2-117.土木工事は、土魔法と木魔法を使った工事っ!
カジノビルの隣に、馬車での 昇降用の建物を3棟、建てなければならない。
最初は、エレベーターのような、魔法道具を作るつもりだった。
しかし、風魔法の調節は、思ったよりも難しい。 上に持ち上げるのは、簡単なんだけれども、安全に降ろす方法が、見つからない。 魔法による 風の調節が難しく、失敗すると自由落下に近くなり、墜落してしまうのだ。
カジノに、魔法道具のエレベーターを設置することを断念した私は、その代わりとなるものを 用意しなければならなかった。 実際、魔法を使って 作り上げたわけだけど、さすがにゼロから全てを魔法で 作り上げたわけではない。 そんなことをしていたら、時間と魔力が、いくらあっても 足りない。
ということで、高強度・高密度の『空洞石型枠ブロック』と『粘土』と『接着剤』。 それに『セルロース繊維鉄筋』を 私が用意。 風魔法で飛べる人たちに、積み上げていってもらうことで、時間を節約し、建物の 安全性を確保することにした。
[美容師の娘] 【 2-117.昇降らせん回廊を作ろう 】
まずは、地下トンネルを掘る。
カジノの地下から、飛翔師学院のナカヨシ研究室に向かってだ。 ワイン輸送の時は、地盤がそこまで強くなかったため、土を圧縮して、壁とすることで、空間を作り、かつ、構造の強さを担保していた。 構造耐力上、安全である水準の硬さをとなるまで、土を圧縮していたのだ。 トンネルは、これに 土魔法で 石壁を作って固める 補強をして、強度を保っていた。
今回は、地下が 岩盤なので、カジノ地下の岩盤を掘り、まず、地下空間を作った。
上に乗っている建物、カジノビルの重さに 耐える必要があるため、垂直方向と斜めに『セルロースナノファイバーを巻いた鉄製の柱』と『筋交い』を入れた『耐力炭素繊維パネル』と、 そして、荷重を支える『強力な圧縮炭素繊維の梁』を、交互に積み重ねたブレース工法を採用した。 この工法を取り入れることで、地下での作業に 必要な空間・・・地下室を 作り上げるとともに、上からの重み、圧力に耐えうる構造を得たのだ。 この時、掘り出した岩石や土は、地上まで運んでおく。 これは、高強度・高密度の『空洞石型枠ブロック』の材料となるからだ。
もちろん『炭素繊維パネル』や、『炭素繊維製の梁』は、テレサさんのアンターナッハ商会の木材を 原料に、魔法で作り上げた。 炭素繊維は、木魔法でつくる『カーボンファイバー』を編み合わせて作り、『パネル』や『梁』は、アンターナッハ商会の工房で『風魔法プレス機』の魔法道具を使って圧縮したものだ。
『炭素繊維パネル』も、『炭素繊維製の梁』も、鋼鉄製のパネルや梁より 強い。 なんと、軽さは、鋼鉄の5分の1しかないのに、強度は鋼鉄の5倍以上っ。
問題は、燃えやすいこと。 炭素で出来ているので、鋼鉄よりも 燃焼性が 高いのだ。
一般に、木材が、空気中において、120~180度で 加熱された場合、かなりの速度をもって、熱分解を起こし、着火する。 炭素繊維の製品も、炭素が原料である以上、180度というのは、ともかくとして、一定の温度を超えると、着火してしまう。 要は、鋼鉄や、石材に比べて、火事が 起こりやすいのだ。
これを解決するために 使ったのが『ホウ酸』と『臭素』。
あの、ゴキブリをやっつけるダンゴに 入っている『ホウ酸』 と、ライリューンの元素の周期表の呪文 「ふっくらぶらじゃーあいのあとってね」 = 「F、Cl,Br、I、At、Ts」 の 「ブラじゃー」・・・ 『Br』。 ハロゲン元素の 『臭素』を 使ったのだ。
まずは、『ホウ酸』の『高濃度溶液』を用意する。 溶液の中身は、『ホウ酸』『400』に対して 『アミン類』を『400』。 加えて『水』が『200』。
これに『臭化アンモニウム』を加える。 割合は、『高濃度ホウ酸溶液』『600』に対して、 『臭化アンモニウム』『100』。
