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2-89.アタリヤショック 11

「なんじゃ? これはっ。」


あっ・・・ ナカヨシ。


普段は、絶対、空き部屋なんて見ないのに、何で、そのドアをピンポイントで 開けるかな?


「あっ、なんか、一時的に 置いてるみたいです。

 ライリューンがっ。」


私のじゃないよっ! ライリューンのだよっ!


とりあえず アピールだけは しておく。


「ん? これは、フレークか。 懐かしいな。」


「潰れたらしいですよ。

 その会社。」


「ん? 聞いとらんぞ。 そんな話。」


さぁ? なんででしょうね。

私も、朝、ライリューンから 聞いたところだから。


「カエルスモッグの所に、行ってみるか。

 アリーも、ついて来るがよい。」


え? 私も行くの?


っていうか、カエルスモッグって・・・。なにかの暗号?




[美容師の娘]  【 2-89.雷の魔法 】



サナトリウム。


それは、長期的な療養を 必要とする人のための 療養所。


この、海の見える丘にある 階段状の建物が、ハイヴェ・ヨジン・カエルスモッグの 療養所だ。


「アリー、ここじゃ。」


ナカヨシに続いて、馬車を降りる。


見上げると、目に入る、大きな看板。




『スーパークリック・サニトリウム。』




そして、扉の横には、小さな説明用の看板。




ここは、シリアルの発明者で名高い カエルスモッグ博士の指導のもと、療養生活を送る施設。


長生きする人ほど、その暮らしぶりは シンプル。


ここでは、自然の野菜や果物など、加工されていない食物を食べ、揚げ物や肉は少量にし、規則正しい生活と 適度の労働をし、明るく静かな満ち足りた気持ちで 暮らすための お手伝いをします。


人生を健康で 心安らかに 送る方法を 知りましょう。




ナカヨシは、扉を開け、すたすたと、中へと入って行く。


「ハイヴェは、おるかの?」


「あぁ、ナカヨシ教授。

 いつもの部屋ですよ。」


「ありがとう。」


受付で、ナカヨシが、博士の居場所を聞く。

どうやら、受付の人とも、顔見知りのようだ。


「やぁ、ナカヨシじゃないか。」


立派な口ひげを生やした 医学博士。


それが、ハイヴェ・ヨジン・カエルスモッグの第一印象であった。


「ハイヴェ、こちらは、アリー。

 ヘドファン伯爵家の令嬢で、ワシの後継者じゃ。」


は? ナカヨシの後なんて継がないしっ。

教授になんか ならないよっ。


「ほう。 それは、面白い。」


「アリー、こちらは、カエルスモッグ博士。

 以前は、学院の教授をしておられた。」


カエルスモッグ博士は、食生活と健康の研究を 飛翔師学院で行っていた 教授であったらしい。


ところが、その研究に夢中になってしまった。


学院の教授をやめ、ガミシン州スーパークリックにある このサナトリウムを設立。


現在は、健康的に暮らす方法を求める 多くの患者のための治療と、希望者に対し 講義と実地授業を行っている。


「あの シリアルを作ったのも、博士じゃ。」


え? ライリューンが、山ほど買っていたやつ?


ハイヴェ・ヨジン・カエルスモッグと、ルース・キウイ・カエルスモッグの兄弟は、サナトリウムの療養者の食事として、栄養価の高い穀物を使った食品の研究を重ねていた。


ある日、オーツ麦、玄米、とうもろこし、小麦などをメープルシロップと植物油と混ぜて 焼こうとしたところ、手違いで 水分を含んでしまった小麦を ローラーにかけ、生地を 伸ばしてしてしまった。


