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2-86.アタリヤショック 8

昨日の夜の荷馬車で、不要な遊技機は、全て片付いた。

倉庫は、空っぽ。

今後、ゴミのような遊技機で 埋まることは無い。


夜間の作業は、特に高い賃金が、必要になった。

割り増しも、その1.1倍だから、ボディーブローのように 効いてくる。


しかし、日雇いの作業員に対する支払いは、何とか 完了したのだ。


やっと、一息つける。

問題は、今後の資金繰りだが、ひとまず置いておこう。


今日くらいは、少し ゆっくりしても 良いだろう。


「ヘラームズ。終わったな。

 大変だっただろう。

 どうだ、少し飲みにいかないか?」


「ありがとうございます。

 いや、砂漠は、夜でも暑かったですからね。

 あびるほど、冷たいビールを飲みたい気分です。」


「いいだろう。

 今日は、いいビールを置いてある店に連れて行ってやる。」


クッキーは、ニヤリと笑い、馬車を手配するよう、秘書に命じた。





[美容師の娘]  【 2-86.廉価な合成品 】





魔法での再現が、早くなった。


香りの成分は、基本的には、揮発しやすい成分ってことが 理解できたからだろうか。 気化するほうを 取り出すイメージにすると、簡単に 魔法で成分を作り出すことが出来る。 ナカヨシの「回り道をするほうが、早い場合もある。」っていうのも、なんとなく分かった。 めんどくさいけどね。


この4~5日は、なにか作業みたいに なっちゃってた。


実験をして、過程を理解しながら、成分を分離する。


その成分に魔力を通して、それを覚える。


この、繰り返し。


いろんな 実験をした。


丁子という植物から、精油を取り出して、オイゲノールを抽出してみたり、バニラ豆から、オイゲノールを取り出して、バニリンを分離したり。


うん。 有名なナカヨシのやつだね。


『ナカヨシ印のバニラの香り』って、バニリンを 実験で分離した後、それを覚えた ナカヨシが、魔法で、バニラの香りを 作り出していたんだね。 そりゃ、大量生産できるし、儲かるわ。


私も、スグに、出来るようになったから、今後は、私が、『ナカヨシ印のバニラの香りの素』を、作ることになりそう。 これ、簡単だし、時間もかからない。 どうせ、同じアンダーナッハ商会で取り扱っているんだから、私の『3種類の 野バラ石鹸(せっけん)』も、魔法で作れるようにしようかな?


「ねぇ、ナカヨシ。

 野バラ 持ち込んでもいい?」


「ん? 何をするつもりじゃ?」


「3種類の 野バラの香りも、魔法で作りたいの。」


「できるじゃろ?

 いままで作った、香りの成分を 混ぜれば よいのじゃ。

 たぶん、よく似た物ならば、すぐにできると 思うぞ。」


「え・・・。」


どうやら、いままで、私が作らされていたモノには、バラ科の植物に含まれる 匂いの成分が、かなり 含まれているらしい。


魔法で バニリンを作ることで、『ナカヨシのバニラの香りの素』を作ることが、出来たように、私の『野バラの香り』も、これまでの成分を、適量ずつ混合していくことで、よく似た匂いを 再現できるそうだ。


「そもそも、そのつもりで、作らせておったからの。

 テレサが、需要に供給が追い付いていない と言っておった。

 次は、廉価な魔法で作った合成品を、用意するべきじゃ。

 今の、魔法で抽出した高級な石鹸は、そのままでよい。

 ブランド化できておるからの。

 次は、大衆が使えるよう廉価な合成品を、流通させるのじゃ。」


わぁ・・・。 そっかぁ。

昔から作られていた、ぜいたく品のバラの香りと比べると、私の『バラの香り』や、『バラの石鹸』は、安く販売できている。


でも、まだまだ、普通の人が購入できる金額じゃ なかったってことね。


購入していたのは、貴族や、大商人や、地主くらい。

お金持ち ばっかりだ。


しかも、その人たちにすら、需要を 満たせるほどの量は、供給できてない。


新たに、私が魔法で合成した品を、新ブランドとして、安く販売したならば、今までとは違う顧客を得ることが出来る。 そして、いままでの『アリーブランド』を購入していた層から、ちょっとくらい安価な新ブランドに移動する人が出てきても、もともと、『アリーブランド』自体の需要に対して、供給を満たせてなかったんだから、おそらく、売上げに影響はない。 同じ程度の量が、売れていく・・・。


わぁ・・・ナカヨシって、商売上手だわ。


「いや、テレサの指示じゃ。

 ワシに、作れ と 言ってきおったからの。」


・・・ちょっと待って。


それ、テレサさんから、ナカヨシに振られた仕事を、私が 代わりに やってるんじゃないの?