これに、ナカヨシが得意とする『リン酸化合物』を加える。 ナカヨシは、スニップスのリン酸化も、5分で完成させちゃうもんね。 で、使うのは『ポリリン酸アンモニウム』。 割合は『100』。
この溶液を『炭素繊維』に対して、20%程度の含有 濃度となるように、しみこませて 処理することで、耐火性を得ることが 出来るのだ。
各成分の 役割を、見ていこう。
『ホウ酸』の役割は、溶融皮膜による 表面の『被覆効果』。
『ホウ酸』は、この『被覆効果』により、着火抑制を示す。 しかし、火事の際に 木材などから発生する『メタン』『エ夕ン』『水素』『有機酸』『アルデヒド』『ケトン』などの、『可燃性ガス』と、発生する『可燃性ガスの生成』を 低減させる作用は、弱い。
この弱点を、補うのが『ポリリン酸アンモニウム』と『臭化アンモニウム』だ。
『ポリリン酸アンモニウム』は、炭素繊維の熱分解を 低下させる。 また、熱分解生成物である可燃性ガスの 生成低減をする。 そして、加熱初期における 重量減少量の増大をもたらし,脱水炭化作用の促進により、難燃効果を 発揮する。
『臭化アンモニウム』は、臭化とあるように、ハロゲン元素である『Br』=『臭素』がアンモニアにくっついている。 火事などの際の 加熱下で、解離して生じる ハロゲン原子が、可燃物から、水素ラジカルを 奪うのだ。 これが、燃焼の連鎖反応に重要な 高エネルギーの遊離基や 原子と 反応する。 このことで、燃焼の伝播と、その分岐が抑制され、もし、火事が起こった場合も、燃え広がりにくく なるのだ。
「これらの成分を混ぜ合わせれば、作ることは 可能だろう」と、ナカヨシが 予測を立てていたのだけれど、私たちは、これらの、配合割合を決めて、耐火炭素繊維を 作った上で、実際に試験をしてみる 必要があった。
何かを 混合させる割合を 決めるってだから話だから、ライリューンを 使いたかったけれど、クリスタルガラスを 作らせているのよね。
いま 彼女は、ナカヨシ研究室の 外庭に作った窯で、ジルコニウムやチタンを、ガラスの主成分と、どのくらい混ぜるか 手探りで 調整している。
ホント、使いたい時に 居ないって、困るわぁ。
仕方がないので、自分で やったんだけど、3種類ほど 混合割合の候補を 決めて お試ししてみると、試験1回目で成功。 1種類が、耐火と燃焼の試験を 軽々とクリアした。 レンガ造りの建物並に、燃えにくくなるみたい。
いやぁ、ブレンディングって、思ったより簡単だねっ。
そして、アンターナッハ商会の新製品『炭素繊維パネル』は、今、王都中で建築されている建造物の現場を、席巻している。 それはそうだよね。 強くて軽くて燃えないんだもの。
この『炭素繊維パネル』や『風魔法プレス機』の魔法道具は、ナカヨシと私で、作り上げたんだけど、テレサさんって、ホント人使いが荒いよのね。 たった、3日でパネル製造の量産体制が 出来るように 工房を1つ作り上げろ って言うんだから・・・。 まぁ、そのおかげで、こっちの建築材料にも 使うことが 出来たから、OKとしよう。
で、建築作業を続けるして、元の世界では『空洞コンクリートブロック』というものが存在したけれど、『空洞石型枠ブロック』は、そのイメージ。 掘り出した岩石や土を、圧縮しながら、あの穴あきのブロックの形に形成してゆく。 たぶん、こっちの方が強度としては 強いと思うのよね。 圧縮してるから・・・。
こうしてできた 『空洞石型枠ブロック』を 縦に積んでいってもらう。
