表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
224/232

3-61. 【閑話】エイプリル医院のお手伝い 後編

パンをミルクで流し込むようなあわただしいお昼。


腹立たしいことに、医師のフールさんと看護師のライアーヌさんは、診察が終わった瞬間、お昼休みに入っていたらしい・・・わたしたちより30分も早く。


「もぐもぐ。仕方が無いのよ。お休みをどこかで取らないといけないからね。ごっくん。アリーも。休める時に休まないと、ダメよ。」


サトゥさん、分かったから食べながらしゃべらないでっ。


結局、休んだのか、休まなかったのか、休めなかったのか・・・


良く分からないけれども、午後の診療が始まった。


午後からは、比較的だけど、ゆっくりした流れ。


少なくとも、午前中みたいにバタバタしたことはない。


なぁんて・・・思っていたら甘かった。


「あぁっ、痛っ。」


ちょっと隙間時間が出来たので、脚立の上に登って薬品棚から薬をおろそうとしていたサトゥさんが、落っこちたのだ。


「ダメね。足首・・・折れてるかもしれないわ。」


「ワシは、分からん。専門外じゃから。」


おいおい・・・ライアーヌさんが診察をして、フール先生は、分からないって逆でしょっ。


しかし、そんなこんなで、サトゥさんは、足を引きずりながら整形外科へ・・・


「じゃ、アリーお願いね。」


ちょっとぉ。


ライアーヌさんは、にっこり笑って診察室へと消えていった。


もちろん、フール先生も。


受付・・・わたしひとり?


そこからは、もうバッタバタ。


流れ作業のように患者さんを、ぽいぽいぽいっ。


あっ、オリエントーク国の人は、ヒラガナっていう表音文字で名前などを書くことにした。


この状態で、カンジを使うなんて無理っ。


そうこうしてラッシュアワーを切り抜けた私の前に、次なる強敵が現れた。




[美容師の娘]  【 3-61. かゆいのかゆいの飛んで行け 】




「こんにちわー。初めてなんですけど、診察してもらえますか?」


「あっ、初めての方は、こちらに記入をお願いします。」



『始めて来院された方に、お尋ねします』と書かれたいわゆる問診票をボードに挟んでペンと一緒に私と同じくらいの背の高さの女の子に渡す。


うん、さすがに慣れたから、スムーズだ。


あっ、書き終わったみたい。


「はいー。ありがとうございます。」


ボードを受け取ると、上からチェックを入れていく。


あっ、書き漏れがあるね。


「すみませーん。ケイシーさん、ここですね。今回、どのような症状で受診されるのでしょうか?」


わたしは、書き漏れのあった『今回、受診を希望されるお困りの症状を教えてください』の部分を指さしながら、女の子にたずねた。


「いや・・あの・・・その・・・」


ケイシーさんは、なにやら歯切れが悪い。


ここできちんと聞いておかなければ、フール先生の診察が滞ってしまう。


サトゥさん亡き今、わたしがここで頑張らないと・・・あっ、まだ生きてるか。


しかし、押そうと引こうと、ケイシーさんは、なかなか症状を答えてくれない。


あっ、ドアを開けて、小さな男の子が入ってきた。


次の患者さんだろうか?


一人で来たのかな?


