2-70.すっ飛ばす金曜日3
「こっち。こっち。」
えーと。 ミラドール? だんだん草が 深くなっている気が するんだけど?
酔っ払いは、草をかき分けて ドンドン奥へと 進んでいく。
私、知ってる。 これ、森って言うんだ。
ヤな雰囲気。 神隠しみたいな、超常現象が 起こりそうで、怖い。
「着いたよー。 オースギン村。」
あら? 何も 起こらなかったわ。
って・・・。 廃墟じゃん。
「ほんとね。 誰もいない。
廃村に なっちゃったのかな?」
「まぁ、さっきの お肉の村も、寂れてたし・・・。」
ミラドールが、ここに来たのは、8年前って言っていたから、仕方が 無いこと かもね。
「あっ、あの建物が、工房だったの。
あそこで、ボールを 作ってたんだよ。」
ミラドールが、村の中で 一番大きな 廃屋の方に 向かって 歩いていく。
「懐かしい。 前、来た時のままだわ。」
ミラドールの後に 続いて、建物に入る。
「おじゃましまーす。
わっ。 何? これっ」
ゴロゴロと 転がる骨。
あっ、奥では、骨が 山積みになってる。
「何って、ボールじゃない。 アリー 何、言ってるの?」
[美容師の娘] 【 2-70.うん、トキニホンウルフだね 】
トキニホンウルフの頭蓋骨が 積みあがった建物は、昔は、ホゥスボールのボールを 作っていた工房。
そっか。ボールが変わったから、廃業しちゃったのね。 この工房は。
・・・? これって、ミラドールのせい?
王都で、トキニホンウルフの頭蓋骨が ボールとして使われなくなったのは、ミラドールが、原因のはず。
前々回の 対抗戦で、魔法を使った ミラドールの ゴッドブレスショット。
そのゴールを機に、頭蓋骨を使ったボールは、王都から 一掃された。
牛の皮を なめして つないだ 丸い球体を ボールとして 使うようになったのだ。 ボールに、魔法感知機能を つけるために。
っていうか、競技場の 魔マーモグラフィーの設置も、それが理由だね。
あ・・・。ということは、キズカの魔ーピングでの失格も、もともとは ミラドールが、原因なのね。
この人、かなりの人に 迷惑かけてるな・・・。
顔を上げると、酔っ払いは、足で コロコロと頭蓋骨を蹴って、無邪気に 遊んでいる。 んー。責任感ゼロ。 ストライカーは、エゴイストというか、自分と関係のない人に 無関心なのかな?
「遅くなったら、試合に間に合わないし、そろそろ戻ろうか?」
コロコロ頭蓋骨で 遊んでるミラドールに、声をかける。
「そうね。 人が、誰もいないとは 思わなかったわ。
ホント、残念ね。」
アナタノセイダヨ。 って言わない私って 素敵だと思う。
そういえば、建物の中に入ったせいか、服の匂いが気になる。 焼肉って おいしいけれど、煙とかで、髪や服に匂いが付くのが 困るのよね。 帰ったら、競技場に行く前に、お風呂に入ってから、着替えたほうが いいかもしれない。
・・・ん? 匂い??? ちょっと待って。
「ねぇ、ミラドール。
なんで、この村は、森の奥にあったのかな?
さっきの村で、ボールも一緒に作れば、いいよね?」
「あぁ、材料が取りやすいから、ここに村を作ったって。
この前 来た時に 村の人が、言ってたよ。」
へぇ・・・材料ねぇ。 その材料って、肉食の獣なんじゃないかな。 名前的に・・・。 うん。一刻も 早く、この場所を 離れなければ、ダメっ。
どこの おバカが、焼肉の匂いをつけて、オオカミの群れがいる森に入るのよ。 もぉ、ミラドールのバカっ。 人に 迷惑かけるって、命の危険を感じるレベルの 迷惑かけないでよぉ。
「ちょっと、アリー。 木の根っことか あるんだから。
走ると、ケガするよ。」
「ううん。ミラドール、走って。
あの村が、いつ、廃村になったか 分からない。
オオカミが、増えている可能性が 高いの。
廃村に なってからは、狩りは、行われていないはず。
狩られなくなった オオカミは、増えるだけでしょ?」
「考え過ぎよ。 アリー。
そう簡単に オオカミなんて 出ないって。」
いや、私たち、焼肉の匂いを 体中から 発生させてるからね。 トキニホンウルフを 呼び寄せてるみたいなものよ。
「あぁ。もうダメ。ちょっと休む。」
ミラドールが、大きな木の根元に 座り込んじゃった。ミラドール立ってよ。
って、何、指差してるの?
