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3-21.新春ハゴイタ選手権1

赤土のコートに 風が吹きつけるたびに、小さな土が舞う。


オリンピュアスのサーブ。


鋭いサーブが、相手コート 左に打ち込まれた。


相手の後衛が、フォアハンドで 強く打ち返したその羽を、ネット前で待ち受ける。


そう、わたしは、前衛だ。


羽は、私の頭の上を大きく超えて、ふわりと オリンピュアスの方へと飛んで行く。


スマッシュっ!


羽を掴むように 左腕を 上げて 位置を確かめた オリンピュアスは、空中に浮く羽を相手コート右隅に打ち込んだ。


バシュッ!


決まったっ。 1回戦突破。


いやぁ、終わったーって思うでしょ?



まだ、終わってないのよね。 ハゴイタだけに・・・。



わたしたちの前に 用意されたのは、バケツにあふれそうな墨汁・・・。


筆は、自分で持ってきているからねー。


対戦相手の女の子たちの顔に べっちょり バツの字を 書いて、おつかれさまー。




[美容師の娘]  【 3-21.母の優勝トロフィー 】




ライリューン商会、新春ハゴイタ選手権。


会場は、奇妙な熱気に包まれていた。


それは、賞金の白金貨2枚だけのせいではない。


優勝トロフィーの横に置かれた 小さな小瓶。


ライリューン商会のナンバリング香水『ライリューンNo.5』が、2つ・・・ガラスケースに囲まれて鎮座している。


『No.5』は、その希少性から、大貴族や、高位の聖職者、かなりの大商人でないと、手に入れることはできないと言われている。


それが、この大会の優勝ペアに与えられるというのだ。


これには、世の女性が目の色を変えた。


去年の参加は、32組であったが、今年は、512組。


予想以上に、人数が増えすぎたせいで、大会は、急遽、室内から 赤土のコートへと 場所を変えて行われることとなった。



「アリー。絶対、優勝しますわよ。」


「ちょっと、オリンピュアス。

 『No.5』なら在庫だけでタンク2個分あるから。

 必要だったら、分けるよ。」


「アリー。 違いますわ。

 あの優勝トロフィーが必要ですの。」


「えっ? あの変な形のトロフィー?」


優勝者に与えられるトロフィーは、大理石の台座の上に、鉛をベースに、アンチモン、錫を混ぜた合金で作ったモノだ。


「あの形は、20年前から変わっておりませんの。

 わたくしの母が、優勝した年も あの形でしたのよ。」


うん、確かに作るのは、大変だったね。



去年までは、アタリヤ商会が運営していたこのハゴイタ選手権も、今年からは、ライリューン商会の管轄。


賞金も、金貨200枚から、白金貨2枚に増額。


そして、優勝トロフィーは、用意するのが大変だったのよね。


前のトロフィーを作ってた技術者さんが、いなくなってたから。あのカジノ騒動の時に。


なので、王都の美術学院の生徒さんに、去年の優勝者のお家まで行ってもらい、トロフィーのイラストを、いろんな角度からスケッチさせた。


あっ、ちゃんとバイト料は、払ったよ。


で、鉛と錫、それにアンチモンから作った合金でその形を成型。


成型は、イラストを元に、木枠をアンターナッハ商会で作ってもらって、それに溶かした合金を流し込んで、きれいにやすり掛けしてもらった。


それを、切り出した大理石の台座に根元から埋め込んで、接着したら完成。


だから、わたしがやったことと言えば、合金を作ることだけだった。


でも、ライリューンが居ないから、鉛78%、錫2%、アンチモン20%っていう合金の比率を見つけるのに、2日もかかっちゃったんだよね。


まぁ、重量感があるのに、低融点で柔らかいので加工しやすくて、とっても使いやすい合金ができたから、他でも使えそうなので良しとしよう。



「わたくしが、まだ小さい頃の話ですのよ。

 そのトロフィーを、落として壊してしまったのです。

 その時の母の悲しそうな顔が、忘れられないのですわ。

 アリー。絶対、優勝してカップを持って帰りますわよ。」


いやいや、何が楽しくて、自分が作ったトロフィーと、自分が作った香水と、自分が出した賞金を取るために、ハゴイタをしなきゃダメなのよ。


それに、前の優勝トロフィーは、銀製だけど、今回のは、見た目は銀色で重さも同じくらいなんだけれど、合金だよ?


全然、違うものだと 思うんだけどなぁ。



1回戦を 勝ち抜いたオリンピュアスは、私の言葉には耳を貸さず、大きなトーナメント表を バサリと広げて眺める。


「あと、9回勝たなくては、いけませんわね。」


え? 9回もこれやるの? 勝ち残り式トーナメント方式でも、9回戦って、結構キツいよ。


「あの子たちは、向こうのブロックですわ。」


子爵家の令嬢たち、マリーとコンスタツァ、マリアとジョゼフィーヌの2組のペア人は、トーナメントの逆側に配置されたみたいだから、もし、対戦するとしても、決勝戦ということになりそうだ。


出場選手の控室では、甘酒が飲み放題。お雑煮が食べ放題。


虎の絵が かわいい マグカップを 手に取り、マーガレットに、甘酒を注いでもらった。


ぐびぐびと、あったかい甘酒を飲みながら、思う。




=== ===== === ===== ===



オリンピュアスのお母さんのトロフィーを、私が直した方が、早いんじゃないかなぁ・・・。



=== ===== === ===== ===

お雑煮のお餅をのどに詰まらせた人は、高評価を押して次の話へ⇒



蛇足1.小笠原


 午前6時9分ごろ、小笠原の母島で、震度5の地震。


 あるだろうなとは思っていましたけれども・・・。


 実際にあると、怖いですね。


https://ncode.syosetu.com/n7237hj/45/

 小笠原諸島、八丈島、浅間山みたいな流れで、

 噴火とか、地震があるイメージがありますので、

 小笠原諸島・福徳岡ノ場の噴火と、軽石の漂着といった

 話題から、八丈島まで引っ張ってみました。



蛇足2.しぶんぎ座


 1月4日、午前5時、しぶんぎ座流星群が極大に!


 ・・・見逃しました。


 冬の童話祭2022のテーマは、流れ星。

 いいネタでしたのに、惜しかったです。

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