表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
196/232

3-35.感じた違和感

顔を覆うのは、厚手のベール。


朝一番で、テレサさんの工房に行く予定だったんだよ。 ホント。


だけれども、そんなことが 出来なくなる大事件が 起こっちゃったんだから仕方ない。


たいへんな事態に気づいたわたしは、予定の変更を マーガレットに告げたの。


そして、わたしは、今、ナカヨシ研究室に向かう馬車の中。


じつは、目覚めた時から、なにか違和感を感じていたんだよね。 まぁ、でも、そんなことって よくある話じゃない? 起きた時の違和感なんて。


だから、気にせず洗面所に向かったの。 顔を洗おうと、ライリューン商会の 香りの液体せっけん「アリー」を泡立てて、鏡を見た瞬間・・・。




「あぁぁぁ、おっきな にきびができてるぅぅぅぅぅぅ。」




[美容師の娘]  【 3-35.にきびを治療しよう 】




チョコを大量に食べると、ニキビができる・・・ うん。知ってた。


おでこにできた、大きな赤いニキビが痛いっ。 ナカヨシーっ、うぅぅ。 今日は、わたし、研究室に引きこもる。


「そうじゃな。 アクニンの所に行ってみてはどうじゃ?」


アクニン? 誰、それ?


「美容の専門、ボギラス教授の所じゃな。」


そんな先生いたっけ?


「あぁ、王立 飛翔師 学院ではない。

 王立 美容師 学院じゃ。」


あぁぁぁ、そこ、わたしが行く予定だったところ。 行くっ。 なんなら、そのまま入学してもいいっ。


「それは、無理じゃな。 募集期間を過ぎておろう。

 まぁ、治るかどうかは分からぬが、行ってみるがよい。」


マーガレットを引き連れて、馬車でポクポクポク。 ベールのせいで、外が見えにくい。 でも、ちょっと、ワクワクするね。 美容師 学院って、どんなところなんだろう。


何にも分からないまま、馬車が、門を通り過ぎた。 あらら? 思ったより 小さい建物なんだね。


小さい建物の小さな門をくぐると、受付には、眼鏡をかけた おばあさんが、一人座っていた。


すみませーん。 ボギラス教授のお部屋って、どちらっですか?


受付のおばあさんは、声を一言も発することなく、壁にかかった 施設図を 指差した。


・・・自分で見ろ ってことね。 えーと・・・ 2階の奥の部屋っ。 マーガレット行くよっ。


アクニン・ボギラス教授は、とっても身長が高い人だった。 ひっつめた髪と、金色の眼鏡が特徴的。 わたしたちが、教授の部屋を訪れた時は、ちょうど 本棚に本を戻そうとところであった。