ミラドールが指差す先を、そぉっと振り返る。 あっ。目が合った。 そんなに見つめられると照れちゃうね。 いち、に、さん・・・ あっ、後ろにも、いらっしゃるんですね。
トキニホンウルフの大群。 多すぎるって・・・。
んー。んー。んー。 退避っ。
両手で、ミラドールを抱えると、空へ舞う。 ホント、私じゃなければ、死んでるよ。 ミラドール。
「さすが、飛翔学院の生徒ね。
簡単に 空に飛び上がれるんだ。」
いや、他のみんなは、凧みたいな 羽をつけて 飛んでるけどね。
「あっ、向こうに 行っちゃっうみたい。
これだと、村に帰れないな。 どうしよう?
馬を預けてるのに。」
私たちが、空中に離脱してしまったためか、トキニホンウルフの大群が、焼肉の村の方に 駆けだした。 ちょっ、村の人も、危ないし、あそこには、ベルが居るんだよ。 ダメッ、絶対。
ミラドールを、木の上に 降ろす。
「ここに居てよね。 ちゃんと捕まって、落ちないでね。
行くよっ。」
「ちょっと、アリー。 手を離さないでよ。」
酔っ払いは、無視するっ。
一気に 先頭のオオカミの上空まで 飛んだ。
指先に 小さな火球。 火魔法だ。
ピョンと 投げるように、火を飛ばす。
・・・当たらなかった。
マンガとかなら、こういうの、当たるはずなのに。
それでも、トキニホンウルフの 足を止めることが 出来たから、良しとしよう。 ポンポンポンと、空から連続して 火の玉を飛ばす。
私は、上空から火の玉を飛ばし続けた。 1時間くらい。 いや、当たらないね。 全然。
それでも、さすがに 1時間も火の玉を飛ばし続けたら、村の方に向かっていたトキニホンウルフたちが、山の奥に向かい始めた。 よしっ、ひとまずこれで、OK。
って、ミラドール。 なんで木から 降りてるのよ。
トキニホンウルフが、ミラドールの方へ 向かっている。
危ないっ。 どうしよう。
とっさに、空中で、風を 制御っ。 風魔法だ。
くるくると 形を作って 舞う刃の風を 作る。
魔力を込めると、風は、その刃の渦を 大きくした。
えいっ
そのまま トキニホンウルフに 向かって 刃の竜巻を ぶつける。
左手の 5本の指に 制御される 竜巻の渦は、オオカミの群れに 向かい 一直線に進む。
キャインッ。
当たった。
小さな竜巻が、3匹のオオカミを吹き飛ばす
でもね、その後ろのオオカミは止まってない。 ミラドールまでの距離が、ドンドン詰まっていく。
あわてて、反対側、右手の 親指、人差し指、中指で、火球を 作った。
右手で作る竜巻の渦を、左手の火球に 近づける。
火球は、竜巻の渦に 吸い込まれ、オオカミに 向かって 突き進んだ。
火炎旋風が、トキニホンウルフを 包み込む。
そのまま、魔力を込めて、炎の竜巻の渦を、大きくする。
左手 だけでは、制御不能っ。
右手 を 添えて 支える。
ごぉぉという音とともに、トキニホンウルフを 生きたまま 焼く。
肉の焼ける いやな臭いがし、犬のような 鳴き声が あたりに 響いた。
「ちょっとぉぉぉ。 アリー、熱いっ。熱いってば」
あっ。ミラドールも、焼けそうになってる。
っていうか、周りの木も燃えてるね。 うん。山火事だ。
急いで、水魔法を使って、水を上から降り注ぐ。 大量に。
ジョワァァァという大きな音。 辺りには、熱風と白い蒸気が、立ち上った。
これ、ちょっと危ない。 急いでミラドールが居る付近に、小粒の氷を降らせる。 蒸気で見えないから適当にパラパラと・・・。
熱風と蒸気でも、焼け死ぬ可能性あるもん。
うん。大丈夫。 動いてる。 生きているみたい。
