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3-08.オリンピュアス、ちょっと自制しようね。

第二王子フィリップスは、沈鬱な気分を 吹き飛ばすかのように、愛馬トリプレットターボに乗って 駆けていた。


全くもって 気に入らない・・・。


ボクが望むヘドファン家のアリーは、手の早い兄に、かっさらわれた。 出会ったのは、自分の方が 早かったはずだ。 あの時、婚約を 申し出るべきだった。 陰鬱な表情で、フィリップスは 唇を噛む・・・。


しかも、自分の婚約者に決まったのは、兄の捨てた オリンピュアス。 いや、別に捨てたわけではないだろうが、あの女は、子供のころから、兄の婚約者になるだろうと 育てられていた娘だ。 そして、極めつけは、男の影だ。 なんと、飛翔師兵学院の寮に、男を連れ込んでいると いうではないかっ。 なぜ、そのような女を、ボクが 妻としなければ ならないのだっ。


馬の足を止める。


あまりに早く駆けたため、一緒についてきていた馬廻りの姿が 見えなくなっていたからだ。


馬廻りは、騎馬の武将で、王子に付き従う。


戦時には、護衛や伝令、そして 決戦時の兵力として用いられる 王子の最側近であり、平時には、王子の護衛となり 事務の取次ぎなど 吏僚的な職務を果たす。文事、武芸に秀でたものが 集められたエリートであり 親衛隊と言える存在だ。


街道の横に流れる小川に馬を寄せると、トリプレットターボが、口をつけ 喉を鳴らした。


ん? 子供か?


「お兄ちゃん、そんな顔してたら、女の子にモテないよ。

 ほら、このリンゴをあげるから、笑おうよ。」


リンゴを差し出しながら、少女が くだらないことを言って 近づいて来る。



腰の剣を抜く。 無銘の安物の剣だ。 切れ味も良くない。


なので、この結果は仕方ないだろう。 そもそも、両断というのは、技量の優れた剣士が、名刀を用いて やっと行えるもので、このような 安物のナマクラの剣では、剣聖 ででもなければ、両断は 難しいだろう。


子供の割れた頭を見下ろす。


ふんっ。 普段の剣を使えば、両断できたはずだっ。


飛翔師兵学院への入学祝いに もらった 母の実家に伝わる剣は、魔剣だ。 魔力を込めると、切れ味が増す。 まぁ、証拠を残すわけにはいかないので、自分の物を使わずに、側近に武具を扱う店で購入させた 安物を使っているだけだ。


血に汚れた剣を 投げ捨てる。 くだらないっ。 あぁ、馬廻りの姿が、見えてきた。 もう、待たなくても良いだろう。


ボクは、トリプレットターボの腹を蹴り、再び 馬を駆けさせた。




[美容師の娘]  【 3-08.王子狂乱 】




「きゃああぁっ!」


その悲鳴が、遠くの方から聞こえたのは、アレックスの唇が、わたしの頬に 触れた時であった。


「・・・え?」


わたしの乗る小さな馬・・・ ブローは、悲鳴に驚いたのか 急に走り出そうとしたので、私は慌てて ブローを落ち着かせようとした。 だけれど、ブローは、何度も首を振って、声とは反対の方向へ逃げようと暴れた。


「・・・大丈夫よ。 落ち着いてっ。」


必死になだめたけれど、ブローは 止まらない。 怯えているようで、ついには、わたしを 振り落として 走りだしてしまった。


もちろん 私は、地面に叩きつけられたりせず、風魔法を使って、りんごの木の横に ふわりと着地したし、ブローは、アレックスが 追いかけて 捕まえてくれたのだが・・・。


「アリーっ。

 あの悲鳴が、少し気になる。 ここで待っていてくれ。」


アレックスは、私に ブローの手綱を渡すと、黒馬・・・ブースケパレーの腹を蹴って、悲鳴の方へと 駆けて行ってしまった。 その背中を見送りながら、考える。


護衛の人たちが 追い付いて来るまで、待った方が よかったんじゃないかしら? んー・・・ ブローは、怖がっているけれど、私も ついていった方が、アレックスを 一人にするよりは、まだマシかも しれない。 悩んでいる間にも、時間は経過する。 彼は、第一王子。 王位継承権1位の人間。 その身に何かあっては、取り返しがつかない。