いや、ノックをして、入ろうと思ったんだけれどもね。 ドアが開いていたんだよ。




******************************




「失礼します。 教授。」


「あら? どなたかしら?」


「わたし、アリーと申します。

 飛翔師学院のナカヨシ教授より ご紹介を頂き参りました。

 皮膚の症状について、先生のお力をお借りしたいのです。」


「皮膚? どなたのご病気?」


「わたしです。」


そう言って、顔にかかったベールを取る。 おでこの、赤く腫れあがったニキビは、まだ、ちょっと痛い。


「あぁ、典型的な ニキビの症状ね。」


ボギラス教授は、わたしの おでこに触れながら、皮膚の状態を見ていく。


「これ、治りますか?」


「もちろん、治るわよ。

 ただ、どのくらいの期間で 治したいのかしら?」


「今すぐっ!」


もちろん、すぐだよ。 3秒で治してほしい。


「すぐは、無理ね。 わたしは、薬を作れないから。

 ナカヨシ教授の紹介状では、あなたが作るって書いているわ。」


えっ?ナカヨシ、そんなこと 全く言ってなかったけど・・・。


「治す方法は、あるんですか?」


「そうね。 そのお薬は、私では、作れないのよ。

 なので、自分で作って、治療してみる?」


「はいっ。 お願いします。」


こうして、わたしは、自分のニキビ治療のため、自分で薬を作るという なんだかおかしな仕事をすることとなった。



「クラメルぅ。

 ちょっと アレを持って来てもらえるかしら?」


ボギラス教授が、隣の実験室に 声をかけた。


クラメルと呼ばれた女性は、濃い赤色味のかかったで、銀色っぽい金属? それとも石かな?・・・を 手に持って、やって来た。


「閃亜鉛鉱よ。」


「せんあえんこう?」


「そう、あなたには、こちらの製錬をしてもらうわ。

 こちらに来てもらえるかしら?」


そうして、わたしは、ボギラス教授と、助手のクラメルさんと一緒に、実験室へと向かうこととなった。 うん、その石は、わざわざ持ってこなくても、実験室で披露してくれたら よかったんじゃないのかな?


実験室の真ん中に 置かれた銀色の石。


「これは、スーパーカミオ鉱山で取れた、亜鉛の石なの。

 まずは、これを精錬していくわ。」


精錬は、不純物の多い金属から純度の高い金属を取り出す過程。 だから、これは、石と呼ぶよりは、金属ってことかな。


「どっちも正しいわ。 鉱石だから。」


助手のクラメルさんは、ハンマーで、コンコンと石を叩きながら、解説してくれる。


「じゃ、焙焼から なんだけれども。」


ちょっと、それ、窯? クリスタルの時と同じ? やだよ。めんどくさいっ。


「はいっ。これが、焙焼済のものになります。」


なんだ、出来てるじゃない。 びっくりさせないでよ。


「何言ってるの。 これ、大変なのよ。

 廃液を流すだけで、川の色が変わっちゃうんだもの。」


か・・・環境汚染? ヤバくない?


クラメルさんは、そんな話をしながら、亜鉛分がだいたい半分くらいつまった亜鉛精鉱を、硫酸に溶解させて、硫酸亜鉛溶液を 手際良く作っていく。


「ここからが、ナカヨシ教授がいないと 出来ないのよ。

 こっちの金属の棒に、バチバチって してもらうの。」


バチバチ?


「そう。 カエルスモッグ博士の電気魔法ね。」


あぁぁぁ。 電気魔法、あったねぇ。 ただ、こんな狭い所で使うと、髪の毛ボーンって、なっちゃわない?


「だから、金属棒を握ってもらうの。

 ここに手を入れて、電気を通してもらえるかしら?」


クラメルさんは、金属棒につなげた 細い電線の線の先・・・ 電極を酸亜鉛溶液の中に入れて、準備を整えると、わたしにそう告げた。



バチバチッ・・・ バチバチバチッ



うわぁ。 痛そうな音っ。 この魔法は、音が嫌だわ。


わたしが、電気を発生させ、金属棒に電気を流すと、カエルスモッグ博士のスーパークリック・サニトリウムで聞いた、あのバチバチ音とともに、電気が電極へと伝わっていく。


あぁ、電極に 亜鉛がくっ付いていってるね。 そっか。この電極にくっついたものが、純粋な亜鉛なのね。


「このくらいで十分だわ。

 いいわね。 バチバチの魔法が、使える人がいると。

 簡単に亜鉛分99.99%に出来るから便利なのよ。」


そういいながら、クラメルさんは、電極から、ボロボロと 金属亜鉛を広げた紙の上に落としていく。


これって、洗わなくて、大丈夫かしら? 硫酸溶液に浸かってたんだよね?


