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3-28.ナカヨシ教授の指導は厳しい

「違うっ。 細断ではなく、粉砕じゃ。

 粉々に せよっ。」


ナカヨシ教授の指導は、厳しいのですわ。


わたくし、このような内容の講義は、受けたことが ありません。


V字形・・・舟形にくぼみのある金属製の器、「薬研」に 刻んだ木の根を入れます。


それを、軸の付いた車輪状のひき具「薬研車」で、ゴリゴリとすりつぶすのです。


手の平は、痛いですし、そもそも、粉状になんて、そう簡単になりません。


アリーは、一体 どうやって この厳しい指導をこなしてきたのでしょう?





[美容師の娘]  【 3-28.オリンピュアスの受難 】




ライリューンの旦那の薬となる薬草を採りに、アリーたちは、山へと向かいました。 フィールドワークが ご専門の、セキアキ教授は ともかく、マリーは、子爵家の娘。 山登りなど できるのでしょうか?


心配ですわ。


そんな思いもあって、わたくしは、ナカヨシ研究室を訪ねることと いたしました。 ナカヨシ教授に、薬草採取が、どの程度のものかを お聞きするためです。


カチャリと、研究室のドアを開けます。 奥の実験室に灯りが ともっているようです。 不思議なことに、ナカヨシ研究室では、火を使わなくとも 灯りをともすことが出来るのです。


おそらく、教授の魔法道具でしょう。


「おぉ、良いところに。 オリンピュアスじゃったな。

 今、胃薬を作っている所じゃ。 ここは お主にまかせよう」


ちょ・・・ お待ちくださいませ。 薬草をアリーたちが、取りに行ったのでは ありませんこと?


「いや、あれは、胃の痛み止めの薬草じゃ。

 普段に飲む胃薬の生薬は、揃っておる。

 これを、今から作るのじゃ。」


採取のための山登りについて、話を聞く間もなく、実験室の棚から、薬草の入った箱が、ドンドンドンッと 実験台の上に置かれていきます。 そして、そのままナカヨシ教授は、どこかへ行ってしまいました。


仕方ありません。箱を手に取り、中から植物を取り出していきます。


オウレンと書かれた箱から取り出されたのは、植物の根っこような植物。


オウバクと書かれた箱から取り出されたのは、木の皮を剥がしたような植物。


ナカヨシ教授から、砕くように指示を受けたのだけれども、どのくらいの大きさに砕けばいいかが、全く分かりません。


それでも、頑張って 2つの植物を 1つずつ丁寧に 小さなナタのような刃物で、叩くように刻んでいきます。


「これで よろしいのかしら?」


とりあえず、オウレンの根が刻まれた山と、オウバクの木くずのようになった山が 出来ました。



「ケイヒ?」


これも、木の皮のようですね。 ナンバーワンケイヒと書かれた箱から、木の皮を取り出すと、これも、トントントンと、砕いていきます。


すると、シナモンのような良い香りが漂ってきました。 というよりも、シナモンですわね。 これは。



チョウジという箱に入っていたのは、茶色い小さな棒。 人生ゲームの駒のように、頭もついています。


これも、丁寧に砕いていきましょう。


あぁ、これは、アレですわ。 アリーが、ワインに加えていた香りの素。 このチョウジという植物から、あの香りを 取り出していたのですね。



ウイキョウの箱には、フェンネルが入っていました。 これを潰すと甘い香りがしてきます。 良い香りですわ。


あっ、このショウキョウというものは、生姜を乾燥させたものですわね。 匂いで分かります。 えーと・・・ こちらのキジツと書かれたものは、乾いたミカンの皮かしら?


とりあえず、こちらも潰しておきましょう。


なんですの? このボレイというものは? 貝殻ではありませんか。 これは、砕くことが出来るのでしょうか?


あら? 叩くと 案外、簡単に 砕けていくものなのですわね。 トントントンと叩くと、簡単にバラバラにすることが 出来ましたわ。


全ての薬草を潰し終わり 後ろを見ると、いつの間にか 教授が 戻って来ていらっしゃいました。


「教授。 これで、よろしいでしょうか?」


「違うっ。 粉砕じゃ。 粉々にせねばならん。

 こちらの薬研を使うがよい。」


薬研は、その中に薬草を入れて すりつぶすための舟形の溝を彫った受け容器と、中央に握り手の部分となる軸を通した円盤状のひき潰すための車輪からなる 磨り潰しのための道具です。



って、わたくしが、これを全部すりつぶすのですか?