わたしは、仔馬の首筋を撫でると、アレックスの向かった方向へと 歩かせた。 本当は、駆けさせたかったんだけれど、臆病な ブローが、走ってくれなかったのだ。


そして、たどり着いたその場所には・・・ 無残にも斬り捨てられた 小さな子供の姿。


アレックスの声が響く。


「答えろっ。何が起こったっ!」


私が追い付いた時には、既に、アレックスと、フィリップスの馬廻りとが 対峙していた。


そう、泣き虫王子・・・ フィリップス。 そこに居たのは、第2王子フィリップスの 馬廻りと 呼ばれる側近たちであった。


しかし、フィリップスの姿は無い。


私が追い付いてきたことに、気が付いた途端、アレックスの顔から 表情が消えた。 いつも笑顔でいる分、こういう顔を見ると、少し怖い。


「状況を説明しろっ。」


アレックスが、馬廻りたちを問い詰める。


「何があった!」


「はい。我らは命令により、この地に待機しておりました。

 そこへ 突然、見たこともない魔物が現れ、この子供を・・・。


「ほう、その魔物は、両刃を使うのか?」


アレックスは、地に落ちている 血の付いた両刃の剣を アゴで指した。 あぁ、おそらく子供は、この剣で切られたのだろう。


「何があった。 正直に話してみろっ。」


「わ・・ 私が この子供を切りました。」


「ほう・・・。」


「我々が待機しておりますと、この子供が現れたのです。

 突然、子供は、王国を事を馬鹿にした発言をしました。

 なので、少し懲らしめてやろうと 思いました。」


「それで?」


「そうしたら、この子供が いきなり暴れ出して・・・。」


「嘘は、つくな。」


「嘘など、ついておりません。」


「地面についている、その馬のひづめの跡だ。

 蹄鉄の形は、、フコル・ルッカラ・ディブリアと同じもの。

 ディブリア家の蹄鉄であろう。

 とすると、パオラ妃か、フィリップスが居たはずだ。

 お前たちが居るということは、フィリップスであろう。」


第2王妃 パオラ・ルッカラ・ディブリアは、貴族フコル・ルッカラ・ディブリアの娘。 第2王子フィリップスの母親だ。


「王子は、おりませぬ。

 偶然、似た形のひづめの痕跡が あっただけでございましょう。

 とにかく、不敬があり、この子供を切りました。」


「そうか・・・。」


その時、パカパカと言う音とともに、アレックスの護衛の騎士たちが 追い付いてきた。


どうやら、リンゴの木の場所に、わたしたちが 居なかったため、辺りを 探し回っていたらしい。 騎士たちは、アレックスに近づくと、、何があったか 理解したかのように、フィリップスの馬廻りたちを 取り囲んだ。


「この者たちを、とらえよ。」


「アレキサンドロス殿下、それは、横暴でございます。

 私どもは、フィリップス殿下の臣です。

 なれば、第二王子家臣の 不逮捕特権があるはずです。」


「それは、罪が 推定されていない場合だけだ。

 第一王子である私は、王都警備職にある。

 当然、私の護衛騎士は、王都衛士も兼ねる。

 罪のあることが 推認できる者を 逮捕するのは当然だ。」


「何を おっしゃいますか。

 平民に不敬があれば、切るのは当然ではありませんか。

 それは、罪では ございませぬ。」


「お前たちは、最初、魔物が出たと言ったではないか。

 虚偽の証言を、王都警備職の私に告げたのだ。

 証人は、ヘドファン家の令嬢だっ。 何か不足はあるか?」


「・・・。」


フィリップスの馬廻りたちは、下を向いて黙り、わたしは、王子の護衛たちが 彼らを縛るのを見ながら、アレックスに近づいた。


「アレックス。 これは、何が起こってるの?」


「しばらく待て。 王都から、応援が来る。

 この者どもを、拘置所に送ってからだ。」


アレックスは、厳しい顔をしたまま、何も教えてくれない。 わたしは、身柄移送のための みすぼらしい護送馬車が やって来るまで、ブローに乗って、辺りをウロウロして 時間を潰すことになるのだった。


