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3-69. 【短話】 舞い

夕暮れの柔らかな光が差し込む静かな『王立飛翔師学院』のナカヨシ研究室。


ナカヨシ教授は、学生相手に講義中。


アリーは、お出かけ。


やんちゃな3匹の犬たちは、外に出かけてお留守。


研究室には、他に人っ子ひとり存在しない。


そこにたたずむのは、自動制御人形『オートマタ』。


ジャックマールと名付けられたその人形は、ただひとり、静かに立っていた。


空気がぴんと張り詰める中、彼の動きが始まると、研究室の空間が、呼吸を忘れて沈黙した。


彼の足が、すぅぅっと滑り、美しい舞が、はじまる。


その舞の軸に揺らぎはなく、しなやかな動きに、凛とした精神が匂う。


指先が、空を撫でると、その震えは、窓をビリリと小さく揺るがし、すっと伸びる指の軌跡は、細長い糸を宙に浮かべ、空間に美しい模様を描写した。


    [美容師の娘]  【 3-69. 自動制御人形ジャックマール】


彼は、ふと、立ち上がった。


舞おう・・・そう思った。


いずこからか、ふつふつと湧きだした何かが、身体を動かした。


あたかも、目の前の舞台にあがるように、ススゥと足を進め、歩み出る。


最初は、きわめて小さく震えるような動き。


空気の重みさえ味方につけ、彼は、ゆっくりと腕を上げた。


指を宙に差し出し、ふわりと浮かせると、ひらりと返った手の甲が、空間に柔らかな弧を描いて宙をなぞる。


手のひらの向き、揃った指先、凛と上を向く顔。


すべてが緻密な美しさ。


もはや、技巧を誇示する段階は通り過ぎ、涼やかな風が、部屋の空気を揺らすような自然と調和した優美さをたたえる優雅な舞。


セミノボヨの街からの帰路に、ライリューンが馬車の中で彼のために縫ってあつらえた人形の衣。


その裾がふわりと浮き、腕の動きにぴったりと合わされた音を感じさせない足さばきが、衣擦れの余韻だけを残して空間を舞う。


彼の動きは、水面にポトリと落ちた水滴がもたらす静かな波紋。


肩のうねり、腰の揺らぎ、腕のしなり・・・それらが、全て静かに調和していた。


研究室の中に溶け込んで宙に浮かぶ小さな埃でさえ、舞の一部となる。


この限られた空間が、彼の動きを、キリリと研ぎ澄ますのだ。


動きの中に、水のような奔流と、風のような律動。


部屋の空気が、一変する。


目の前には、アリーも、ライリューンも居ない。


誰に見せるわけでもなかった。


ただ、自分の中に満ちたものを、あふれるままに。


ただ、その姿を天だけが見つめる。


そこに宿った刹那の美に、天は、静かに目を凝らし、耳を澄ませていた。


心をもって舞われる舞は、技をずぅんと越え、その魂がぶぅんと叫ぶ。


無音の音楽に乗り、感情が、アリーによって作られたこの人形の肉体を通じて、宙空に放たれる。


それは、時を超え、あの工房の鉄と炎の魂が、宿っているかのようであった。


やがて、動きは、次第に静かになり、人形はふわりと片手を胸の前に戻すと、そのまま足をそろえた。


彼は一歩、静かに後ずさりし、誰に対してというわけでもなく、深く腰を折った。


一礼をする姿は、小さく、静かで、まっすぐ。


そこに、虚栄といったものは、欠片すらなかった。


彼が頭をあげ、その足の指先に至るまでの張り詰めた緊張がふっと解けると、部屋に、余韻のような哀歌の匂いが漂った。


まるで、夢のような時間。


沈黙が戻った部屋の中、自動制御人形は、しばらく動かなかった。


ただ立ち尽くし、何かが、ほどけていくのを感じていた。


ひとときの静寂。


彼は、舞ったのではない。


そこにひととき、生き、休止しただけであった。


研究室に、再びいつもの音が戻る。


人形はそれらに気づきながらも、何も言わず、ただ静かに座り直した。


空気が、ほんのわずかに変わった。


風が窓を叩く音。


木が軋む音。


すべての音が、かすかに違った。


彼が生み出した舞の欠片が、並ぶ試験管の光沢や床に映る影・・・そのひとつひとつの中に、ぬめりと混ざって残り続ける。


研究室の片隅に、誰にも触れられぬ残響が、静かに、そぉっと漂流した。


何事もなく時は過ぎ、いつも通り暮れた日は、部屋の窓に影を落とす。


自動制御人形は、『王立飛翔師学院』ナカヨシ研究室の隅で、今日も静かにたたずんだまま。


「たっだいまぁ~。ジャックマールくん、いい子にしてた~?」


=== ===== ===


そうして、大きな声とともに、研究室に騒がしい少女が戻ってきた。


=== ===== ===

教科書の正岡子規に落書きを終えた人は、高評価を押して次の話へ⇒


 蛇足.今回の連続投稿の一連の蛇足は・・・

たぶん、かなり前に予約することになるはずです。

多少、現実世界と齟齬があるかもしれません。


 蛇足1.正岡子規


2020年12月17日のあとがきは、正岡子規さん。ひげを生やしたバイキングの小峠さんみたいな人ですね。


ほとんどの場合、紙の本への落書きは、1回限りで、やり直しがきかず、その内容にセンスと人間性があらわれることから、他人に見られた場合の・・・特に親しい人にどのように思われるか?というような、タブレット端末の教科書では、味わうことのできない緊張感があります。もちろん、落書きをしないという選択もできますが、それによって、面白味の無い人間と分類される場合もあります。


ですので、少なくとも小中学校では、紙の本を今後も使い続けてほしいです!



