3-52.あの鐘の音を鳴らすのは 2
「セミノボヨの街っ?行く、行くっ。」
王都にやって来たライリューンが、大きな声を上げた。
うるさいっ。
っていうか、お腹大きいのに、旅行なんて大丈夫なのかな?
「ねぇ、なぁんで、そんなについて来たいの?」
「アリー、知らないの?あそこのライ麦パンって、価格は安いのに、すごくおいしいんだよ。」
へー。
ライリューンによると、どうやらセミノボヨのライ麦を使った黒パンやサンドイッチは、かの地の名産品らしい。
うーん。そっかぁ・・・それなら行ってやってもいいかな。
[美容師の娘] 【 3-52.ふわふわライ麦パン 】
ということで、久しぶりの馬車旅っ。ライリューンのお腹が大きいから、速度はゆっくり。
そういえば、ヨーロッパでは、18世紀から19世紀にかけて、馬車を護衛する犬として護衛犬=キャリッジドッグが 使われていたという。うん。無駄な豆知識だ。
「ねぇ、アリー?」
「どうしたの?ライリューン。」
「なんで、パトとラッシュとチビは、馬車に乗ってるのかな? 馬車の速度が遅いから、盗賊なんかに襲われないよう 護衛のために連れていく って言ってたよね?」
「歩くのに疲れたんじゃない?」
3匹は、最初は馬車の周りを歩いていたのだが、途中で飽きたのか、馬車に乗り込んできた ・・・勝手に。
まぁ、そんなことを気にしていたら、旅なんかできない。 ストレスで、ハゲるだけっ。 気にしてはならない。
そうこうしながら、わたしたちの馬車は、ポクポクと街道を進んだ。 そして10日目の昼過ぎには、セミノボヨの街の外壁が見えてきた。
「うん。到着だね。」
「あぁ、長かった。 やっぱり揺れるとキツいわ。うぅ~ん。」
ライリューンが、ちょっと腰を浮かせて、背中をさすりながら うめいている。
王都とライリューンが普段住んでいるキョーカミトバ州の間の道については、その半分以上を わたしが整備しているため この街道を進むときほど、馬車は揺れない。 妊婦のライリューンにとっては、ゆっくりの馬車旅でも、今回の道中、その揺れが体にこたえたようだ。
馬車は、そのまま街の中へと入る。大きな門ではあるが、特にチェックされることもなく素通り。もちろん、他の馬車や旅人は、門兵のチェックを受けているから特別扱いだ。
まぁ当然だろう。馬車にはヘドファン伯爵家の紋章がついており、馬車の頭の部分には、王国旗と伯爵家の旗がクロスする形で掲げられている。これに、ケンカを売ろうという人間は、そうそう居ない。
馬車が宿の前に停まると、3匹のキャリッジドッグ・・・護衛犬たちは、パっと目を覚まして元気よく外に飛び出して行く。
うんうん。たんぱく質は、自分で獲ってくるんだよー。
駆けていくパトたちの後姿を眺めていると、ライリューンが、のそのそと馬車から這い出るように降りてくる。
「あの子たち、大丈夫なの?」
ライリューンは、心配性だ。パトとラッシュとチビは、王都では自由に駆けまわっている。セミノボヨの街に来たからって、そこまで安全に注意を払ってやる必要はないだろう。
わたしは、「大丈夫だよ。」という意味を込めて、軽く手を振るが、ライリューンは、まだブツブツと彼らを心配し消えていった3匹の後姿を見つめていた。
「トキニホンウルフが、街中を駆け回って、混乱とかおきなければいいけれど・・・。」
あぁん。まだ、心配している。 大丈夫、大丈夫。 パトたちは、お利口だからっ。 それより、荷物もって お部屋に行くよー。
最高級の宿は、居心地がいい。食事も美味しい。
けれども、この街での、わたしたちの一番の目的は、ふわっふわのライ麦パン。
ライ麦の粉は、小麦と比べるとその色が黒い。
「黒いパンは、宿の食事では、出せないって、融通が利かないんだね。」
「最高級の宿だから、仕方ないかもっ。 そんなものだよ。 料理って、味だけじゃなくて見た目も大切だから。」
ライリューンのお腹が大きいから、あんまり出歩きたくはなかったんだけれども、この宿にライ麦パンがないなら話は別っ。スウィートルームのお部屋に荷物をポイッしたわたしたちは、美味しいライ麦パンを求めて、街を徘徊することになった。