「大丈夫よ。 もう1回蒸発させるから。

 この、純白金製のるつぼに、入れて加熱するの。」


プラチナ製? 高そうね。


「そうね。これ1個で、家が買えるわ。」


うわっ。 触るのが怖い。


「じゃぁ、加熱してちょうだい。」


るつぼを、溶解用の炉にセットすると、金属亜鉛を、その中で融解させる。 1000度ほどに加熱すると 気化するので、これを燃焼させ、空気と反応させると、煙霧状の酸化亜鉛が生成しているはずだ。


この煙霧を、風魔法で急冷すると、酸化亜鉛は、微粒状となる。 出来た微粒に、風魔法で、回転運動を与える。



クルクルクルクルクルッ。ピューン。



るつぼから、固体微粒子を取り出し、金属の筒の中を通す。 風魔法で、回転させつつ かき混ぜながら、下へ移動させて、最下部で反転させて上昇させる。 出口にたどり着く頃には、微粒は、重力の数百倍という遠心力で分離され、きれいで サラサラの酸化亜鉛が、出口管から 飛び出てくるというわけだ。



「もう、じゅうぶんよ。 思ったよりも、早かったわね。

 それに、いつもより きれいにできたわ。

 さすがナカヨシ教授の秘蔵っ子ね。」


クラメルさんの広げた紙の上には、高純度酸化亜鉛。 白い粉末状が、大量に山盛りになっている。 うん。 わたし、出来る子だ。



=== ===== === ===== ===



一息ついて、ひたいの汗をぬぐう。


「イタイっ。」


あぁ、そうだ。 わたし、酸化亜鉛を 作りに来たんじゃなくて、おでこのニキビを 治しに ここに来たんだった。



=== ===== === ===== ===

毎日、制服を着ている人は、高評価を押して次の話へ⇒



蛇足1.制服と貧困


 4月1日から、18歳が成人年齢になりますよね。


 それを踏まえて、岐阜の高校で、制服を廃止して、


 私服で通学できるように校則を変更したそうです。


 成人として服装を自分で考えて判断することが


 目的らしいですが、制服の隠れた目的って、


 毎日の服を用意できない貧困状態の場合でも、


 周囲と同じ服装が出来るということなんですよね。


 どっちかっていうと、そっちを重視したほうが


 いいような気がします。


 服なんて、学校の外で楽しめばいいですし。




蛇足2.Jリーグと株式


 Jリーグのクラブチームが、株式上場OKとなったそうです。


 株式といわれて、一番に名前を思い出したのが、英国の


、マンチェスター・ユナイテッド。


 経済的にバランスよく優れたチームだったのですが、


 2003年から2005年にかけて、株式を買い集められ、


 グレイザーさんという人に買収されてしまいます。


 その方法が、レバレッジ・バイアウト。


 購入のために支払った金額は、7億9000万ポンド。


 ただし、自分で用意したのは、2億7500万ポンド。


 残りは借金です。


 借金の担保は、マンチェスター・ユナイテッドの資産。


 これから購入するクラブチームを担保にして、借金した


 んですね。


 チームに、借金を負わせて、チームの売上げで、借金を


 返す手法です。この買収、その後、チームの凋落が


 始まったため、余計にイメージが悪いですね。


 そんなことが起こりそうな気がして、株式上場は


 しないでほしいなぁって思います。



蛇足3.6月までに


 そんなJリーグの1つ下というべきでしょうか、


 JFLの鈴鹿が、金銭の不適切処理の問題で、


 Jリーグ参入資格をとめられたそうです。


 カズ選手が移籍したとたんこんな問題が起こるって、


 悲惨です。


 ただ、 6月までにクラブのガバナンス体制が


 改善されたら資格停止を解除してもらえるそうなので、


 なんとかスポンサーをつけて乗り切って欲しいです。



蛇足4.6月に


 6月と言えば、ロシア政府系の天然ガス企業ガスプロムの


 取締役に、ドイツのシュレーダー元首相が入る予定


 なんですよね。6月に株主総会で決定するそうです。


 必要な天然ガスの半分程度を、ロシアのガスプロムに


 依存しているんですが、ちょっと気になりますね。


 ちなみに、日本は、石油4%、天然ガス8%の依存ですが、


 イギリスの大手石油会社シェルがロシアの石油天然ガス開発


 サハリン2から撤退することになったので、日本の大手商社も


 プロジェクトから撤退せざるを得ないかもしれません。


 そう考えると、依存度は、下がりそうですね。


 価格は上がりそうですけれども。あぁ、また値上げですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