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3-44.日本刀の披露

 馬車で、塔に乗り込むと、塔の最上階を目指して、男子寮の階段を ゆっくりと上がる。


 気づかされたのは、警備のための 衛兵の人数が異常に多いこと。 特に、最上階とその下・・・ つまり、アレックスと フィリップス王子の部屋の周辺には、100人を超える王宮警備兵が、臨時に配置されていたのだ。 いや・・・ こんなことするくらいなら、どっちか引っ越した方が、いいんじゃない?


 あまりにも 物々しい警備体制に、少し気持ちが 悪い。


 しかも、わたしまで、誰何(スイカ)・・・ つまり、その兵士たちに止められて、通行の目的を質問された。 わたしは、身分的には、ほぼ最上位のはずだから、例外なく 止められるってことだよね。・・・ 寮の入り口で2回、フィリップスの階層で3回。 アレックスの部屋の前で 1回。


 これ、わたしが思っていた以上に、今って、ちょっと マズい状態なのかもしれない。


 そうやって、何度も止められた挙句、やっとのことで アレックスの部屋に案内されたわたしは、思わず息を呑んだ。 そこには、深い疲労が刻まれた 見たことも無い 王子アレクサンドロスの顔が あったのだ。




[美容師の娘]  【 3-44.アレックスの疲労 】




「アリー。 来てくれて、うれしいよ。」


 疲れ切った笑顔が、痛々しい。


「アレックス、寝てる? ひどい顔だよ。 大丈夫?」


 椅子から立ち上がって わたしを迎えてくれたアレックスの手を握り、その甲をそっと撫でた。 王子の睡眠不足は、明らかだ。 彼は、何も答えることなく、わたしの手を 握り返して来た。


「・・・では、私は、これで失礼いたします。」


「あぁ、報告は、役に立った。 ありがとう。」


 王子の部屋で、何か書類を並べていた 衛士風の男が、席をはずそうと立ち上がり、アレックスが、その男に軽く声をかける。


「良かったの? 時間。 無理してない?」


「あぁ、本当は、もうちょっと前に、全て終わってる予定だったんだが、あまりに対応しなくてはいけない 問題が多くてね。」


「そうなんだ。 寮の警備も、かなり厳重になってるよね。 やっぱり、フィリップス王子の問題?」


「フィリップスだけなら、私だけでも、どうにでも出来る。 問題は・・・ パオラ妃だな。 ただ、本当に大丈夫だ。 ほんのちょっと、忙しいだけだから。」


 ほんのちょっと忙しいだけで、目の下に、そんなクマは出来ない。 頬が、げっそりとこけることもない。 あぁ、お弁当を持ってくるの止めちゃってるから、ちゃんと食べてないのかもしれないな。


「うん、分かった。 えーと、ちょっと待ってね。」


 一度、控えの部屋に戻る。 そこで待機しているマーガレットに命じて、まずは、お食事の準備だ。 用意してきたんだ。 ルームサービスみたいな感じで。 「お待たせしました、こちらが当店のオススメメニューです」ってね。


 テーブルに置かれた皿には、アレックスが大好きなお肉。 とっても高級なお肉を切り落として、フライパンで焼いてお塩でシンプルに仕上げ・・・ない。 うん。 ここでレンチンの魔道具の出番。 最後にレンチンをすることで、料理が仕上がるように 仕込んできたから、出来上がったばかりの 温かく美味しい肉料理を 頂くことが出来る。


