2-95.カジノ革命 3
新遊技機の ハイリスク台と、ローリスク台。
試作機も できたし、後は、勝手に 作ってもらう。
私は、次に進むのだ。
作るのは、ルーレット台。
ほとんど、木製だし、テレサさんの所で作ることが 出来るはず。
「で、どういうものを 作ろうと思うの?」
で・・出たな。 魔王っ。
製作所に入った途端、テレサさんが、やって来た。
「アリー、この前の2種類の遊技機だけで、手一杯なのよ。
次は、いったい、何を しようとしてるの?」
「いや、テーブルを いくつか作ってもらおうと 思ってるだけ。」
「普通のテーブル?
また、変な加工は、ないのね。」
「いや、ちょっとだけ、加工して もらうよ。
あっ、あと金属製品も、ちょっと くっ付くかも。」
「じゃ、まず お絵描きレベルでいいから、図面を書いてっ。
遊技機の注文で、こっちは、手いっぱいなのっ。
ほんとに、もう。」
はぁい。ライリューン、寮で、お絵描きしよっか?
[美容師の娘] 【 2-95.アレを作ろう 2 】
ウィールは、ルーレット・ゲームで使われる、すり鉢状になっている回転盤。
ウィールは英語で「車輪」って意味。
ルーレットはフランス語で「小さい輪」って意味だね。
「でも、英語か、フランス語、どっちかに、統一してほしいよね。
そうだっ。あれも統一して欲しいな。
ベルセルクは、ノルウェー語。
バーサーカーは、英語っ。
どっち使うのか、はっきりして欲しいっ。」
ぶつぶつと、呟くアリー。
ライリューンは、首を傾げた。
アリーが、意味の分からないことを 言っているのだ。
ノルウェー語とか、英語とか、どこの国の言葉なんだろう?
「だいたい、アレを、ペーハーって、言う人も、おかしいよね。
それなら、スプーンも、スパーチュラって、言えばいいのよ。
大体、アレって、pKaにログA-/HAを足したものでしょ?
だったら、pKaだって、ペーカーアーって言うべきだよね。」
アリーは、続けて、ポーテンツハーについて 語り始めてしまった。 まるで、何かにとりつかれたようだ。
ん? ポーテンツハー? アリーの元の世界の人間には、知らない人は、いないだろう。
もちろん、Potenz H のことだ。
英語で、ポテンシャルオブハイドロゲンとも、シンボルフォハイドロゲンとも呼ばれる、水素イオン濃度指数。
通常、pHと記される。
1909年に、デンマークのセーレン・セーレセンと言うキラキラネームのオジサンが、提案した水溶液の酸性の度合いを表す数値だ。
しかし、これは、ルーレット台には、まったく、全然、これっぽっちも、関係がない。
ライリューンが、まだまだ厳しい暑さのせいで、アリーの頭が おかしくなったのではないか と勘違いしたのも、責められないだろう。
「直径は、80~85cmで いいかな?
これを、回さなきゃ、ダメなのよねぇ。
ライリューン、何かない?
このくらいの大きさで、回るものって。」
「小さな馬車の車輪が、そのくらいのもあるよ。
どうかな?」
あぁ、馬車の車輪を削って、その上に、盤をうまく乗せれば、出来るかな?