「あのー・・・症状が分からないと、先生も、診察できないんですけど・・・」


後ろの患者さんが出来た以上、ケイシーさんに、これ以上時間をついやすわけにはいかない。


「言わないと、診察しないよ」のニュアンスを込めた最終通告を行う。


その瞬間、顔を真っ赤にしたケイシーさんが、大きな声をあげた。


「言えばいいんでしょ?言えばっ!あのねっ、かゆいの。」


「かゆい???」


「股の奥が・・・股関が、かゆいのよっ!!!!!どう?満足した?」


しばらくの間、待合室に沈黙が続いた後、後ろのかわいらしい少年が、目をそらし、そっとドアを開けて医院から出て行くのが見えた。



「アリーぃ?」



あっ・・・


ライアーヌさんが、にっこり笑って診察室から出てくる。


聞こえてたかなぁ。聞こえてただろうなぁ。あれだけ大声で叫んだら・・・


「ケイシーさんですね?どうぞ、こちら診察室へ。」


患者さんには、素敵な営業スマイル。


そして、わたしの方へは、鬼の形相。


こわっ。


ライアーヌさんは、『お尋ねします』の問診票をクリップしたボードをひったくるようにして右手に持つと、診察室へと消えていった。



・・・あの男の子、かわいかったなぁ。



現実逃避の意味合いも込めて、ちょっとドアを開けて外を見渡してみる。


どこにもいないなぁ。


医院の外に出て探してみても、男の子は、影も形も見当たらなかった。


まぁ、小さな子供が、目の前で「股関が、かゆいっ!」って叫ぶ女性を見てしまったなら、逃げ出したくなる気持ちは、分かる。


んー、トラウマにならなきゃいいけど・・・


つまらないことを考えながら、医院に戻ろうとした瞬間であった。


わたしは、大きな失敗をしていたことに気づいてしまった。



 くしゅん くしゅん くしゅん



花粉がひどい。


いや・・・患者さんが医院のドアが開けるたびに、むずかゆくなるから「飛んでるなぁ」とは思っていたけれども、外に出てしまうと飛散状況が、ホントにひどかったことが良く分かる。



 くしゅん くしゅん くしゅん



お鼻ぐずぐず、鼻水だらだら、医院のドアを開けて受付に戻ろうとしたら、あれ?・・・なんか人がいる。


それは、医院長のフール先生。


そのほっぺには、キレイなもみじがくっきりっ。


「どうしたんですか?あの患者さんは?」


患者さんが中にいるのに、診察室から出てきて受付にいるっておかしいよね?