「これは、うまそうだ。」


「うん。 いいお肉は、シンプルに焼く方が、美味しいと思ったんだよね。 ただ、焼いてから時間が経つと味が落ちちゃうから、仕上げは、レンチンにしたの。」


 うーん。 確かに美味しい。 これは、当たりだ。 ライリューンが来た時にも作ろっと。 一番は、焼いて塩で味付けるだけってことだね。 楽ちんだもん。


 もちろん、飲み物は、ワイン。 カヤオマ州産のゼンピョウ・エカ・ワカミ氏が作った マスカットベリーエックスの赤ワインだ。


「このワインを作ってるカヤオマ州なんだけれども、異常気象なんだって。 気温が30度を超える日が続くからって、収穫時期が おかしくなってるみたい。」


 ナカヨシと一緒に、カヤオマ州までワインやブドウを仕入れに行った話を しながら、ワインを転がしていると、アレックスが ため息をひとつ。


「はぁ、カヤオマ州かぁ。 私も行ってみたいな。」


「行こうよっ。そだ、ライリューンとか ライレーンとか、オリンピュアスも連れてさっ。 みんなで。」


「いや、2人きりがいいな。 馬を飛ばして。」


 そうだ。 もうずっと、アレックスと遠乗りも行ってない。 そう考えると、ずいぶん放ったらかしてるよね。 チョコ渡すの忘れたとかいう レベルじゃないかも・・・。


 そんなこんなで、ちょっと、気まずい思いをする場面もあったけれども、楽しい食事は終了。 お片付けをマーガレットに頼んだら、メインディッシュだ。


 といっても、食べ物じゃない。 そう、日本刀もどき。


 刀袋は、金糸と黒糸を使った紋織物。 縦の糸は、金色。横の糸は、黒色。織りなされた紋織は、ベルと、ブースケパレーが 並んで走っている姿をイメージしたもの。


「作るのに手間取って、ちょっと時間がかかっちゃったんだけれども、これ、アレックスへのプレゼント。」


 そう言って、刀を袋ごと渡す。


「これは、スゴイ。 ワサビニコフじゃないかっ。 作ったって、これを? アリーが作ったのか?」


 日本刀じゃなくて、ワサビニコフって呼び方なのね。 あっ、備前長船とか、関の孫六とか、兼長とか・・・ 地名や 刀工の名前で 呼ぶようなもの?


「いや、ワサビニコフさんと一緒に、材料から作ったの。 さすがに、刀を打つのとかは、ワサビニコフさんがやったよ。 私じゃ、無理だから。 でも、作り方は、分かったから、無理すれば、作れるかも? 分かんない。」


「いや、父上ですら、この水準の刀剣は持ってない。 おそらく、国宝ものだ。 アリー、嬉しいよ。 ありがとう。」


 良かった。 不安だったんだよね。 フィリップスの辻斬りのせいで、色々問題が起こって、ここまで疲れた顔してたから。 刀なんか見たら、余計に心労が、増えちゃうんじゃないかって。


 こうして夜は、更けていく。


 アレックスに、笑顔が戻った。 わたしも、嬉しい。 でも、笑顔には、あまり似合わない目のクマ・・・ そうだね。 最近、眠れていないんだよね。


 じゃぁ、わたしが、素敵な魔法をかけてあげる。 ちゅっと、アレックスに、口づけると、ベッドへ いざなう。


 ほら、大丈夫。 私に任せて。 ベッドの上で、アレックスに覆いかぶさるように、手を伸ばした。



 えいっ。



=== ===== === ===== ===



 スニップスのリン酸化は、ずっと眠れていなかった アレックスが、ぐっすり眠るための 助けになるだろう。


 おやすみ、アレックス。


 もう一度、ほっぺに口づけると、彼を起こさないよう そっと部屋から退室する。


 よーし、明日は、ライリューンが来るっ。



=== ===== === ===== ===

よく眠れている人は、高評価を押して次の話へ⇒



蛇足1.縦の糸は、ベル。横の糸は、ブースケパレー。



 ベルを殺しちゃったのは、いつかな?って、


 気になって見てみたら、2021年の7月28日。


 まだ、東京オリンピックやってた頃ですね。


 そこから、31日に、スニップスのリン酸化。


 カジノを作って、羊皮紙工房を移転させて、


 バイオエタノールを作り、ライレーンライリューンと別れて


 レンチン魔道具を作ったら、冷凍うどん。


 ハゴイタをして、2月に、占い・・・。


 あぁ、戦争が起こって、価値観が変わる年ですか。


 まぁ、北京オリンピックが終わったら、


 攻め込むだろうなとは、思って書いてましたから、


 ちょっとズルい感は、ありますけれども、


 今の状態を見ると、ハズレてほしかったなって


 改めて思います。


 

蛇足2.気になる


 

 マリウポリも気になる。XEも気になる。ルペンも気になる。


 NY地下鉄乱射も気になる。


 トヨタのEVも気になるし、ホンダのEVも気になる。


 その中で、川崎重工業とエアバスが、水素を燃料とする


 商用水素航空機のインフラ整備で連携するっていうのが


 気になります。


 トヨタのFCVと、エアバスの水素航空機が、リンクすれば、


 電気自動車優位の展開が、一気にひっくり返る可能性が


 見えた気がしました。どうなるんでしょうね。

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