その空洞中に『セルロース繊維を巻いた鉄骨』を 差し込む。 木魔法で 透明の『セルロースナノファイバー』を作って、そのファイバーを鉄芯に巻き付けた『セルロース繊維鉄骨』だね。 通常の鉄骨の強度に比べて、格段に強くなる上、ファイバーを巻くことによって 鉄骨の表面が酸素と接触しにくくなるため、錆にも強くなり、耐久性も増す。 また、繊維を巻くことにより、凹凸状鋼材の 表面積が増えるため、表面が平滑な 同じ直径の丸鋼よりも、引き抜こうとする力に 抵抗する力が、強い。 この繊維の凹凸状の隙間には、この後に流し込む 粘土や接着剤が、入り込んでいくともあり、定着長が短くなり、定着のための加工が 簡素化されるなどのメリットが多い。 時間的にも、木魔法で、一瞬で 鉄骨に巻いちゃうだけだから、とっても ラクチン。
石壁などに、土魔法もつかうから、土木工事って、まさに、土魔法と 木魔法を 使った工事のことだねっ。 って、私が、今してるのは 土木じゃなくて 建築工事か・・・。
ヌルヌルの粘土を 鉄骨を入れた 空洞穴に放り込み『接着剤』を流し込む。
アンモニアにカルボニル基が2つ結合した構造を『イミド結合』と呼ぶんだけど、これを繰り返し繋ぎあわせたものは『ポリイミド』と呼ばれる。 芳香族化合物をイミド結合で連結した『芳香族ポリイミド』は、芳香族と芳香族が、イミド結合を介して共役構造を持つために 剛直で強固な分子構造を持つ上に、イミド結合が強い分子間力を持つために、すべての高分子中で、最高レベルの高強度、耐熱性を有する『接着剤』となるのだ。
まずは、テトラカルボン酸とジアミンを原料に重合させ、『ポリアミド酸』を作り出す。 アンモニアにカルボニル基をくっ付けて、繰り返し繋ぎあわせたものだ。 得られた『ポリアミド酸』を 『空洞石型枠ブロック』に流し込んだ後、火魔法を使い、ブロックごと200度を超える温度で加熱する。 こうすることで、ブロックの中での『ポリアミド酸』の脱水と環化反応を進むので、ブロックの空洞の中で『ポリイミド』が出来て、『接着剤』として、働いてくれるのだ。
こうしてできた構造物は、とにかく強い。 しかも、優れた耐久性と耐震性、耐火性、遮音性を発揮し、低コストで、工期が短い。
ということで、ライリューン商会ではなく、アンターナッハ商会の『セルロース繊維鉄骨組積建造』として絶賛販売中だ。 うん、石材と木材の販売だけじゃなくて、土建業もアンターナッハ商会の 仕事になっちゃったみたいだね。
ようやく 外部構造が出来たので、次は、内部を作らなくてはならない。 隣のカジノビル各階に繋ぐフロア部分と、馬車の昇降のための、らせん回廊だ。
『セルロース繊維鉄骨』や『空洞石型枠ブロック』、『セルロースナノファイバーを巻いた鉄製の柱』と『筋交い』を入れた『耐力炭素繊維パネル』、荷重を支える『強力な圧縮炭素繊維製の梁』。 これらの アイテムが、ここでも 大活躍。
構造は、高速道路のにあるインターチェンジのような らせん道路が 2本。 これは、登りと下りの坂道だ。 この坂道が、隣のカジノの各階と繋がるフロアに 接続していると 思ってもらえばいい。
カジノビルの隣に 3棟の昇降用建物を建てるのに 費やした時間は、2週間。 そのほかに、塗装や内装に かかった時間もあるので、1か月くらいかかったかな? そして、費用は『セルロース繊維鉄骨』や『パネル』、『空洞石型枠ブロック』を 販売した収益で、むしろ プラスになった。
とにかく、テレサさんが、商売上手すぎるのだ。
カジノ地下からの横穴は、石材や粘土などを 掘り出す目的で、まだ トンネルを掘り続ける。 ナカヨシ研究室に 向かってだ。 あっ、石材や粘土は、アンターナッハ商会に 納入してるよ。
そうして、地下トンネル通路は、3日かかって 開通した。
この前の ワイン輸送の時みたいに ナカヨシが居ると、作業が 早いんだけどね。 ナカヨシは、地下道の出入り口の魔力鍵を 作るときに 来ただけ。 今回は、5メートルの鍵付き巾着袋だから、前より だいぶん 規模が 小さいかな。
やっとの思いで、ナカヨシ研究室の地下にたどり着いたら、次は、上へ のぼる回廊を作る。 階段ではなく、坂道。 上部に馬車で移動できるようにしたのだ。 ここにも 2つの出入り口を作り、片方を 私の魔力鍵で閉じる。 もう片方は、ナカヨシが、帰って来てから、自分で魔力鍵を取り付けるだろう。