 蛇足2.Nintendo Switch 2


発売まで、1週間ほど(5月末現在)。大体5万円くらいですか。ゲーム機でゲームをしなくなってから、かなりの時間が経ちます。転売対策がされているので、おそらく高値転売は、なかなか見られないでしょうが、それが無ければ、めるかりみたいな所で10万円、20万円といった価格が出ると思います。


なぜなら、それでも、買う人がいるから!


利益っていうものは、そういう所からあがるものです。


逆に、(ネットを含め)店頭で売れなければ、メーカーや小売りは、値下げをする必要がありますし、仕入れた転売ヤー(偽卸し)も値下げする必要があります。需給ってそういうものなんでしょうね。


 蛇足3.電力自由化と発送電分離


私たちが、電気を使うには、発電と、送電を行う必要があります。日本では発電のための設備と、送電のための設備、それを売る小売り、全て大手電力会社が所有していて一括で販売していました。


その後、電力自由化が始まり、ガス会社が、電気を売り始めたり、全く電気なんか関係なかった良く分からないナントカ電力みたいな会社が、電気を売り始めました。卸売りと、小売りの分離です。


しかし、エネルギー価格が想定外の高値を付けた段階で、多くの新電力販売会社が、極端に高い小売価格を提示するしかなくなって破綻することになり、その高値に嫌気して大手電力会社に戻ろうとした規模の小さい消費者が、キャパシティーの不足で大手に戻ることができないという怖い現象が起こりました。


次に考えられているのは、発送電分離です。


発電設備を所有する会社と、送配電設備を所有する会社を分けることです。これは、卸売りと流通とメーカーの分離です。作る所、配る所、売る所を分離しましょうということですね。


このメリットも、料金の値下げが期待できること。


送配電網を持っていないこれまで全く電気なんか関係なかった良く分からないナントカ電力みたいな会社が、送配電網を利用可能となり、新規参入します。値段競争が起こることで、安い電気料金になるかもしれません。発電会社も、送配電の維持管理をしなくなるのでコストが減り、その削減分が、安い電気料金になるかもしれません。


でも、発送電分離によって、必ずしも料金が下がるとは限りません。電力供給の不安定化や、設備の極端な老朽化が進む可能性もあります。だって、設備を新しくせず、メンテナンスを最小限にしてコストを下げた方が、利益が出ますし、他社と比べた料金の競争力も上がりますから。前よりは、点検や修復作業を減らす可能性が高いですよね。


一度、発送電分離が行われると、元の統合状態に戻すことは、ほぼ不可能です。まぁ、10兆円、20兆円と簡単にお金をつぎ込めるなら、別ですが・・・だから、よく考える必要があります。勢いでポチっとクリックすると、後悔することになるかもしれません。ってことで、電気については、私は、やってほしくないです。電気は、「パンや米が無ければ、お菓子を食べればいいんじゃない?」という感じで代替することが出来ない性質のものですから。



 蛇足4.特売


ティッシュの特売を、時折見かけます。価格は、5箱188円~198円(税抜き)が、多いですね。2年くらい前は、お米の特売も見かけました。さすがに今は、無いですけど。でも、あれって、スーパーは、そこまで痛み負わないんですよね。卸や、メーカーに、協賛金名目で割引を入れさせますから。無理やりに。ひどいものになると、「セールをやったから、引いといたよ」と、割引を事後承諾で入れることすらあります。ただ、モノが品薄になると、そういう無理は、できなくなります。


米卸しの利益は、2年前や、去年と比べて、たぶん上がっていると思います。


でも、それの一番の要因って、小売りに割り引いて卸す必要がなくなったからなんですよね。メーカー希望小売価格より高い値段でも、消費者の購買が変わらず、店頭で売れているため、卸売価格も、高くできて、割り引かなくてもいい。前は、残って古米になりそうだと早めに安い価格を卸から提示してましたもんね。


今は、卸の言い値で小売りが買ってくれています。しかし、ここからは、違うでしょう。新米が出るまで途中で供給を途切れさせないために、いつもより少し積み増していた在庫は、8月9月には、古米に変わります。6月には、備蓄米放出も始まります。途中で供給が途切れてしまう不安は、少なくなりました。


ってことで、少し多めに倉庫に置いていた在庫は、今よりは、安い価格で卸から小売りに売り出されることになるでしょう。そして、それに伴って起こる価格の低下やスーパーなどの店頭在庫の拡充も、小泉さんのあげた成果に・・・「わぁ、値段が下がった!」「いままで空だった棚にお米が積まれている!」「小泉さんすごーい!」


でも、こういう部分を最大限に利用してこそ、政治家です。


どうすれば、最大限に利用できるか?


私なら、JAを悪者にします。また、既得権益をむさぼっていることにして、卸も悪者にします。抵抗勢力ですね!そして、「コメの流通をぶっ壊す」と言って、本当にぶっ壊します。たぶん、安くなるでしょう。でも、電力と一緒で、安くなる時は、安くなって、高くなる時は、異常高値を付けて供給が出来なくなる可能性も、出てきます。


一度、発送電分離が行われると、元の統合状態に戻すことは、ほぼ不可能です。だから、よく考える必要があります。勢いでポチっとクリックすると、後悔することになるかもしれません。


それでも「コメの流通の解体と再構築」は、必要だと思います。新たに直通に近いシステムを作ることも必要だと思います。流通過程の競争も必要だと思います。そして「コメの流通の解体と再構築」が理由で、お米が高値異常値になる可能性を覚悟する必要もあると思います。


勢いでポチっとクリックせず、デメリットをちゃんと理解した上で承認ボタンを押すことができるよう議論してほしいですね♪


ということで、投稿は、次の更新までここでいったんお休みします。お読みいただきありがとうございました。

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