「いや、患者は、ライアが診ている。わたしが、患部を診ようとしたら暴れ出してね・・・」


女の子のお股を広げて見ようとしたら、ビンタをくらったと・・・


・・・この、エロじじい


「ん?アリーくん、何か言ったかい?」


「え、いや・・・「メモしていい?」って・・・サトゥさんに分かるように、居なかった間のことをメモしておいたほうが、いいかなぁって・・・」


・・・だいぶ、苦しい。


エロじじい、エロじじい、メモしていぃ


うん・・・言い換えるには、無理があるな。


わたしとフール先生との間に流れる空気は、気まずいものとなったが、彼がエロじじいなのだから仕方ない。



 くしゅん くしゅん くしゅん



言ってしまった手前、サトゥさんのためにメモを書いておこうとするが、くしゃみと鼻水が止まらない。


その上、涙まで出始めた。


それでも、時間がたつにつれて、くしゃみ・鼻水は、おさまってきたけれども、今度は、目のかゆみが止まらない。


あぁん。


涙で、前が見えない。


目をこすりながらメモを書くのは、骨が折れる。


あっ、サトゥさんの足首の骨、折れてなければいいなぁ。


途中、ちょっと読みにくい字になっちゃったけれども、もういい。


あきらめた。


人間あきらめが大切だ。


あぁ、目がしょぼしょぼする。


隣を見ると、エロじじ・・・じゃない、フール先生も目をこすっている。


花粉症、蔓延してるなぁ。


そんなことを考えていると、診察室のドアがガチャリと開く。


「お疲れさまでした。お薬をお出ししますので、おかけになってお待ちください。」


ライアーヌさんは、流れるようにケイシーさんを誘導すると、わたしに、A5サイズくらいの紙を渡してきた。


「はいっ、これに書いてある通りにきちんと渡すのよ。私は、フール先生に状況を説明するから。」


そう言って、フール先生と一緒に診察室へと戻って行った。


もう、失敗するわけにはいかない。


紙を見ながら、薬品棚から塗り薬と飲み薬を取り出す。


「ガタゴートクリームと、プポペペマイシンね。」


目がしょぼしょぼするので、指さしチェックをしながら、間違いがないかよく確認する。


うん、大丈夫。


間違ったら大変だから、3回チェックして問題ないことを確認した。


後は、お名前と、薬の用法を袋に書いて渡すだけ。


「お名前が、ケイシーさんで、外陰部っ・・・と、1日2回起床時と寝る前ね。」


オリエントーク国の人じゃないから、漢字を使わないので、この部分は、安心できる。


薬を間違えていないか、もう一度ライアーヌさんの書いた紙と突き合わせて、問題なしっ。


よし、渡そう。


「ケイシーさーん。お薬の用意が出来ました。」


今度は、何も問題がなかった。


まぁ、ケイシーさんの顔が、ちょっと引きつっていたような気がするのは、気のせいだ。


人間は、成長するものだからねっ。


そこからは、絶好調。


最後には、ライアーヌさんに「よく頑張ったわね。」って褒められるくらいいい仕事が出来た。


あっ、エロじじい先生も、何か言ってたけど、忘れた。



 ☆ ☆ ☆



「ただいまー。ライリューン、まだいる?」


「いらなーい。」


「え?いらないの?じゃぁ、あげないよ?お土産。王都はずれ町名物『タマネギ入りのにくまん』。」


「あっ、私、居るし、にくまんも、いるっ。」


研究室に戻った時、つまらない小ボケをかましてきたライリューンを軽くいなす。


「大丈夫だった?迷惑かけなかった?」


にくまんにかぶりつきながら、わたしに問いかけるライリューンに胸を張って答える。


「完璧っ。最後、褒められたもん。」


「うそっ、絶対、何かやらかしてくると思ったのに。あぁ、良かったぁ。」


ふふふ、人間は、成長するのだ。


わたしは、タマネギ入りにくまんを、パトやラッシュ、チビたちに分けてあげながら、胸を張った。


「ライリューン、今日、どうする?研究室に泊まっていくなら、わたしも、泊まるけど・・・。」


「んー。熱下がったけど、体だるいからお泊まりするー。」


「OKっ、じゃぁ、晩ごはん用意するねー。」


こうして、ドタバタした4月1日の夜がふける。


2人と、3匹の犬たちは、幸せな眠りにつくことに。



さてさて、翌朝のこと。


パトがくわえて来たのは、ライアーヌさんからのお手紙であった。



「アリーっ!」


「なにー?ごはんできたの?」


「ちがーーうっ。ライアから手紙っ。なんか、アリーが、ガタゴートクリームっていう薬の使い方を間違えて書いてたって怒ってる。」


ん?ガタゴートクリーム?


あぁ、ケイシーさんのやつだ。


使い方・・・指さしチェック・・・あぁ、薬のチェックはしたけれども、使い方は、指さしチェックしてないや。


「えーと、外陰部とは書いた覚えがあるけど・・・」


一応、ちゃんと書いたことをアピールしておこう。


「なんか、受付で失礼なことした上に、失礼な使い方を薬の袋に書いてたって、ライアが言ってるけど?なにしたのよっ。」


ライリューンは、手紙を振りかざしながら、ツバを飛ばす。


きちゃないなっ。


「ほ・・・ほら、なんか違ったとしても・・・あっ、エイプリルフールだったって言えば・・・」


「そんなの、通用するわけないでしょっ!今日からは、私がお手伝いに行くのにぃ。行きたくないっ。ライアが、怒ってる。絶対、怒られる。すごく怒られる。ああああああぁぁ。」


頭を抱えて転がり回るライリューンをぴょいと飛び越えて、パトは、ドアノブを器用に回してお外へと出て行った。


ウチのワンちゃんは、とっても賢い


だけどね、花粉が入るから、ドア閉めて行ってよね。


しかし、エイプリルフールも通用しないなんて、世知辛い世の中だねぇ。



ずずずずっ



「あっ、この紅茶おいしいっ。」


「うるさいぃっ。あぁ、やっぱり、アリーなんか行かせるんじゃなかった。昨日の私のバカぁ。」


うーん、もうちょっと心の余裕を持てばいいのに。


今日の紅茶には、普通の茶葉の他に、ジャスミンの葉も少しブレンドされている。


少し落ち着いたら、ライリューンのために、1杯淹れて用意してあげよう。


紅茶をすすりながら、窓の外を眺めると、パトやラッシュ、チビが、いつものように猫たちをいじめていた。


うん、いい天気っ。


=== ===== === ===== ===


今日は、4月1日。


花粉は、舞っているけれども、きっといい日になるはずだ。


=== ===== === ===== ===

ナッツと紅麹が嫌いな人は、高評価を押して次の話へ⇒


【蛇足0】今日は4月1日です


 法改正により、国会における政倫審や参考人招致、証人喚問での

 虚偽答弁が、法律違反となり捕まることがなくなりました


 あっ、前から、お茶などを煎れるボーイの真似事をしていたと

 証言すれば、捕まらなかったんですね

 すみません、勘違いしておりました

 