危うく、ミラドールを、かつてミラドールであった 肉の塊にするところだった。
いくら迷惑かけられたって言っても、ホゥスボールで、私を 教え導いてくれた人だもん。 焼き殺すわけにはいかないわ。
「どこの おバカが、火魔法を、森の中で使うのよ。
山火事になるの決まってるでしょ。 くしゅんっ。」
大きな木を目印に、ふわりと 着地すると、ずぶ濡れで、氷に埋もれたミラドールが、毒づいた。
「っていうか、木から 降りないでよ。
木の上に居てくれてたら、火なんか 使わなかったんだから。」
「仕方がないでしょ。
1時間も木の上に居たら、トイレに 行きたくなったんだもの。」
そんなの 木の上で してよ。
下に降りたら、あなた、オオカミのエサに なるだけでしょ。
風魔法で、氷を吹き飛ばし、温風で ミラドールの衣服を乾かす。
「村に、戻ろう。」
「そうね。
もぉ、アリーのせいで、酔いが覚めちゃったわ。」
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この人は、1度、ミディアムで、こんがりと焼いておいた方が、良かったかもしれない。
そんなことを思いながら、私は、ベルの待つ村に戻るのであった。
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ポロシャツの起源を知っている人は、
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蛇足1.ポロ
イギリスのウィリアム王子が、7月9日、バークシャー州ウィンザーで行われたポロの大会に出場したそうです。
ポロは、馬に乗って行う団体球技です。
競技場は270x150m。フットボールの9倍の広さ。
1チーム通常4人で構成され、メンバーは馬に乗り、マレットと呼ばれるスティックで球を打ちます。
球を相手チームのゴールに運べば得点。
試合時間は、7分間のチャッカーで区切りに分けられ、チャッカー6回で、1試合。
選手は、試合中4頭まで馬を替えることが出来る。
連続するチャッカーに、同じ馬を出すことは出来ません。
前600年ごろのペルシャが紀元というこの競技、ホゥスボールみたいですね。
この競技が、球技だったとは、知りませんでした。
1936年のベルリン大会まで、ポロはオリンピック競技だったそうです。
一番考えさせられたのは、広さです。
そうですね。馬だと、そのくらいの広さが必要かもしれません。
ポロの競技者が着る服が元となってポロシャツが生まれたと言われているそうですので、そこそこ有名な協議のはず。
また、打毬は、馬に騎った者らが2組に分かれ、打毬杖をふるって、庭にある毬を自分の組の毬門に早く入れることを競う東北地方に伝わる競技。
んー。オリジナル競技を作れた思ってたのに・・・。精神的打撃ですね。あぁ悔しい。
蛇足1.教員免許
ほんとね。 誰もいない。
廃村に なっちゃったのかな?
教員免許更新、10年に1度の免許更新制を廃止するそうです。
講習を受けて、免許を更新する制度なんですが、30時間以上の講習と受講料約3万円が教員の負担となっていて、人材確保への影響などを考慮して、廃止するとのことで、オンライン研修などに変わっていく予定とか。
10年に1度の免許更新制は、2009年度から導入されていたそうですが、3万円の受講料は、ダメでしょって気がします。手数料1100円とかならまだ分かりますが、更新にそこまでお金取ってどうするの?って思いました。いままでよく続いたな。と思います。