ちょっと重そうだから、軽量化しないと、うまく回ってくれなさそうだけど・・・。
とりあえず、それでやってみて、ダメなら、ほかの方法を考えよう。
で、すり鉢状に削って、それに盤を乗せて、数字の溝を、外周に張り付けて・・・。
「うーん。難しい。」
「あのね。
材料とか、アリーが 考える必要ないんじゃない?」
「ん? ライリューン。 どういうこと?」
「テレサさんの商会は、木材の加工製造をしてるんだから・・・。
どんな物か分かれば、試作品を作ってくれるよ。
アリーは、説明すれば いいだけじゃないの?」
あぁ、そうだった。 遊技機を200台ほど 注文したせいで、忙しそうにしてたから、作り方を考えるのは、こっちでしなきゃダメだと 思い込んでいたけれど、向こうって、専門家よね。
ライリューンの言う通り、まかせちゃえば、いいかっ。
私は、やり方を、あらためた。
大きな厚紙を 用意したのだ。
まずは、厚紙を円状に切り取る。
そして、ピザを切るように、等分に38分割する、線を描く。
1個1個折り目を入れられるように、ちょっとだけ、切れ目を入れるのだ。
その1片は、切り取ってしまう。 ピザみたいにね。
切れ目を入れた、厚紙を、折り目に合わせて曲げていくと、傘みたいな形になる。
1片、切り取っているから、丸くなるんだよね。 きれいに丸まったら、ノリで端をくっつける。
これで、傘状のくぼんだ、すり鉢形の盤ができた。
その傘状の内側、外周の中ほどの折り目の間に、小さな仕切りの厚紙を立てて、ノリでくっ付ける。
これは、手がベタベタになるのがイヤから、ライリューンが、頑張った。
適材適所だね。
外周には、0から36までの数字を書き込む。
真ん中には、自由の女神みたいな突起をつけて タワーにしてっと・・・。
厚紙の真ん中に 小さな穴を開けてとりあえず完了。
木の板に、厚紙と同じくらいの穴をあけて、棒を通し、厚紙も取り付ける。
真ん中のタワーを、くるりんっと回すと、一応ルーレットみたいに回る。 ・・・ぎこちないけれど。
たぶん、これで説明は、できる。
じゃ、もう一回、アンターナッハ商会に、行くよー。
ん? ライリューンが、いない・・・。 逃げたな。 ちぇっ。
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製作所のおじさんは、理解が良くて、話が分かる。
「ほう、これが、ルーレット盤でいいんだな。」
「うんうん。」
「リングを、ここにつけてっと。
この棒は、軸ってことだから・・・。」
「スムーズに、回らなきゃダメなんだよ。」
おじさんに説明していると、ふいに、背後に、なにやら、恐ろしげな気配を感じた。
「なるほどね。 なんとなく分かったわ。」
製作所に入ってきたテレサさんが、覗き込んできたのだ。
「すり鉢状の盤を用意するのよね。
それに、0から36の数字を、円周を ふちどるように、描く。
このすり鉢は、内側に回転盤を内蔵した構造をしている。
クルクルッと、回すのね。 これ。
すり鉢に、球を1個、投げ入れて、回転盤を回すっと。
すりばち盤も回るし、球も、不規則に回転移動していく。
球の停止位置の数字、0から36を、お客は、予想するのね。
で、予想の当否を賭けるゲームってことで、いいかな?」
う・・・。 テレサさんが、何を言っているか分かんない。 もう一回、言って。
3回目に、やっとテレサさんの言っていることが、理解できた。 無理だって、そんないい方されても。
「アリー。 ゲームの内容を言語化していくことは、大切よ。
やり方を説明する 掲示板と、パンフレットが 必要だもの。
文章と、絵の両方が いるわね。」
そっか、やっているのを見てもらってだけじゃ、広がらないか・・・。
「あっ、そうだ。あと、数字ごとに 色も 赤と黒で 分けるの。
赤と、黒で、賭けることが出来るようにするから。
奇数と偶数でも賭けられるし、大小でも賭けることができる。
それと、球が、0に入ったら、カジノの総取りになる。」
「大小?」
「大が、19~36。小が、1~18だね。」
「1/3も、入れてみたら?」
「1/3?」
「1~12。13~24。25~36。の3つね。」
テレサさん、頭が良すぎ。ゲームの基本構造が分かったら、アイデアをドンドン放り込んでくる。
よし、こういう時は、いい方法があるのを私は、知っている。
丸投げだっ。
「じゃ、テレサさん。
そういう感じで、チップを賭けるテーブルも 作っておいてね。
ルーレット台の試作が完成したら、また来るよ。
じゃねー。」
「あっ、ちょっと、アリー。 待ちなさい。」
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待てと言われて、待つ泥棒は、いない。
