラドールを 見た。
ニヤリ。
わるーい 笑みを 浮かべる ミラドール。
「そういえば、さっき 全員が、魔法で 美容ケアを 受けているわ。
魔法の 痕跡が 見つかって 当然じゃ ないの?
これって、検査 しても、無駄 じゃない?」
非接触式 残滓 魔力 計測器。
それは、魔法を 使った 痕跡を 見つける 探知器具。
けれども、魔法を かけられた人 で あっても、反応 してしまう。
ミラドールぅぅ。
悪魔的 発想。犯行が、計画的 すぎるよ。
何が、神の子よ。
悪魔の子 だと しか 思えないわ。
この 騒動。
もう 一人の、東ハルサ地域使節団代表、
シプ・ヨ・テトさんに よって、なんとか 収められた。
テトさんの 言うことなら、東ハルサの 人たちは、納得 するのね。
んー。試合より 疲れちゃった。
私、捕まっちゃうかと 思ったよ。
こうして、対抗戦は、「西部ホゥスボール協会代表」の 勝利で 終了。
ミラドール と 私、大活躍 だったよね。
うん。 そうだ。
私、ホゥスボール選手に なるのも、いいかも しれない。
迷っちゃうね。
*** **** *** *** **** ***
私の名前は、コジョーン・キ・ノマート。
王都ホゥスボール協会の 理事だ。
「ノマートさん、ミラドールが います。 アリーが居ます。
どうぞ、王国代表に 招集してください。
西部の力で、帝国に 勝ちましょう。」
西部ホースボール協会 会長 の話に、一応 うなずいておく。
帰りの 馬車でも、この男の話は、鬱陶しい。
男が、たくさん入っている 理事会は、時間が かかる。
こういう話を ベラベラと するからだ。
男なんて、理事会から 排除してしまえば いい。
それにしても、西部代表の人間は、ルールを 守る意識が 少ない。
トキニホン ウルフの頭蓋骨 の 使用禁止は、ミラドールが、原因だ。
前回 対抗戦で、魔法を使った 神の 息吹 ゴール。
あれを 機に、私は、頭蓋骨を 王都から 一掃した。
牛の皮を なめして つないだ 丸い球体を ボールとして 使うよう 定め、
その 全てに、魔法 感知機能を つける ように したのだ。
あんな プレーを 許す わけには いかない。
今回の プレー、最も 近くにいた、ミラドールは、検査で 無罪であった。
と、なると、次に 近くにいた アリーの 仕業と 見て 間違いない。
ミラドール と アリーを 王国代表に 招集?
とんでもない。
あのような 選手は、絶対に お断りだ。
魔法が 使いたいなら、エアロボールの 選手に なれば いいのだ。
=== ===== ===
西部ホースボール協会 会長と別れ、王国への 帰路につく ノマート氏。
彼は、かつて 足のあった部分を 持ち上げ、横になった。
王都までの 距離は、長い。
揺れる 馬車の 寝心地は、それほど 良くないであろう。
彼は、大きなあくびをして目を閉じた。
=== ===== ===
非接触式 体温計で 測った、体温が 低すぎて、
普通の 体温計で わざわざ 測り直して 確認したことが ある人は、
高評価を押して次の話へ⇒
非接触式 体温計は、便利ですね。
手放せません。
昔は、3500円の 耳で測る 体温計ですら 高いと 思っていましたが、
倍以上の お値段の 非接触式 体温計を 使い始めると 手放せなく なりました。
ピッって 一瞬です。とっても 楽。
さて、1月に、ストイコビッチさんという方が、
セルビアという国の サッカーの代表監督に なったそうです。
日本語 ペラペラで、納豆大好き らしい です。
ぜひ 成功して ほしいですね。