ふぅ・・・ 疲れた。 わたし、がんばったよ。 寮に帰って休もう。 内側から 研究室のドアを開け、外に出る。
「出来ないぃぃぃぃ。 出ぇ来ないっ。 出来ないっ。 出来ないっ。
こんな ガラスの配合なんて 無理だよぉ。」
お庭に作った 窯の方から、叫び声が、聞こえる。
私は、風魔法を使い、そぉっと 空へと飛び上がった。 今日は、このまま 寮まで 飛んで帰ろう。
ふわりと 空に浮かぶと、秋の風を感じる。
木の葉の 散る音が 詩となり、自分の声さえも 風となる。
ささいな 何かに 目をとめるより、
わずかな 何かに 言葉を 添えるより、
わたしは、風を 感じていたい。
風は 何にも染まらない。 風は 何色でもない。
誰にも 伝わらない言葉も、風に乗れば、誰も知らない音になる。
ちぎれそうな 言葉も
とっても 苦しい言葉も、
詩になって、秋風に乗って踊る。
ライリューン声も、美しい詩となって、空の風になるだろう。
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「アリぃぃぃ。 早く帰って来てぇ。
おねがぁぁぁぃ 手伝ってよぉぉぉ。」
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ゴキブリ用のホウ酸団子をおいしく食べたことがある人は、高評価を押して次の話へ⇒
蛇足1.地下トンネル工事
10月27日、岐阜県中津川市にある
リニア中央新幹線のトンネルの工事現場で
崩落が発生し、作業員が死傷しました。
事故が起きたのは、岐阜県中津川市瀬戸にある
「瀬戸トンネル」の工事現場。
「非常口用のトンネル」を掘る工事だったらしく
事故は、入り口から70メートルほどの場所で
起きたそうです。
トンネルは、土や岩盤の圧力の地圧が高くなる
ほど崩壊の危険が高まります。
新オーストリアトンネル工法、通称ナトムは、
山岳部におけるトンネル工法のひとつで、
掘削部分にコンクリートを吹き付け、すぐに
硬化させ、岩盤と、コンクリートとを固定する
ロックボルトを岩盤にまで打ち込んでみ、
山自体の保持力を利用して、トンネルの構造を
保持する工法です。
その、最初の過程が、削孔です。
岩盤が、固くないときは、機械だけで掘ります
が、通常は、孔をあけて爆薬を詰め、岩盤を
爆破します。
27日の19時20分ごろ、この爆破作業を
した後、不発の爆薬が残っていないか点検作業
中に崩落が起こったそうです。
固い地盤に至る手前の、壊れやすい強度の弱い層で
工事を行っていた可能性があり、爆破後すぐは、
亀裂などから表面が落下する現象が起きやすく、
表面で落ちやすくなった箇所を意図的に落として
危険を無くしていく作業中に事故が起こったのでは
ないかと、想像されています。
そんな、岐阜県中津川市瀬戸ですが、前話の
プロセム王国『ギフ州ナカツガワ』とは、
まったく全然これっぽっちも、関係ありません。
2-116.鉱石の精製 2021/10/26 09:00
https://ncode.syosetu.com/n6487gq/152/
ジルコンは、珪砂に混じって存在している。
これは、プロセム王国の フクシマ州イシカワや、
『ギフ州ナカツガワ』にある 漂砂鉱床付近の
砂礫などから、採取することが出来る。
蛇足2.エックス
アメリカ国務省は、10月27日、LGBTなど
性的マイノリティーの人たちのために男性と女性以外の
選択肢として「X」と記載されたパスポートを、
初めて発行したと発表しました。
この制度を、日本の保険証などに取り入れられたら、
男性にダメな薬を、体が男性の人に投与してしまったり、
女性にダメな薬を、体が女性の人に投与してしまったり、
といった具合に たぶん、問題が起こるんだろうなって
思います。
あぁ、でも「X」だから、確認して大丈夫かな?