2-80.アタリヤショック 2
「私が、あの2人の小娘を、抑えましょう。」
ジェミニは、自信たっぷり といった表情で請け負った。
「ほう、支払いを 停止できると?」
「さすがに、完全に支払わない と言うことはできません。
しかし、彼女たちの卒業までは、止めることが出来ます。
アタリヤ商会としては、それで 十分ではありませんか?」
オリンピュアス大祭で、赤字を出したとはいえ、カジノは、利益を生み出し続けている。 この うどん店だって、大儲けとはいかないが、飲食店としては、大きな利益を得ている。
ただ、大祭の賭けの支払いで、資金繰りが悪化しているだけ なのだ。
クッキーは、素早く頭の中で計算する。
エペイロ伯爵家、ヘドファン伯爵家、この両家の令嬢を小娘と言ってのける この教授が、支払いを一時的に止めることが出来るのであれば、それは、まさに干天の慈雨。 ありがたい としか言いようがない。
「なるほど、確かに 興味深い話ですが・・・。
その対価が、大きすぎると、我々にとって 負担になります。
アタリヤ商会は、資金繰りが 厳しいわけではありません。
無理に、学院の生徒への支払いを止める必要はないのですよ。」
ジェミニのような人間に、内情を さらけ出す必要はない。
駆け引きといわれれば、その通りだが、ジェミニの懐具合を考えれば、少し強気に出ても、問題ないことは 分かっている。
「そんな、対価なんて。
少しご褒美が 欲しいだけですよ。
ほんの 少しだけね。」
「ほう、ご褒美とは?」
[美容師の娘] 【 2-80.ご褒美を頂けますか 】
遊技機のカジノを運営する、アタリヤ商会。
その地下のうどん店を出て、階段を上る。
カジノだ。
そこに並ぶのは、オリンピュアスマシンと呼ばれる3種類の回胴式遊技機。
「モンテパレミ」「カルナバル」「ヴィクラント」と呼ばれる、3種類の遊技機は、硬貨を 投入し、回転輪=リールを回し、このリールが、停止した時の絵柄の組合せで、アタリ・ハズレが決定される。
ジェミニが、平手で、遊技機の筐体を軽く叩く。
「私は、回胴式遊技機を 長い年月、研究しました。
どうでしょう?
専門的知識と 経験に基づく助言を させてもらえませんか?」
なんと、アドバイザリー契約を ジェミニは、求めてきたのだ。
「ほう、試しに1つ助言を頂けますか?」
「なるほど。おためしですか。
それでは、サービスで、一つだけ。
種類と、数を増やしましょう。」
「種類と数を増やす?」
「はい。今の遊技場は、2種類で遊技機の台数も少ない。
これを、選べるものにするわけですな。」
「それには、どのようなメリットが?」
「私が、遊技機で遊んで、負けたとします。
今の状態なら、筐体を蹴飛ばして、帰るだけでしょう。
しかし、種類や台数があれば、話は別です。
もしかすると、この台が悪かっただけではないか?
そのように考えて、他の台や、違う筐体へと移動します。
つまり、よりハマる状態に なるわけですな。」
なるほど、教授というだけあって、少しは 考えがあるようだ。
「ほうほう、他には?」
「サービスで、これ以上は、出せませんよ。
正式に 契約を結んでいただかないと。」
まぁそうだろう。 簡単にペラペラとしゃべるとは 思っていない。
「分かりました。
では、ジェミニ教授から 提供いただけるのものは・・・
学院の生徒への 支払い停止と、カジノへの助言。
我々が提供するのは、アドバイザーへの 報酬ですな。」
「はい。 ただ、もう一つ欲しいものが・・・。」
なんと、この教授、節度が無いというか、強欲というか。
がめつさが、いやらしい。
「いえ、大したことでは ありません。
その、私の支払いも、一時停止していただけたら・・・。」
「ははは。
首が回らないのは、あなたの方でしたか。
よろしい。
我々同様、学院の生徒の卒業まで、停止しましょう。」
この程度の 要求であれば、飲んで問題ない。
私たちは、契約書を作成するために、カジノの上階にある事務所へと向かった。
******************************
契約
アリワーヌ・アント・ジェミニは、
王立飛翔師学院の生徒2人に対する、アタリヤ商会の支払いを、
その卒業まで停止させることを約束する。
クッキー・オマヌータは、アタリヤ商会のカジノへの
アリワーヌ・アント・ジェミニの支払いを、
王立飛翔師学院の生徒2人に対する支払停止期間と
同じ期間、停止し、猶予期間とすることをを約束する。
アリワーヌ・アント・ジェミニは、
アタリヤ商会のカジノへ、専門的な知識・経験に基づく
適切な助言と提案を行い、その業務を補助する。
クッキー・オマヌータは、アタリヤ商会による、
アリワーヌ・アント・ジェミニに対する
アドバイザリー契約の内容と、その報酬を保証する。
王立飛翔師学院 教授 アリワーヌ・アント・ジェミニ
アタリヤ商会 クッキー・オマヌータ
******************************
「これで、よろしいかな?」
「はい。結構です。」
署名を確認し、握手をする。
「それでは、契約完了です。
まずは、生徒への支払い停止をお願いします。」
「ははは。お任せください。」
ポンッと胸を叩くと、ジェミニが、カジノの奥へと消える。
クッキーは、思わずつぶやいた。
「ふぅ。生徒との面会に向かうかと思ったのだが・・・。
まさか、即座に、遊技機に飛びつくとは・・・。」
資金繰りが厳しくなければ、このような人間と契約したりはしなかったであろう。
=== ===== === ===== ===
呆れ顔で、クッキーは、ジェミニの背中を 見送った。
=== ===== === ===== ===
勇敢で強い人は、高評価を押して次の話へ⇒
蛇足1.ヴィクラント
「モンテパレミ」「カルナバル」「ヴィクラント」と呼ばれる
ヒンディー語で「勇敢な」「強い」という意味の「ヴィクラント」。
インド南部のコチの造船所で建造されているインド国産空母「ヴィクラント」が試験航行を行ったそうです。
起工から12年。空母を作るのって時間がかかるんですねぇ。
スリランカに中国潜水艦が寄港したりして、影響力を強めていますので、インド洋が、ますますきな臭くなりそうな気がしました。
蛇足2.スケボー
昨日の、スケートボードの女子パークの岡本碧優選手の試技の後が、素敵でした。
4位の選手なんですけど、ほぼ全員が、試技に失敗しようが、成功しようが、終わった後には、笑っていた中、この選手だけが、試技の後、泣いちゃったんですよね。
それを見た途端、他の選手が、岡本選手を囲んで担ぎ上げて、称賛する。
失敗したほとんどの人が、笑顔で、泣いちゃった人が居たら、みんなで助ける。
特に、お年寄りが歩いている時ですが、人が通っている街中で、平気で、スケートボードをしている人は、嫌いなんですけど、この競技は、好きです。