「アリー、すまなかった。

 さすがに、フィリップスの臣下の処置だ。

 人任せにするわけには、いかなかったのだ。」


うん。 分かってるから、大人しくしてたんだけどね。 でも、なんで、フィリップス王子の家来が、子供を 切り殺さなければ ならなかったんだろ?


「いや、あれは、フィリップスが やったことだろう。

 でなければ、あの者が、自分がやったとは言わぬ。

 最近、王都では、辻斬りが多発している。

 すこし、見回りを厳しくしたので、郊外に出たのだろう。」


はぁ? 辻斬り? あの泣き虫王子、そんなことを してるの?


「情緒不安定に なっているようだ。

 どうやら、婚約者の悪いうわさが飛び交っているみたいだな。

 オリンピュアスだ。

 どうやら、彼女が、男を 寮に連れ込んでいるらしい。」


そ・・・そう。 初耳ね。 うん・・・。 まったく 全然 これっぽっちも、聞いたことない話だわ。 ・・・頭に浮かぶ エウリュアと オリンピュアスの姿を、手を振って 打ち消す。


「ん? アリー、なぜ 頭の上で 手を振っている?」


「いや、何でもないよ。 虫が、飛んでただけ。」



=== ===== === ===== ===



あぁ、ちょっと 大変なことになってるよ。 自重しよう 自重。


王都での 数少ない友人・・・オリンピュアス。 ライレーンと ライリューンは、王都から 居なくなっちゃったからねぇ。


はぁ・・・。


わたしは、再び、友人と その護衛を 思い浮かべ、ひとつ ため息をついた。



=== ===== === ===== ===

Ϝ Ϛ Ϻ Ϙ Ͳ Ϸを読める人は、高評価を押して次の話へ⇒



蛇足1.


Α α アルファ

Β β ベータ

Γ γ ガンマ

Δ δ デルタ

Ε ε エプシロン

Ζ ζ ゼータ

Η η イータ

Θ θ シータ

Ι ι イオタ

Κ κ カッパ

Λ λ ラムダ

Μ μ ミュー

Ν ν ニュー

Ξ ξ クシー

Ο ο オミクロン


Π π パイ

Ρ ρ ロー

Σ σ シグマ

Τ τ タウ

Υ υ ウプシロン

Φ φ ファイ

Χ χ カイ

Ψ ψ プシー

Ω ω オメガ


文字が足りなくなりそうで不安・・・


Ϝ ϝ ディガンマ

Ϛ ϛ スティグマ

Ϻ ϻ サン

Ϙ ϙ コッパ

Ͳ ͳ サンピ

Ϸ ϸ ショー


あぁ、まだありますね。使っていない文字が・・・



蛇足2.エイズを引き起こすウイルスの排除


 2021年11月8日に、


 霊長類医科学研究センターの研究グループは、

 日本BCG研究所と共同で、

 アジュバント分子組み込み弱毒ウイルスを用いて、

 エイズウイルスを生体内から完全に排除することに成功


 エイズウイルスワクチンを接種したカニクイザルでは

 強力な細胞性免疫が誘導され、強毒エイズウイルス株

 SHIV89.6Pを感染させたところ、強毒性エイズウイルスが

 完全に排除・・・


 BCG研究所の名前が、かっこよすぎます。 


 そういえば、全く関係ない話ですが

 BCGを打っていたら、

 新型ウイルスにかかりにくいっていう話は、

 どこに行ったのでしょうか?


 まったく全然これっぽっちも、

 関係なかったのかもしれませんね。

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