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2-88.アタリヤショック 10

「ねぇ、ナカヨシ。 部屋1個もらえない?」


「ん?何に使うのじゃ?」


「調香の瓶を並べる倉庫っ。」


そう。 ライリューンが、香りの素を どんどんブレンドしていくものだから、調香済の瓶を 並べる場所が、無くなったのだ。


仕方がないので、ナカヨシ研究室の 空き部屋を、1部屋 貰うことにした。


え? ライリューンの休憩室? どうなったんだろうね。 私、知らない。


シンプルでスタイリッシュな 木の棚に、ライリューンがブレンディングした調香瓶を 並べていく。


ラベルには、ロットナンバーが、割り振られており、その記号番号と、ノートの記号番号を突き合わせると、そのブレンド割合が 分かる仕組みだ。


うーん。 おしゃれっ。


ラベルに 統一感があって、とてもスッキリしている。

まるで カフェや 雑貨屋さんのような ステキな 空間。


って思ってたのに・・・。


一夜明けて見てみたら、何?コレ・・・。




[美容師の娘]  【 2-88.不渡り と 救済 】




「なんで、こんな大量の 朝食のシリアルがあるのよ。」


私が、香りをブレンドした瓶を オシャレに並べた お部屋が、なぜか、朝食のシリアルの紙袋で、いっぱいになっている。


きぃぃ。


せっかく、1日がかりで、模様替え したのにっ。


「ライリューンっ。 これ、何よっ。」


「あっ。アリーごめんね。

 シリアルのメーカーが、潰れたらしいの。

 とりあえず、お店にあるだけ全部、買ってきたんだ。」


何、言ってるのよ? 自分の部屋に置いてよ。


「いや、それが、ライレーンのキャットフードでいっぱいなの。」


はぁ? ライレーンの朝食って、キャットフードなの?


「違うって。

 ライレーンの飼っている 猫のだよ。

 ペットフードのメーカーも、潰れちゃったらしいのよね。」


どうやら、昨日、朝食のシリアルのメーカーと、ペットフードのメーカーが潰れたらしい。


製造が止まってしまい、商品の供給は、在庫限りとなったため、ライリューンは、店頭にあるだけの朝食のシリアルを全部、ライレーンは、ペットショップに置いてあっただけの 全てのキャットフードを 買い占めてきたらしい。


「お気に入りなんだよね。 これ。

 他のだと、味が、アレだから・・・。」


シリアルは、ともかく、猫のご飯なんて、無くなったら、魚とか 与えておけばいいでしょ。


「いや、それが、ライレーンの猫、それしか食べないのよ。」


どんな、しつけしてるのよ。 猫だよ。 猫っ。


怒鳴り過ぎて、頭がクラクラする。


「とりあえず、使っていない空き部屋に 移すよ。」


「えっ? 使わせてもらえるの? 空き部屋。」


「分かんないけど、見つからなければいいんじゃない?

 毎朝、食べるんだから、いつかは無くなるでしょ。」


「無くなるのは、困るのよねぇ。」


知らないよっ。 そんなの。


もぉ・・・。


よし、ナカヨシが来る前に 片づけておかなきゃ。

ライリューンと一緒に、空き部屋にシリアルの紙袋を 放り込む。


「じゃ、この部屋に放り込んで・・・。

 ナカヨシに見つかったら、ちゃんと謝ってね。」


「えっ。怒られるの?」


当たり前でしょ。 勝手に使ってるんだから。


ふぅ・・・。 今日は、朝から疲れたよ。




******************************




「クッキーさん、大変ですっ。」


少し遅い、朝食を終え、事務所でお茶を飲んでいると、突然、ヘラームズが、飛び込んできた。


「ノックをしなさい。ノックを。

 何ですか?」


「ビールのメーカーが、供給を止めると言っています。」


「はぁ? 何を言っているのです?

