1-15. アリー、空を駆ける
母ウェンディは、美人だ。
彼女の まわりに、人は集まり、優しく 微笑む。
美容室は、いつものようにいつものように、午前の予約を 済ませた。 さぁ、お昼ご飯の時間っ。 今日は、何かなぁ。
「アリー、今日は パパと 食べてね」
今日も ウェンディが お出かけの 準備をしている。
「私も ママと お出かけするっ!」
この パターンは、お約束。 連れて行ってもらえないのは、分かってるんだけれどね。
ウェンディが 教会にお出かけの時、私は いつもお留守番。
・・・のはず だった ん だけど・・・。
[美容師の娘] 【 1-15. 飛行少女?非行少女? 】
「そうね、着替えて いらっしゃい」
あら。 もうすぐ 7歳。 もう お・と・な と 見なされる のかしら。 初めて 連れて行ってもらえる 教会に 少しウキウキした 気分。
ポクポクと、馬車は進む。 そして、とうちゃーく!
王都ホームカンシ教の 教会は、多くの人で あふれていた。
「あれは、何が 違うの?」
ホームカンシ教の教会の入り口は、込んでいた。 そこで見たのは、人が いっぱい並ぶ受付と、ほぼ 居ない 受付。 空いているなら、混雑している 受付に並んでいる人を、そっちに誘導してあげればいいのにね。
「うーん。私たちは あっち」
あっ、人数の 少ない受付だ。 混雑している受付に並んでいる人の 視線が痛い。 順番を 飛ばしている気分。 少し 居心地が悪いね。
ドンっ
そんな気分を吹き飛ばしたのが、受付のテーブルがたてた音。ウェンディが、やや重そうな 革袋を ドスンと置いたのだ。
あっ、なんか 分かっちゃった 気がする。
私たちが 受け取った 入館証は、金属プレート。しかも 金色。 向こうで 受付をした人が 持っているのは、木の板。
なんて 分かりやすい んだろう。
「アリー、受付が 2つに 分かれている のはね・・・」
ウェンディが 声を小さくして 説明をしようと してくれた。
「ん、わかった」
最後まで 聞かずに というよりは 言わせずに こたえた。 さすがに 人が多い所で 交わす 話題では ないだろう。
「お嬢様に 神の加護が ありますように」
受付の人が 声を かけてくれる。 金のプレートには、神の加護があり、災いから 身を守ってくれる と教えてくれた。 うん、迷信、迷信。
受付を通り抜けて、奥へと進む。 通路の先に 見えるのは、贅沢な 建物。 キレイな ステンドグラスや 高そうな 御影石や大理石が 使われている。
そういえば、テレサさんの アンターナッハ商会が 石材も扱ってるって 言ってたから これも あの商会が扱ったものかも しれないね。
神殿への 通路では さすがに 何の事件もなく、私たちは 別室に 通された。
ずんずんと、奥に進んで、大きな石像が建っている広間に出た。 ウェンディが、偉そうな像に 祈る格好を する。 仕方ない。 わたしも、同じように膝をつき石像・・・開祖シラーン像に向かって祈る。ただ、この石像の前に、司祭服の 男が 1人立っているのが気に食わない。 この男を 拝んでいるようで、不愉快なんだよねっ。
「この子が アリーだね」
不愉快な司祭服が、ウェンディにたずねた。
誰? 私 知らないよ。 あなたを。 ちょっと不安になって、ウェンディを 見上げる。
「はい、もうすぐ 7歳に なります」
あら、お知り合い? じゃぁ 仕方ない。 おとなしく していよう。 ん? 個室に案内してくれるのね。 お茶やお菓子が、出るのかしら?