ゴリゴリゴリ・・・ゴリゴリ・・・。


腕が痛いです。 いくら すりつぶしても、終わる気がしません。


アリーは、一体どうやって、このような作業を こなしていたのでしょうか?


すべての薬草を潰し終えて サラサラの粉にしたときには、もう 日は 傾いていました。


「うむ。 これならば、すぐにでも使用できる。

 では、その効果を説明していくので、筆記せよ。」


え? まさか、まだ終わりではないのですか?


「この薬草の組み合わせは、根本を 治すためにあるのじゃ。

 ストレスを感じると、交感神経が 過敏になる。

 これを押さえるための薬草が、芳香性健胃生薬じゃ。

 すりつぶす時に 良い香りがしたであろう。

 これらが、副交感神経を優位にし、胃の働きを助けるのじゃ。」


えーと・・・。 何を言っているのか、全く分かりませんわ。


「あとは、カルシウムじゃ。

 カルシウムを摂取することで、胃酸を中和する。

 それに加えて、カルシウムには、ストレス緩和作用がある。

 ボレイと書かれた箱の 貝殻を潰したであろう。

 あれが、その働きをするのじゃ。」


あっ、それは、分かりますわ。 粉々になるまでゴリゴリと、すりつぶしましたもの。


「そして、オウレンと、オウバクじゃ。

 これらは、苦味の健胃生薬と呼ばれる薬草じゃ。

 2つは、胃の炎症を鎮める働きがある。

 それに加えて、苦味を感じると胃が収縮するのじゃ。

 これで、動きの悪くなった胃を活発に動かすことが出来る。」


えーと・・・ 木の根っこと、木の皮ですわね。


「そして これらを 混ぜたものが、これじゃ。」


大きなガラス容器に、茶色がかった白い粉が詰まっています。 なるほど、これで 胃薬が 完成したのですわね。


「だが、このままでは、ダメじゃ。」


はい? 完成したのでは ないのですか?


「そうじゃな。 良く混ぜる必要がある。

 よいか、色が均一になるまで 良く混ぜるのじゃ。

 わかったな。 オリンピュアス。」


いやぁぁぁぁぁぁぁぁ。 帰らせてくださいまし。 寮で、エウリュアさまが待っていらっしゃいますの。


っていうか、護衛として、こちらの研究室に一緒に来てもらうべきでしたわ。


え? バタンって・・・。 扉が閉まりましたの? うそ・・・廊下が暗いですわ。 ちょっと・・・ ドアが開きませんわ。


だれかぁぁぁぁぁぁ。



=== ===== === ===== ===



翌日の朝、勇者草を持って研究室に帰って来たアリーが見たのは、ガラス容器を抱いて眠るオリンピュアスであった。


めでたし めでたし。



=== ===== === ===== ===

カンニングが得意な人は、高評価を押して次の話へ⇒


蛇足1.袖に隠して


 なんでしょうね。


 頭のいいバカ?


 人に頼んだら、足がつくのは、想像できそうです。


 ですので、知らない東大生に頼むのは、すぐばれる


 のは、ちょっと考えたら分かりそうなものです。


 カンニングをする手口は、上手いものを考える。


 その後どうなるかを考えない。


 そんな感じを受けました。


 袖口に画したスマホで、大学入学共通テストの


 世界史の問題用紙を撮影して家庭教師紹介サイトの


 東大生に解いてもらう。


 手口は、いいけれども、即バレる。のは


 分かりそうなものなのに・・・・


 去年、既に大学に受かって通っているけれども、


 東京の別の大学を目指すために行ったらしいですが、


 下手したら、今の大学もダメになりそうです。


 追い込まれていた。ということでしょうか?


 分かりませんね。




蛇足2.そもそも・・・


 試験会場の連絡用には、有線の連絡用の通信機器を


 用意して、試験中は、通信を妨害する電波を発生させておけば、


 こんな手口、上手くいくわけないんですから、


 使わせない工夫が、欲しいです。



 そうです。私がやるなら、髪を伸ばして、

 

 Google Glassのような眼鏡型のものに、


 データを詰め込んで、ネットにはつながず、


 髪で眼鏡を隠しつつ、なるべく下を向いて・・・


 あっ、そういえば、カンニングしちゃダメですね。


 忘れてました。

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