 きちんと、契約してあるでしょう。

 納入を 約束した分は、入れさせなさい。」


「それが・・・。

 カエルと、ニュートが、買収されたみたいなんです。」


「はい? ビールと、どう関係するのですかっ。」



朝食のシリアルのメーカーである カエルスモッグ社。


こちらの会社が、ゾウサンバード社に、買収されたという。


そして、ペットフードのメーカであるケム・ニュートロニウム社。


こちらは、ハコダテユウヒ社に、買収されたらしい。


ゾウサンバード社、ハコダテユウヒ社は、どちらも、ビールメーカー。


先日より、アタリヤ商会のカジノに、ビールを納入している会社だ。


「カエルも、ニュートも、不渡りを出したようです。

 そこで、救済する形で、ゾウサンと、ハコダテが・・・。」


ゾウサンバード社、ハコダテユウヒ社は、独自の発酵技術によって、ビールを作っている。


カエルスモッグ社は、シリアルの製造に、ゾウサンバード社の 発酵技術の提供を 受けていた。


そして、ケム・ニュートロニウム社は、ビール酵母の残りカスを、ペットフードに混ぜ込むことで、その味と栄養バランスを 整えていたのだ。


このような関係から、資金繰りの悪化によって、不渡りを出してしまった 両社の救済に、ビールメーカーが、乗り出してきていた。


「なるほど、ただ、それが、なぜ、納品の停止に繋がるのです?

 かなりの良い条件で、ビールを購入していると思いますが?」


「それが・・・。

 カエルも、ニュートの不渡りの原因が、我々にあると・・・。

 支払い期限延長による、資金繰り悪化のせいだそうです。

 ゾウサン、ハコダテともに、信義誠実の原則を言っております。

 アタリヤ商会とは、今後、取引をしないそうです。」


信義誠実の原則とは、「相互に相手方の信頼を裏切らないよう行動すべきである」という法原則のことをいう。


今回の、支払い期限の延長が、それに反した行為であると、2社は、言ってきているのだ。


「カエルと、ニュートだけなら、どうにでもなる。

 しかし、ゾウサン、ハコダテが、絡んでくるとは・・・。

 始めたばかりの、ビールを止めるわけにはいかん。

 そうだっ。

 業界の慣習が、違ったことによる、相互認識の食い違いだ。

 支払い期限の慣習が違ったことを、強調しろっ。

 そして、今回は、特別に支払うということで、話をつけろ。

 うん。わたしは、不在だ。

 わたしのいない間に、決まっていたことにする。

 今回は、お前の責任で処理しろ。

 私は、ゴルドプリンアラモ市に出張していると、言っておけ。」


「はいっ。しかし、支払って大丈夫でしょうか?

 まだ、回胴式遊技機の支払いは、他にもありますよ。」


「そちらは、私が、どうにかする。

 他は、いままでの付き合いのあるメーカーだ。

 少し待ってもらうくらいは、出来るだろう。」


クッキーは、ヘラームズに、ビールメーカーへの対応を任せた。 そして、自らは、資金繰りと、支払いの交渉に、専念することにしたのだ。


「いや、しかし、なんでこう、問題ばっかり起こるのか・・・。」


クッキーは、小さくつぶやき、据え置きタイプの消臭剤を、軽く持ち上げた。


先日、発売されたばかりの新商品だ。


「よしっ、まずは、交渉だ。」


支払い期限の延長をお願いするために、遊技機製造メーカーを訪問しなくてはならない。


「おいっ、馬車を用意してくれっ。」


秘書にそう命じると、クッキーは、消臭剤の瓶を机に置き、立ち上がる。




=== ===== === ===== ===



机の上の美しいアンティークのようなガラス瓶からは、すずらんの香りが、ふわりと香っていた。



=== ===== === ===== ===

朝食は、ごはんと味噌汁って人は、高評価を押して次の話へ⇒


蛇足.


 8月21日に、イスラエルと、パレスチナ自治区ガザ地区の境界で、衝突が起こり、イスラエル兵1人が重体。イスラエル軍は報復として、ガザ地区にあるハマスの軍事施設4か所を空爆したとのことで、アフガニスタンばっかりに、目を向けていると、違うところで火を噴きそうで、怖いです。

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