すごく立派な装飾品に囲まれ、高級そうな家具が並ぶお部屋に通された。 うわぁ、ここ、絶対リラックスできないって。 しかも、こっちを じっと見ないでよ。 司祭服は、わたしを なめるような目で見つめてくる。
「失礼いたします。」
隣の部屋から お盆の上に乗っている 立派な紙を持った 2人組が やって来るまで 男は 私を 眺めた。 じぃぃっと・・・
不愉快っ。 レディを 凝視するのは 良くないと 思う。
「あちらの 部屋で こちらの免罪符に 署名を お願いします」
あぁ、お金で 免罪符を 購入してるのね。 美容室に、取締まりの 人が 来ない理由が 分かっちゃったわ。
「アリー、そっちの 中庭で おとなしく 待っていてね」
ウェンディは、お庭を 指さした後、免罪符の2人組と 一緒に 隣の部屋に 行ってしまった。
お部屋にいても 良かったんだけど、凝視男と 一緒にいるのが 嫌なので お庭に 行くことにした。
ウェンディも たぶん、私が この男を 嫌がっているのが 分かって、一緒に いなくても いいように 中庭に行くように 言ったんだろう。
中庭には 噴水があり、美しい女性の像があり、白い石畳の 周りには 芝生。 ギリシアの庭園みたい。 聖堂は、高く そびえて 立派。こっちは ルネッサンスって 感じだね。
屋根の 部分には、天使っぽい 羽を生やした生き物の 彫刻や小鳥を くわえた 猫の彫刻。
・・・ふっと 猫の彫刻が 動いた。小鳥も ちょっと 動いた。
あっ、生きてるわ。あの彫刻。そだね、助けて あげないとね。
私は、風魔法を 優しく 真下に 放った。
ふわり と 体が浮く。風の力を そのまま 強くする。 すぃっと 20mほど 飛翔して、猫と目が合う。・・・猫さん ビックリして 小鳥を 口から 放しちゃった。
『ふふん。ざぁんねん。
幸運の女神と、獲物は 1度しか 捕まえる チャンスは ないんだよ』
逃げる猫を 横目に、私は 落ちそうになる 小鳥を 助けようと 手を伸ばした。
あっ飛んだ。そっか、鳥だから 飛ぶよね。
小鳥さんと一 緒に 飛行し、空を 走る。 あぁ、気持ちいい。
あっ。凝視男。 今日は、お出かけ用のスカート。
これはマズい。
空き地で、小さな男の子に見られたであろうことを思い出して、顔が熱くなる。
ぴゅいぃぃと、男が 見えないであろう 噴水の向こう側まで 素早く飛ぶ。 そうしたら、 スカートを 押さえ、風魔法を止め、水魔法で パラシュートを作り、降下!
ふわりと、両腕の無い女性の像の前に 着地した。
うん。 私は 学習する 子。同じ失敗は 2度は しないのだ。
あ・・・ウェンディ。 ウェンディが 小走りで こちらに やって来る。 お・・怒っている お顔も 美人ですね・・・
ウェンディは、プンプンと怒って、話を聞いてくれない。 手を掴まれて、神殿の奥から、入ってきた受付の方へと歩く。
受付で、私たちが 最初に受け取った 金のプレート・・・金色の入館証と 引き換えに 免罪符を 受け取った。なるほど、こうやって交換するシステムなのね。
まだ、怒っているウェンディが、くるくると、免罪符の羊皮紙を巻いてカバンへとしまうのをジィッと見る。 あぁ、これは、帰ったら、本気で叱られるなっ。
帰り道は 散々。 ウェンディは、話をしてくれないし、 楽しみにしていた 買い物も 中止。 怒られながら お家に 帰るのでした。
さて、家に帰ってきても 問題が・・・
一人 残されてた イアンが いじけていた。 私も 買い物が 中止になって いじけてるんですよっ。
ん~仕方がない。 イアンの 膝の上に ぴょんと飛び乗り、つまならい童話を 聞き流してあげる。
私って いい子だわ。
機嫌をなおした イアンは、なぜか しびれたと言って 足をひきずりながら 食卓の方に 歩いていった。
きっと 昔からの 症状のはず・・・。わたしが、膝の上に乗っていたのは、関係ない! ぜんぜん全くこれっぽっちも関係していないはず!
ただ 夜の飲食は 少しひかえた方が いいかもしれない。
xxx xxx xxx
ウェンディは、料理が 上手だ。 お菓子作りも 上手だ。 焼き菓子は おいしい。
暖炉の前で、ウェンディは、今日の出来事を イアンに 話す。 紅茶を 飲みながら。 焼き菓子は おいしい。
イアンは、膝の上の 私に言う。
「飛翔魔法は、大人の魔法使いと 一緒でなければ ダメだ。
そう、教えた はずだよ」
パクっ
「ん。おいしいね。コレ」
よく 分かんない。ぜんぜん 分かんない。知らない。
そうだ。 もう 子供が 起きている 時間 ではない。 おやすみなさいをして 寝るべきっ。 イアンの 膝の上から ぴょんと 飛びのき パタパタと 寝室へ向かう。
ウェンディが 困ったような 顔をしながら つぶやくのが 聞こえる。
「不安だわ。悪い方向に 向かわなければ いいんだけど」
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大丈夫。わたし、非行になんか 走らない から。
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届いた親友からの年賀はがきのお年玉番号の上に
「当たるといいね」と書かれていた人は
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紅白で久しぶりに夜に駆けるを聞いたら、
サブタイトルが空を駆けるになっていました
ということで、本当は、これが正月1個目の物語のはずでした
まいっか
空を駆けるは、まあいいとして、非行少女?非行少女?は、無いでしょう。センスが悪い気がします。1回書き換えているはずなんですよね。非行少女の所。その前が、何だったか覚えていないですけれども。