1-31. 馬上の戦い ⑤
ミラドールは、どこか ズレている。
「納豆の 恨みは、必ず 返すわ。」
あんなに おいしいのに!
水戸の人に 怒られるよ。
ベルが 顔を そっと 近づけてきた。
たてがみが、鼻をくすぐる。
「くしゅん。」
ベルー。くすぐったいよ。
愛馬の 鼻の頭を 撫でてやる。
鐙に 足を かけ、さっと その背に 飛び乗った。
さぁ 後半だ。
[美容師の娘] 【 1-31. ゴッド ブレス ユゥ 】
すごく 緊張する。
ミラドールと ポジションを 交換するのだ。
後半 開始の 笛。
パス。パス。パス。
ボールが、くるくると 回る。
東ハルサ、ピクシノビッチさんが、ペナルティエリア手前で
ボールを キープするが、味方に つなげることは できない。
ゴイコイスが、ボールを キャッチ。
東ハルサ、プロキシーチさんが、ゴイコイスさんの パスを カット。
浮き球の ショットを 打つ。
ゴイコイスが、慌てて パンチングした ボールは、クロスバーが、はじく。
なんとか 助かった。
ボールを、東ハルサが 保持する時間が 続いている。
流れを 変えたい。
ミラドールの 顔を 見た。
目が 合う。
うなずいた ミラドールに、うなずき 返す。
ベルの首を返し、後ろに疾走。
ミラドールが、向こうから 駆けてくる。
私と、ミラドールが 入れ替わった瞬間、
エビーヒアさんから 私に パスが 繋がった。
ボールを 止める。
大胆に。 丁寧に。
怖がって 相手から 逃げるように ボールを 止めると、
次に 打つ方向が 限定されて、余計に 相手の 馬に 寄せられて しまう。
相手に ボールを さらして、「来い、来い。」と 引きつける。
そして、どこへでも 打つことが できる 位置に ボールを 置き 続ける。
相手が、迷って 馬の足が 止まって しまえば チャンス。
その瞬間、パスを 出す。
ミラドールっ!
〔後半11分〕 GOOOOOAL!!
私たちの、後半 最初の 攻撃は、奇襲。
入れ替わって すぐに、私が 出した パスは、ミラドールの 目の前に。
東ハルサの ゴール前には、
カスタネトさんと、後半から 出場の スパシイチさん。
そして、イブコブさんが、ゴールを 守る。
うまく 入れ替わった つもり だったけれど、相手の 準備が 整っている。
さすがの ミラドールでも、これでは 難しい。
ミラドールの 棍が、空中に 浮く ボールに 触れる。
ミス?
あり得ない。
こんな所で ミラドールが、ミスする なんて。
ボールは、カスタネトさんと、スパシイチさんの 間に ふわりと 浮く。
あぁ、簡単に クリア されてしまう。
カスタネトさんが、棍を 出す。
スパシイチさんも、棍を 出す。
2人の 棍が、ぶつかりそうに なる。
カスタネトさん、棍を 引いて 譲った。
スパシイチさんも、棍を 一瞬 止め、
相方が、棍を 引いたのを 見て、もう 1回 動かそうとした。
コツン。
ミラドールが、ふわりと 浮かせた ボール。
それは、イブコブさんの 目の前で、もう1度、跳ねた。
スパシイチさんの 棍に 当たって・・・。
予想外の バウンドに、イブコブさんも 反応できない。
そのまま、ボールが、ネットに 吸い込まれる。
1点 返しちゃった。
ミラドール。すごい。
東ハルサ地域連合 2-1 西部ホースボール協会代表
観客の 人たち 大騒ぎ。
手を振る ミラドールに 声援を送る。
ミラドールの 技術は、すごい。
でも、本当のすごさは、この 天使的な 発想力。
相手 3人が、ゴールを守る どうしようもない 状況で、
ボールを、ふわっと 浮かせて、オウンゴールを 誘うなんて。
彼女が、神の子って 呼ばれるのも、よく 分かる。
それでも、まだ 負けてる。
まだ、足りないんだ。
どうにかして、攻めなきゃ。
後半20分。
ミラドールの 縦パスを 受けた 私は、
相手の 守備を 背負いながら、ペナルティエリア内に 進入。
ショットを 打つも、ネットを 揺らすことは できない。
後半33分。
ミラドールが、左サイドから、ゴール前に
クロスを 供給したけれど、味方は、反応できない。
後半34分。
東ハルサの 逆襲。
自陣からの イブコブさんの ロングフィードに、
ピクシノビッチさんが 抜け出す。
ゴイコイスさんが、かろうじて 押さえた。
後半43分。
東ハルサの攻撃。
パーンチフさんが、相手の ボールを 奪って、ピクシノビッチさんに 出す。
ピクシノビッチさんは、ペナルティエリア 手前から 棍を 振り抜く。
イブコブさんの 手を すり抜けた ボールは、クロスバーを 越える。
ふぅ、危ない。
でも、向こうのペースが 続いている。
どうしよう。
「アリー。こっち。」
ミラドールが、近づいてきた。
「もう 一度、ポジションを 入れ替えるわ。
私に パスを 頂戴。」
うん。 わかった。
「それでね。
今度、私が シュートを 打つ 瞬間に 喝を 入れて ほしいの。」
喝を いれる?
