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2-123.魔法でティッシュを作りましょう

積まれたチップが、ドンドン熔けてゆく・・・。


VIPルーム、『バカラー9』のテーブルに、ちょび髭の男が座る。 ビッグキング羊皮紙社の会長カタト・モワ・カイ氏である。 張りは、すべてマックスベット・・・。 賭けられる 最大のチップを、毎回の勝負に賭けている。


初回の、カジノ体験が悪かった。


友人に連れて来られた ライリューンカジノで、元手の100枚の金貨が、2000枚まで増えてしまったのだ。 「よくあるパターン」であり、「よくないパターン」である。


このことで、彼は、泥沼に はまった。


時間を見つけては、カジノに入り浸るように なったのだ。 手元に、現金があれば・・・ 少しでも時間があれば、カジノへと来てしまう。 もうお金や時間ではなくて、心の問題だ。 1回勝つまでやめられない。 勝ったら 勝ったで やめられない。 泥沼である。


『バカラー9』カジノゲームの中でも大金が動く。 よって、ライリューンカジノでは、これを楽しむ人たちを VIP待遇でもてなす バカラ専用の部屋を用意しているが、カタト氏は、その名にふさわしい VIP中のVIPであった。


スリリングで人を引き付ける『バカラー9』は、カードの合計数字の下一桁が『9』に近いほうが勝ちというシンプルさが 面白く、カジノの王様と呼ばれている。


彼は、このゲームで、ビッグキング羊皮紙社の社名にふさわしい 豪胆な賭けを繰り返す。


バカラーテーブルでの1回の張り。 最初に連れて来られたころは、金貨数枚ほどの かわいい賭け金で あったものが、今では、1000枚単位。 彼は、一般のロビーでは、見ることのない 白金貨のチップを 用いるようになっていた。 勝てば、白金貨チップの山となり、そして負ければ、実際の白金貨が 熔けていった。


今日は、もう、いけないな・・・。 今日も20回ほど、勝負をし、熔かした白金貨は、100枚ほど。 資金が、尽きそうになっていたのだ。


「すまないが、責任者か、オーナーに会いたい。」


彼は、側に待機していた、カジノスタッフにそう告げた。




[美容師の娘]  【 2-123.ティッシュの国の王子様 】




「いやぁ、今日も 白金貨のワインに なりそうですね。」


「いや、こっちはチェイサーだ。 和らぎ水だよ。

 飲んでいるのは、こっちのシングルモルトだ。

 次は勝つ。」


声をかけてきたのは、ハゴイタ競技の世界王者、トンケータ・モモである。


このチャンピョンと 私の間では、しばしば『高価なワイン』の話題がでてくる。


ライリューンカジノは、いい酒を置いてある。


スコッチ、バーボン、あるいは、最高の状態の高級ワインと、それにあう素材重視の料理。 出てくる料理だけを見れば、プライベート感覚に近い隠れ家のようなレストランだと 思うかもしれない水準である。


バカラーのテーブルについてしまえば、これらの料理やアルコールは、全て無料。 どんな高級なものも、飲食は一切、カジノ側のサービスであった。


つまり、トンケータの言う『高価なワイン』の『高価』とは、熔かした白金貨のチップを指している・・・ うまい そして、皮肉な言い方だ。 もちろん、トンケータが、私ほどの金額を 熔かしているとは思わないが、少なくとも そこそこの負け 以上であることは、よく分かる。



「あぁ、熔ける・・・」


張った最後のチップが、ディーラーの手によって回収された。 その時であった。


「お呼びと伺いましたが、いかがされました?」


2人の女性・・・そして、フロアマネージャー。 女性は、少女と言っていい年齢だろう。 何者?


「オーナーのアリー様でございます。」


フロアマネージャーのJ・ヘラームズ氏が、紹介する。


若い・・・と言うより、幼い。 こんな少女が、経営しているのか? このカジノは・・・。


借金を申し込もうと思ったのだが、少女相手に申し込むとなると、ちょっと言い出しにくい。


私が口ごもっていると、トンケータが、空気を読まずに、軽く頼み込んだ。


「シャク を お願いしたいんだけど、いける?」


シャクは、『借』である。 借金の申し込みに、これほど 単刀直入な言葉が あるだろうか?