捨てるには、もったいないので、これを焼き上げてみると、なんと、パリッとした食感の、おいしいフレークが 出来てしまったのだ。


これを、療養中の患者に与えたところ、大好評。


これが、カエルスモッグ社の 朝食のシリアルの元となった。


ハイヴェは、そのままサナトリウムでの治療を続けたが、弟のルースは、カエルスモッグ社を設立。


「スーパークリックトーストフレーク」として、このフレークを売り出したのだ。


当時、朝食離れが問題視されていた王都で、これが爆発的にヒット。


穀物由来のビタミン・ミネラル・食物繊維を手軽に摂取できるシリアルは、食生活の改善に活用できる食品として好評を得た。


重量も、軽いことから、飛翔師兵の糧米の代用品としても、注目を受け、軍にも納入されているらしい。


「まぁ、昔のことですな。」


「でじゃ、カエルスモッグ社が 潰れたと聞いたのじゃが?」


「あぁ、どうも、他業種に 手を出したようですね。

 資金繰りが回らずに、どこかに出資をお願いしたそうです。

 ビール会社と 言っていましたよ。」


「なるほど、こちらには、影響ないのじゃな?

 それならば、良かった。」


「今日は、それを確認しに?」


「そうじゃな。

 久しぶりに、お主の顔を 見ておきたかったしの。

 あとは、アリーと 引き合わせておきたかった。」


「そちらが、目的でしょう。

 お嬢さんは、ずいぶん 期待されているようですね。」


いや、私、教授になんかならないしっ。 後継者なんてイヤだよ。


「どうですか?

 こちらの療養所を 見学していかれますか?」


「そのつもりじゃ。

 ワシは、ここで、ハイヴェと話をしておる。

 中を 案内してもらって 見学してくるのじゃ。」


は? ライリューンのシリアルを見に来たのに、なんで、サナトリウム見学?



******************************



受付でナカヨシと話していた、ジェーン・センバ・ナードは、博士の一番弟子らしい。


この人が、私の案内を してくれるみたい。


「まだお若いのに、療養所見学とは、素晴らしい。」


いや、強制だし。


「療養所では、適切な食事と、運動を推奨しています。

 それだけではなく、様々な治療をしています。」


最初に連れていかれたのは、高圧雷風(かみなり)呂。


魔法で作り出した、小さなカミナリを、お風呂に流して、ビリビリさせると 元気になるらしい。


って、カミナリって電気だよね。


感電しそう・・・。水と電気って危ないって。


「お試しになりますか?」


絶対嫌です!