なに? 聞いたこと ないよ。
そんなの。
「たいしたこと 無いのよ。
私の 背中に、少し 強めの 風を 魔法で ぶつけて 欲しいの。」
え? 痛いよ?
それって、ゴール することに 全く 関係ないでしょ。
「うん。気持ちの 問題。
気合を 入れて もらう ことで、少しでも、ゴールに 繋げたいの。」
意外だわ。
ミラドールにも、そういう 神頼み みたいな 所が あるのね。
わかった。 私に まかせて。
時間が 無い。
ミラドールと 場所を 入れ替わって すぐに、パスを 出す。
ミラドールが、棍を 動かす。
私は、言われた通り、ミラドールの 背に 少し 強めの 風を 送る。
風魔法は、音も たてずに 彼女の 背中へ。
お願い。 ミラドール。
これが 最後の チャンスの はず だよ。
〔後半46分〕 GOOOOOAL!!
アディショナルタイムは、2分の 表示。
時間は、ほとんど 無い 状態。
私たちの、最後の 攻撃も、奇襲。
私が 出した パスは、ミラドールの 目の前に ふわり。
東ハルサの ゴール前は、カスタネトさんと、スパシイチさん。
当然、イブコブさんが、ゴールを 守る。
東ハルサの 準備が 整っている。
さっきと 一緒。
ミラドールの 棍が、空中に浮く ボールに 触れる。
彼女が、ふわりと浮かせた ボール。
もう 同じ手は、通じない。
カスタネトさんも、スパシイチさんも、手を 出さない。
当たり前。
何もしなければ、イブコブさんが、キャッチして 終わり。
ミラドールが、馬を フイッと 横に 振り、体を 傾けた。
私の 風魔法は、彼女を 素通りする。
宙に浮く ボール。
それは、イブコブさんの 目の前で、もう1度、跳ねた。
私の 風魔法に 当たって・・・。
予想外の バウンドに、イブコブさんも 反応できない。
ボールの、あり得ない 動き。
取れるわけがない。
そのまま、ボールが、ネットに 吸い込まれる。
東ハルサ地域連合 2-2 西部ホースボール協会代表
ピッピィーー
試合終了の 長いホイッスルが 響く。
観客の 人たち 大騒ぎ。
両手を 振る ミラドールに 喝采を 送る。
ミラドールの 技術は、怖い。
でも、本当の 怖さは、この 悪魔的な 発想力。
相手3人が、ゴールを守り、方法が 見破られている 状況で、
ボールを、風魔法で 浮かせて、ゴールに 入れるなんて。
でも、私の気分は、最悪。
騙された。
私に、風魔法を 使わせて、ゴールを 決める なんて ひどい。
ミラドールに ベルを 近づけて、文句を 言う。
「アリー。 何 言っているの。
あなたの 風魔法じゃ ないわ。
神の 息吹よ。」
はぁ?
「神の 祝福が、ゴールを 生んだのよ。」
ズルして、魔法で 風を ぶつけた だけ でしょ。
何、神の 息吹 ゴール なんて、かっこいい 名前に してるの。
ふいに、ベルの たてがみが、鼻を くすぐる。
「くしゅん。」
もぉ、ミラドールに 文句を 言う 勢いが、削がれちゃう。
「あら?
アリーも、息吹で 祝福して くれるのね。
じゃぁ 私も。」
ミラドールが、私の おでこに チュッと キスを する。
そして、彼女は、耳に 優しく 息を 吹きかけて 言った。
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ゴッド ブレス ユゥ
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くしゃみを はじめると、止まらない人は、
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私は、くしゃみが始めると、なかなか止まらない時があります。
昔は、くしゃみの時に、鼻水が出ちゃうのをどうしよう?って感じでした。
今は、くしゃみをした時の周りの視線が怖いです。
じぃぃ。 犯罪者を見る目ですね。
今回の話を書き始めて、くしゃみが止まらなくなって薬を飲みました。
ぴたっと止まっていたのですが、今、また1回だけ、くしゃみが。
連続しないやつは、そこまで、つらくないんですよね。
くしゃん。
読んでくれた あなたに、神の 祝福が ありますように。