 今日は、エイプリルフールです


【蛇足1】ナッツと紅麹

私は、ナッツ類が好きです。

でも、ナッツ類が苦手です。

これには、理由があり、それが「アフラトキシン」です

アフラトキシンは、アスペルギルス属( コウジカビ)の

一部が産生するかび毒で、肝臓の発がん性があります

それも、結構、いい確率で起こります


アすぺるぎるす フラばす の トキシン(毒)で、

アフラトキシンですね。


これらは、ピーナッツ及びピーナッツバターなどの加工品、

トウモロコシ、ハト麦、そば粉などの穀類及びその加工品、

ナツメッグ、白コショウなどの香辛料、ピスタチオナッツ、

製あん原料雑豆、ナチュラルチーズなど多くの食品から検出

されることがあります。


高校生の頃、この毒で、10万羽以上の七面鳥が死亡した

ことがあるという話を聞いてしまい、大好きだった

ピーナッツが、怖くなったんですよね

まぁ、食べますけど・・・


【蛇足2】紅麹と麹は違う

モナスカス属(Monascus, ベニコウジカビ)

アスペルギルス属(Aspergillus, コウジカビ)

違うカビですね

日本では、着色料として用いられるベニコウジ色素には、

シトリニン含有濃度が0.2 μg/g以下との規格が定められていますが、

そう言えば、あそこの会社も、カビ毒シトリニンは、検出されない

状態にしてたはずです


たぶん、元は下着メーカーのグンゼの技術だったはずですけど


付け加えると、

あそこは、「あったらいいな」をカタチにするんじゃなくて、

ウチの会社にあったらいいなを作っている会社や商品その物を

買い取ってるイメージですね

小林脳行(台所洗面所トイレ用品) 日立造船(杜仲茶) 桐灰化学(カイロ)

笹岡薬品(命の母) アロエ製薬(アロエ薬) 六陽製薬(化粧品医薬部外品) 

ジュジュ化粧品(化粧品)  石原薬品(肥満薬) 梅丹本舗(梅肉)

グンゼ(紅麹)  七ふく製薬(便秘薬)  扶桑薬品(痔疾用薬)

ざっとあげるだけでも、こんな感じ・・・

そういえば、あくまで噂ですが、買収後、

成分の仕入れ先を変更した製品があって、

なんか、商品の感じが変わったって話を聞きつけた

元社員が問い合わせても、変えてないって言い張った

って話なんかもちらほらりんりん?

そういう意味で、もしかしたら、外様の人に経験や知見はあっても

本体の譜代の人材は、経験や知見の不足があったのかもしれませんね

あっ、完全な憶測ですけど


【蛇足3】横紋筋融解症

紅麴由来の天然のモナコリンK=ロバスタチン摂取で、

横紋筋融解症を起こすことがあったら、

腎障害が起こっても仕方ないって、

ちょっと思いました。

ブペルル様が原因とか、お話がありますけど、

実際は、何が原因か分かんないので

対処しきれなかったんでしょうかね

あっ、完全な憶測ですけど


【蛇足4】例のあの人

「執事の仕事のようなことを一部行っていた」とか、

「どうやって送金したかいくつか想像できるが、

 実際、何をどうしたかは、送金した本人しか

 分からないので説明できない」

って感じで、会見で、説明できない理由も

言っておけば、選手は、もうちょっと責められ

なかったんじゃないかって、思いました。

あっ、内容は、完全な憶測ですけど


あと、私が通訳でも、賭け事やっちゃったかも

と思ったりもします。

やっちゃだめなことですけどね。


見渡すと、憶測ばかりですけど、

今日は、4月1日ですから

仕方ありませんね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