次に連れていかれたのは、腸内洗浄。


いやぁぁぁ。 人が 浣腸されるのを見て 何が楽しいのよ。


次、行くよ。次。



次は、頭皮脱毛治療。


高温となった炭素棒に、カミナリを流す。

放電により加熱され、白熱し強い光を発した炭素棒が、バチバチと音を立てる。


そして、その炭素棒が、患者の頭に・・・。


痛い、痛い、痛いっ。


見てるだけで、こっちが 痛いよっ。



スーパークリック・サニトリウム・・・思った以上に、とんでもなかった。



子宮マッサージ治療、バチバチ炭素棒ランプ歯科治療、熱気風呂、雷コイル治療、腰痛振動器具。


どれも、見るのが苦痛になる治療。 テレビだと、放送できないレベルだね。


喫煙の禁止、飲酒の禁止とか、食事療法、運動療法とか、理念は、いいんだけどねぇ。



「ナカヨシ、とりあえず、ぐるっと見てきたよ。」


もう、グッタリって感じで、疲れ切った私は、カエルスモッグ博士の部屋に 戻って来た。


「早かったの。

 もう少し、ゆっくりしてきても、良かったのじゃが。」


ヤダよ。 あんなの 長い時間 見たくないって。


「それでは、そろそろお暇(おいとま)しようかの。

 ハイヴェ、いつでも 学院に戻ってよいぞ。

 ワシは、待っておる。」


「いやいや、サナトリウムが、大切ですから。

 どうです? お嬢さん、良い施設でしょう?」


う・・・うん。 とっても・・・いい施設ですね。


ニコニコ顔の カエルスモッグ博士と、手を振る弟子のジェーンさんに 見送られ、私たちは、馬車で、サナトリウムを後にした。


「アリー、きちんと 見学してきたかの?」


「いや、あんなの 見るところないでしょ。」


「雷の魔法じゃ。

 あれは、電気というエネルギーを生む。

 博士の研究の中で、最大の成果じゃと、ワシは思っておる。」


あぁぁ。 治療じゃなくて、雷の魔法を見せるために、私を 連れて行ったのね。


って、ナカヨシが、見せてくれれば よかったじゃない。


「カミナリ魔法は、使えるのじゃが、ワシは、心臓が良くない。

 うかつに使って、鼓動が止まっては、困るのでのぉ。」


心臓に悪い 魔法?

私も、そんなの 使いたくないよ。


「いやいや、健康な人間には、問題ない。

 ワシが使っても、心臓が止まるとは、限らぬ。

 ただ、用心のためじゃ。万が一ということも あるからの。

 で、使えそうか?」


両手を、合わせて、指先と指先を くっつけるようにして 広げる。


そのまま、そぉっと距離を離しながら、放電。



バチバチっ バチバチバチっ



「これ、アリー。

 馬車の中で、そのように大量の雷を発生させるでないっ。」


あっ、ごめん。


隣には、胸を押さえ、髪を天に向けて立たせた ナカヨシが いた。


電気を使うと、コントみたいに、髪が ボン って 本当に なるんだねぇ。


「アリー、お主も、直した方がよいぞ。」


頭をなで、髪を元に戻そうとしながら、ナカヨシが言う。


ん? なんだろう?


馬車の窓を フッと見ると、髪を逆立てた、美少女がいた。


いやぁぁぁぁぁぁ。


私の髪も、コントみたいに なってるっ。



=== ===== === ===== ===


ダメっ。


雷の魔法は、人前では、使用禁止っ。



=== ===== === ===== ===

1989年に建てられた「徳島県徳島市沖浜東」にある「ジャストシステム旧本社ビル」と、「米国ミシガン州バトルクリーク」にある「ケロッグの本社ビル」って、なんか雰囲気が似ているなって思った人は、高評価を押して次の話へ⇒



 蛇足1.将棋 王位



将棋の藤井聡太王位が、王位を防衛したそうですね。

強いですねぇ。


そんな王位戦七番勝負最終第5局ですが、徳島県の「渭水苑」で行われたそうです。ジャストシステム旧本社ビルと、1kmも離れていない場所みたいです。


ってことで、なんとなく、ケロッグの本社の橙色のビルと、ジャストシステム旧本社ビルって似ているなぁって思いました。



 蛇足2.量子暗号


 っていうか、カエルスモッグって・・・。なにかの暗号?


東芝が、量子暗号でゲノム情報伝送に成功したそうです。5年後10年後には、個人の通信の伝送も、量子の世界に入るのかもしれいませんね。



蛇足3.サッカー日本代表


サッカー日本代表ワールドカップ最終予選のメンバー24人が発表されました。


って、試合のテレビ放送が、無い?


テレ朝さん・・・撤退。


うーん。


そのうち、ワールドカップ本体も、お値段が高すぎて、放映権を購入できなくなりそうですね。



 蛇足4.


1898年、米国ミシガン州バトルクリークで療養所をしていたケロッグ博士と弟のW.K.ケロッグの兄弟は、グラノーラを作ろうとして失敗し、手違いで小麦の生地をフレークにしてしまいました。この幸運な失敗から、ケロッグ社のコーンフレークが、生まれたそうです。


1906年、弟のW.K.ケロッグが、「バトルクリーク・トーステッド・コーンフレークカンパニー」を創設し、1922年に「ケロッグ・カンパニー」に社名変更。


ということで、あれやこれやと、「スーパークリックトーストフレーク」も「カエルスモッグ社」も「カエルスモッグ博士」も、全く関係ありません。


そろそろ、蛇足を書くのに飽きました。

お腹も、すきました。


よしっ、ケロッグのコーンフロスティでもたべよっと。

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