「あっ。ほら、あそこいいんじゃない?」
指差すライリューンの先を見ると、お食事処の看板横に釘で打ち付けられた木札に『おいしいセミノボヨのライ麦パン!』の文字が見える。
「そだね。あんまり歩きたくないし、入ってみようか。」
歩きたくないというのは、わたしが・・・ではなく、お腹の大きいライリューンをあまり歩かせたくないから。軽く覗いてみても、薄汚れているわけでもないし、客層も荒れている感じはないようなので、このお食事処でいいだろう。
運のいいことに、広い窓際のきれいなテーブル席が空いていた。
「あっ、あそこがいいやっ。」
お姉さんの案内より先に、ライリューンは、そちらのお席にドスンと座りこんだ。
うん、妊婦は強い。
ちょっと困ったような顔をしていたお姉さんも、1枚銅貨を握らせるだけでにっこり微笑んだ。
「ご注文が決まりましたら、お呼びください。」
のどかな街を眺めることが出来るいい席だ。
「メニュー表は、ないんだね。」
「あのね、アリー。紙を使うなんていうカジノみたいなことは、普通は出来ないのっ。ほら、木札が壁にかかってるでしょ?王都なら別だけれども、こういう街じゃ、まだ木の札を使ってるんだよ。あぁ、でも、あの高級宿なら、羊皮紙かもしれないね。」
ふっと壁を見ると、木札に書かれたメニューが、壁にかけられている。あぁ、そっか。わたしなら、紙を用意できるから、羊皮紙にするか普通紙にするかで悩むところだけれども、田舎の普通の大衆食堂的なお店は、木札を使うんだねぇ。
「とりあえず、ふわふわライ麦パンとスープを頼んでおいて、あとはその時に考えようか?」
「うん。それでいいよー。」
一応、注文が決まったので、わたしは、さっきのお姉さんを呼ぼうとベルをチリンチリンと鳴らした。
その時であった。食堂の入口あたりがザワザワと騒がしくなったかと思うと、悲鳴に似た叫び声が響いたのだっ。
―― オオカミが出たぞーっ!
食堂の中は大騒ぎ。そして、窓から見える街の人たちは、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
でも、わたしは、落ち着いていた。
だって、この話、知ってるんだもの。
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オオカミが出たっていうのは、羊飼いの嘘で、本当は、オオカミは、居ないんだよねー。
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蛇足1.デスノート
この蛇足に書いたことは、現実におこる設定になっていた
のを忘れていました。
遠藤航選手が、頭部負傷で、搬送・・・。
一番居なくなっちゃダメな人ですねぇ。
骨折があれば、出場は無理でしょう。
脳震盪であれば、出場は可能ですが・・・
脳震盪後は、復帰のプログラムが決まっていますので、
体調にあわせての運動開始ではなく、プログラム通りの
スケジュールになるため、早期復帰というのは、難しそう。
ドイツ戦に間に合わない可能性までありますね。
板倉選手は、内側側副じん帯の部分断裂からの復帰なので、
無理は出来ないと思われますし、冨安選手は、右太ももに
不安あり。
守備陣に穴ぼこだらけで初戦を迎えるかもしれませんね。
この3人、代わりいないですし・・・。
えーと。全ては、W杯を夏じゃなくて、11月の開催に
した人が悪いです。うん。
蛇足2.海外の方々も
10月31日にランサムうエアで、大阪の
急性期総合医療センターが、ダメになった事件が
ありましたよね。
あれ、復旧は、来年1月までかかるとか・・・。
それとは、関係ない話ですが、まいな保険証って
ありますよね。
近いうちに、あれと連動する形で、今までの診療や
使ったクスリのデータも、「ちがう病院」が、覗ける
・・・じゃないや・・・チェックできるようになるそう
です。
うん。無駄な豆知識だ。
侵入出来るならば、海外のはっかーの方々も、チェック
できるんだろうなぁ。