「シャク?」


少女は、首を傾げて、ヘラームズ氏を見つめた。


「アリー様。

 手元が不如意になった際の、お手伝いのことでございます。

 お手伝いを 差し上げても、よろしいでしょうか?」


「あぁ、ヘラームズさんが、大丈夫って思うならいいよ。

 わたし、そういうの良く分かんないし・・・。」


「では、私も、お願いします。」


トンケータが、切り込んでくれたおかげで、私も借金を頼みやすい。 ヘラームズ氏が、カジノスタッフに 手を振るだけで、100枚ほどの白金貨のチップが、私の手元に・・・。 トンケータの手元には、金貨のチップが、これも100枚ほど 届いた。


「あっ、そうだ。

 カタトさんの会社って、植物紙を扱ってるんだよね。」


「そうですね。

 こちらにも、ティッシュを納入させてもらっています。」


ティッシュは、今年になって私の会社、ビッグキング羊皮紙社が作り出した素材だ。 当時、我々の会社は、羊皮紙業界3位であったが、斜陽産業で国際競争力もほとんどない羊皮紙を扱う会社である。 国際競争にさらされる 素材産業で、最終的に 生き残ることが出来るのは、2位までであろう。 イグジット・・・大手に株式譲渡してしまうのも、一つの手であった。 しかし、別の手としては、素材を開発し、新たな市場を生み出すという方法もあったのだ。


私は、新素材ティッシュを生み出した。


作り方は、簡単だ。


まず、小さく粉砕した木片から、植物紙の原料となるパルプを 生産する。


木片の作成だが、これは、サイズや、厚みを揃える必要があり、木魔法と、風魔法を使う必要がある。アルバイトの魔法使いを使い、原料チップ(木片のをチップと言う)は、ある程度簡単に集めることが出来た。


巨大な釜の中に チップと 薬品(これは、飛翔師学院のナカヨシ教授の作った薬である)を放り込み、170度ほどのの高熱で処理する。 樹脂のリグニンを溶かし、繊維分を取出すのだ。 火魔法を使うことが 出来る人間さえ 集めることが出来れば、簡単な工程である。


取り出した粗パルプを、洗浄器の中に通して、異物を除去し、洗い流す。


洗浄を行った後は、酸素漂白処理だ。


できた洗浄後の粗パルプから、酸素を使って、釜での熱処理工程でも残ってしまう樹脂・・・リグニンを分解する。 もちろん、酸素は、風魔法使いによって 作り出される。


これも、ナカヨシ教授の作った薬品を タンクに放り込み、粗パルプを 一緒に放り込むことで 簡単に漂白 出来る。


ここで使われる薬品・・・過酸化物が、リグニンの酸化分解も行うため、残っていたリグニンは、ここでほぼ完全に除去されることとなる。 そもそも、パルプ漂白は、パルプ中のリグニンを分解除去することで達成される。 反応的にはOH+などの求電子性のラジカルなものが、重要な役割を担っている。 過酸化水素のみでの、リグニンの分解は 簡単ではないが、これにヘテロポリ酸などを加えるなどし、ナカヨシ教授が新たな薬品を開発したのだ。 この薬品が、漂白が可能にさせ、ティッシュペーパーの開発を成功させた要因でもある。


こうして、漂白工程を終了させると、クラフトパルプとよばれる 真っ白いモコモコが できる。 ティッシュペーパーの原料である。


さぁ、ここからが本番だ。


ここまででもわかる通り、水魔法を使う人間は、わが社には必須だ。 特に、パルプに混ぜる水はキレイなものでなければならない。


クラフトパルプと、作り出されたキレイな水を混ぜる。


そうしてできた 混ぜ合わせた原料を、ワイヤーと呼ばれる網の上に、均一にのせていく。 網の上では、原料の水分をろ過しながら絞る。 そしてさらに、抄紙機の中で、ロールとフェルトで機械的に水分を ぎゅうぎゅうと 搾り取る。


こうして よく絞られたパルプは、ほぼ紙状になって 出てくる。


次は、乾燥工程だ。


蒸気で高温に加熱した、金属の丸い筒に、この紙状原料を巻きつけるように密着させ、乾燥させる。 この段階で、薄い紙となっているものを、破れないように、リールで巻き取れば、巨大ティッシュペーパーの出来上がりだ。


あとは、ワインダーで、必要な大きさにカットして、箱詰めすればよい。


この新商品を作り出し、発売ことで、わが社は、当時の羊皮紙業界3位から、羊皮紙業界4位へと転落した・・・。 いや、植物紙業界を独占。 1位となったわけだ。 作っている会社が、1社しかないため、1位というのは 当然であるのだが・・・。


ふいに、目の前の少女が、羊皮紙で作られた カジノのパンフレットを取り出した。


パンフレットは、業界1位の トマコマヒ羊皮紙社で作られた羊皮紙のようだ。 わが社のものより、質がいい。 いや、質が良い羊皮紙だけを 選んだのか?