この前、「思っていたより、アリーが、優秀なので、ワシの 知識と技術を すべて覚えて もらう。」とか 言ってなかったっけ。


「いやいや、もちろん、そちらが、本来の目的じゃ。

 ついでに、テレサの指示も、満たせるのでな。

 先に、教えただけじゃ。

 ほかの知識も、覚えてもらう。

 魔王草についても、正しく使えば、良いものじゃ。

 きちんと、理解して、使えるように なってもらうぞ。

 それに、バラについては、もともと お主のものじゃ。

 お主が、作るので 問題なかろう。」


ん-。なんとなく、うまく ごまかされた気がする。


「さて、それで、香りのブレンディングじゃが・・・。」


そう、『アリーブランド 3種類の 野バラの香り』を 参考にしながら、香りを 作らなくてはならない。


「アリーブランドと、全く同じ香りでは、ダメじゃぞ。

 あと、新しくできた香りで、良いものも 別じゃ。

 そちらは、アリーブランドで 販売するのじゃ。」


「ふぇ? なんで?」


「高級ブランドじゃから、高く販売できる。

 良いものは、アリーブランドで 販売じゃ。

 そこそこの物を、新しいブランドで安く。

 これが、基本じゃな。」


なるほど。商売って難しいね。


その時、研究室のドアが、ガチャリと開いた。

敵意を 持った者が近づくと、赤く光る 時計は、光っていないから、不審者ではないはずだ。


「アリー、まだ実験してる?」


訪ねてきたのは、ライレーンとライリューンという名前をした、2匹の生贄の羊だった。


「2人とも、とっても いいタイミング。

 ちょっと 手伝って欲しいことが、あるんだけど。」


「あっ、ボク、用事を思い出した。」


あっという間に、ライレーンが、逃げ出す。


そっか、こっちの羊には、この前、試験管300本くらいと、ナスフラスコと、丸底フラスコを洗浄させて、最後の片付けまで やらせたから、分かってたか・・・。失敗したな。 先に、腕をつかんでおくべきだった。


もう1匹は、逃がしてはならない。 私は、ガシッと、ライリューンの右手首を つかんだ。


「私たち、親友だよね? ライリューン。」


「う・・うん。」


こうして、香りのブレンディングは、ライリューンのお仕事になった。


『アリーブランドのバラの香り』を元に、これまで私が作った何十種類もある試液 1個1個を組み合わせて、混ぜ、よく似た香りを 作り上げるだけの 簡単なお仕事だ。


「じゃ、ライリューン、お願いね。」


「ふぇぇぇん。 なんで、私だけなの・・・。」


泣かない、泣かない。

これは、大勢の人に 喜んでもらえる 尊いお仕事なんだから。




この日、ナカヨシ研究室に、新しい実験室が出来た。


ライリューンの実験室だ。


うん、真新しい個室の実験室を、もらえて良かったねー。




******************************




「クッキーさん、こちらのビールは、飲みやすいですよね。

 なにより、食事の邪魔をしない。」


ヘラームズが、手に持つ、冷えたジョッキに注がれているのは、泡にこだわった 飲みやすい生ビールであった。


やはり、生ビールのうまさは、泡にある。 黄金色の液体は、空気に触れると味が、格段に落ちるのだ。


白く、クリーミーで繊細な泡に守られた、生ビールは、ヘラームズの喉へと、一気に注がれた。


「いやいや、苦味があっても、こちらは、コクがある。

 喉越しも良いし、厚みと奥深さが 違うな。」


クッキーは、商会のトップだけあって、舌が肥えている。


白い泡を頂いた、琥珀色の液体。

彼のグラスに注がれた生ビールは、かなり上質なものだ。

麦芽100%、長期熟成、そして、秘伝の酵母。


厳選されたホップの香りが、酵母の生む華やかな香りに混ざり、厚みのある深いコクとなる。


雑味のない、その上質な旨み、深いコクと、引き締まった味わいに、これらの香りが加わることで、喉をすぅっと通った後の、丸みのある、すっきりとした、後味になるのだ。


「くぅっ。胃にしみる。

 あの、作業員たちにも、飲ませてやりたかったですね。」


赤い顔のヘラームズは、新しいグラスを受け取り、一口。


ごくりとビールを、飲み込んだ。


「いやいや、お前だけで いい。ヘラームズ。

 お前が、やってくれたから、これほど早く処理が終わったのだ。

 そうだ、こっちも 飲んでみるがいい。」


クッキーは、炭焼きで ロースト麦芽を使った、黒ビールのグラスを、差し出した。


「これは・・・。

 まろやかで、コクに余韻が、あります。

 こんな ふくよかなコクは、初めてだ。

 雑味が無いので、苦味も、後味のスッキリ感になる。」


「そうだろう。ここでしか飲めん秘伝の生ビールじゃ。」


クッキーは、得意そうに、赤くなった鼻をこすった。


「こいつをな、カジノで提供しようと考えておる。」


「この、ビールをですか?」


「そうだ。 アルコールの販売で、利益も出せる。

 少し、工夫をしていかないと だめだな。

 次に、客が離れるようなことがあれば、カジノが、もたん。

 頼むぞ、ヘラームズ。」


「はいっ。 お任せください。」



=== ===== === ===== ===




座っているだけで、シャツに汗がにじむ夜。


窓から吹く風を感じながら、クッキーとヘラームズは、カジノのこれからについて、熱く語り合った。



=== ===== === ===== ===

今日、ビールをすでに飲んでいる人は、高評価を押して次の話へ⇒


 蛇足1. 0-3


J3福島ユナイテッドが、8月18日、5月の試合で、2-0で勝っていた試合を、さかのぼって0-3の負けとする処分を受けました。


…2-66.不愉快な水曜日 蛇足1.で書いたのと同じ理由で・・・。 

https://ncode.syosetu.com/n6487gq/102/


Jリーグマッチコミッショナーが、チェックを入れて出場を認めているのだから、さすがに、2点プラスの勝ちが、3点マイナスの負けって処分が厳しすぎます。


もうちょっと、丁寧に、対応してあげられないかなぁって思います。


それは、ともかく、ニュースが暗すぎて、なーんにも興味がわきません。


コロナ、大雨、アフガニスタン・・・スポーツ、お天気、為替って感じのニュースがこれからも続くかと思うと、うんざりします。

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