製作所から飛び出した私は、飛翔魔法で、ナカヨシ研究室まで、ピューン。
これで、ルーレット台も完成したようなものだし、次は、アレとアレを作れば、OKだねぇ。 いやぁ、順調だわ。
すとん。 と、地面に着地。
ナカヨシ研究室の ドアを開く。
「ん? 何してるの?」
なんと、研究室には、ライリューンと、ライレーンが揃って、私を待ち構えていた。
「大丈夫? アリー。」
「ライリューンが、アリーが変なこと、言ってるって。
アリーが、おかしい。っていうから、ボク、来たんだよ。」
「え? 私、何か言ってた?」
「えーと、ベルセルクとかバーサーカーとか・・・。
私の知らない言語も、しゃべってた気がする。」
あっ。 そういえば、そんなこと考えてたな。
「やだなぁ。西のヘドファン領の方言だよ。
作ってた ルーレット盤のことを 考えてただけだよ。」
方言っていっておけば、誤魔化せるっ。
「いつもと違う感じだったから、悪い霊でも憑りついたのかと。
ホントに、おかしかったんだもの。」
「ボク、アリーがおかしいのは、いつもことだと思う。」
ちょ、ライレーンひどいっ。 そんなこと言うなら、キャットフード 持って帰ってもらうからねっ。
「あっ、ごめん。 もうちょっと置いといて。
ちょっとずつ、持って帰るから。」
その時、ガチャリとドアが、開いた。
「お主ら、入り口で 何を騒いでおる?」
「あら? ナカヨシ、その両手の荷物は?」
ナカヨシは、両手に 大きな箱を 抱えていた。
「お主のものじゃ。
キョウテンドーから、何やら届いておる。」
あぁっ。 私のオリジナルフラワーカードっ。 出来たのねー。
よしっ。これで、また一歩、前に進むことが出来た。
私は、右手でライリューンの手首を、左手でライレーンの手首をガシッと つかんだ。
逃がしてはいけない。
「今日、寮に泊まりね。
今回は、絶対に負けない。 ベインティウナで、勝負だよっ。」
ベインティウナは、21を超えないように 気を付けながら、手持ちのカードの点数の 合計を21に近づけたほうが勝ち。っていうフラワーカードを使ったゲーム。
前回は、カードが市販のものだったから、良くなかった。
今回は、私のオリジナルカード。 運気は、私の方に来るはず。
「ちょ、アリー。 ボク、昨日あんまり寝てないから。
徹夜は、無理だって。」
「私も、作業で疲れてるし、今度にしない?」
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「うん。大丈夫。明日は、休みだからっ。」
私は、両手にグッと力を込め、にっこりとほほ笑んだ。
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狩猟で、猟銃を打ったことがある人は、高評価を押して次の話へ⇒
蛇足1.玉、球、弾丸?
すり鉢に、球を1個、投げ入れて、回転盤を回すっと。
すりばち盤も回るし、球も、不規則に回転移動していく。
球の停止位置の数字、0から36を、お客は、予想するのね。
狩猟で使われる鉛を含んだ弾を飲み込んで鉛中毒になり、野鳥が死ぬケースが後を絶たないことから、鉛の弾の使用について段階的に規制を強化し、2030年度までに鉛中毒になる野鳥をゼロにすると、環境省が決めたそうです。
エゾシカ猟で、鉛弾を使って、撃たれたシカの肉を食べた希少種のオオワシやオジロワシが鉛中毒で命を落とすとかいうやつですね。
射止められたシカは猟場で解体され、被弾部や内臓などが、そのまま山野に放置される状態になります。これらに残った鉛ライフル弾の破片などを猛禽類が肉とともに食べることで、重篤な鉛中毒が引き起こされるということです。
ってか、すでに規制されていたような?
2000年 エゾシカ猟における鉛ライフル弾の使用規制
※鳥獣保護法に基づく北海道告示
2001年 鉛散弾の使用規制
※鳥獣保護法に基づく北海道告示
2003年 狩猟によって発生する獲物の放棄の禁止
※鳥獣保護法
2004年 大型獣の狩猟における鉛ライフル弾鉛散弾の使用禁止
※鳥獣保護法に基づく北海道告示
2014年 エゾシカ猟時の特定鉛弾所持の禁止
※北海道条例
鳥獣保護法で禁止されている物は、獲物の放置禁止だけなんですね。
カリフォルニア州では、2013年10月に鉛弾の使用を禁止する法案が可決されていますし、法律で規制しなければ、ダメなのかもしれません。
っていうか、鉛以外にどんな猟銃の弾丸があるんでしょうか?
あぁ、銅弾やタングステン弾ですね。
銅弾が、20発で1万円前後。鉛弾が、20発で、3000円前後。
うん。高いっ。
なるほど、お値段を見ると、鉛弾を使いたい気持ちは、分からないでもないです。