「これを、植物紙で作りたいんだけれど、できるかな?

 カタトさんの会社で。」


なるほど、見た目は幼いが、オーナーというだけある。 そして、新たな素材は、新しいビジネスを生むというわけだ。


「1枚サンプルを、いただけますか?

 持ち帰って、試作してみましょう。」



=== ===== === ===== ===



少女から、パンフレットを受け取る。実は、植物の紙は、すでにできている。これは、ボロい商売になりそうだ。



=== ===== === ===== ===

そもそも、ティッシュペーパーを作るほうが、パンフレットを作るより難しいだろうと思う人は、高評価を押して次の話へ⇒



蛇足1.ティッシュペーパーを作る


 チップが、チップの間は、それを紙クズだと

 思わなければならない。

 チップを鼻紙のように、扱うことが出来ない人間に、

 勝利は無い。

 勝負は、まだ続いている。

 チップを、ティッシュのように、繊細に、

 ただし、軽く扱うのだ。


 2-105.カジノ革命 13 2021/10/03 09:00より

https://ncode.syosetu.com/n6487gq/141/


 羊皮紙しかない世界のはずでしたが、1年ほど前から

 ティッシュペーパーが出来ていた様です。


 けっして、後付けなんかでは・・・。



蛇足2.クロロフィルa濃度


 11月9日の海洋クロロフィル濃度を見てみると、

 北海道の根室の右側が、緑~赤になっています。

 濃度が高いんですね。


 赤潮です。ウニが、大量死しています。


 あぁ、この冬は、ウニが高くなりそうです。


 2-51.ダダ もれ アリー 2021/06/03 09:00より

https://ncode.syosetu.com/n6487gq/87/

 蛇足2.瀬戸内海環境保全特別措置法


 2-54.砂嵐を呼ぶ「大砂放射掌」2021/06/07 09:00より

https://ncode.syosetu.com/n6487gq/90/

 蛇足3.トルコ マルマラ海「海の鼻水」



蛇足3.秋の全国火災予防運動


 11月9日、鹿児島県薩摩川内市では、消防士姿の

 カーネル・サンダース人形が現れたそうです。


 火災から命を守るポイントをまとめたポスターを手に、

 ストーブなどは安全装置のついた機器を使用すること、

 古い火災警報器を交換することなどを呼びかけている

 そうです。


 そんなカーネル・サンダース人形ですが、

 作中のカネールさんとは、まったく全然これっぽっちも

 関係ありません。


 カネールさん初出

 2-108.カジノ革命 16 2021/10/09 09:00

https://ncode.syosetu.com/n6487gq/144/



蛇足4.犠牲フライ


 公認野球規則9・08

 打者が、グラウンドに打球を打って、

 フェア地域とファウル地域を問わず、

 外野手または、外野の方まで廻り込んだ内野手が、

 捕球した後、走者が得点した場合には、

 犠牲フライを記録する


 CSファイナル ヤクルト4-0巨人

 11月10日の野球ヤクルトvs巨人の1回。

 村上選手のショートフライに、塩見選手が

 タッチアップで、本塁に生還しました。


 記録は、「遊飛」。ショートフライです。

 

 犠飛は、外野の方まで廻り込んだ内野手が、

 取らないと記録されません。


 遊撃手の坂本選手が、普通にとったと

 判断されたみたいですね。



蛇足5.最低時給


 アメリカのスタバが、最低自給1700円(15ドル)

 コストコが、1900円(17ドル)

 アマゾンが、2000円(18ドル)

 で、募集をかけているそうです。


 それでも、人が集まらないそうですね。


 自分のお給料を時間で割ってみると・・・


 米アマゾンに転職するのもいいかもしれません。



蛇足6.インフレ


 って思ったのですが、アメリカ、インフレだそうです。


 10月の米消費者物価指数は、前年同月比では6.2%上昇

 伸びが1990年以来最大で、高インフレとなっています。


 生活必需品も、食品は前年同月比5.3%上昇。

 ガソリンは前月比6.1%上昇。

 新車価格は1.4%上昇。中古車は2.5%


 インフレ調整後の実質平均時給は、前年10月比1.2%減少


 あっ、高くなっているけれど、物価も高くなっているので

 実質下がってるんですね。


 米アマゾンへの転職は、やめておくことにします。

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