2-68.すっ飛ばす金曜日
「西部に戻ってこない?」って言われてもねぇ。
ソファーに座って、ポイと足を投げ出した。
そのまま、ゴロリと転がる。
「マーガレット、さぁ・・・。
私が、ヘドファン領に戻って暮らすって出来ると思う?」
ソファーに転がったまま、マーガレットに尋ねる。
「あっ、無理ですね。」
・・・即答だった。
まぁ、そうよねぇ。
ガネッセとの約束が無くても、アレックスとの婚約のことを考えたら難しいよね。
「ミラドールは?」
「あちらの部屋でお休みになられています。」
ミラドールが、宿をとっていないので、寮に帰らずに、美容院の方に帰宅。
そろそろ、ベルの様子を見に行きたいんだけどね。
こっちに、連れて来られないかな?
「明日、ベルをこっちに連れてきてもいいかな?」
「あっ、無理ですね。」
・・・これも即答だった。
「アリー様、人の目がある所で、馬に乗るなんてあり得ません。
お立場を、お考え下さい。」
アレックスと遠乗りは、OKなのに、私一人だとダメなのよねぇ。
ほんと、不条理。
[美容師の娘] 【 2-68.私と遠乗りに行こう 】
「じゃぁ、私と遠乗りに行こう。」
「え? ミラドールと?」
朝起きて、マーガレットとの会話をミラドールに聞かせると、斜め上の答えが返ってきた。
「あれでしょ? マーガレット。
アリーって、分からなければいいんだよね?」
そうそう、ミラドール。もっと言って。
「いえ、その・・・。
そもそも、貴族の令嬢が、遠乗りというのが・・・。」
うん。オリンピュアスは、絶対しないと思う。
「でも、王子様と一緒なら、いいんでしょ?
なら、私と一緒で、アリーって分からなければOKじゃない。」
おぉ、ミラドール。王子と自分が、同格みたいになってるよ。
突っ込んだら、ベルと遊びに行けなくなりそうだから、言わないけど。
「じゃ、決まりね。
夜だよね? ピクシノビッチの試合。
じゃ、今から出かけるよ。」
うんうん。19時45分開始だね。
あと、ピクシノビッチさんの試合って言ってるけど、ピクシノビッチさん出ないからね。
え? え? え?
ミラドールが、私の髪を結い始めた。
「うんうん。これでOK。
あとは、帽子をかぶるだけ。
馬に乗るから、どうせズボンだし。
これで、立派な男の子だね。」
鏡の前の私は、どこから見ても、かわいい小さな男の子・・・。
・・・には、見えないなぁ。
どう見ても、女の子でしょ。
「大丈夫。馬に乗って、走ってるんだもの。
近づかなきゃ、分からないって。
じゃ、飛翔学院まで、私の前に乗って。」
騎乗するミラドールの前に座る。
「アリーくらい軽ければ、全く問題ないわ。
もう一人くらい、乗せられそうね。」
ちょこん と、馬の前に乗せられ、学院に向かう。
「お待ちください。
こちらを、お持ちください。」
マーガレットが、飛び出してきた。
渡されたのは、ヘドファン家の紋章の入った羊皮紙の文書。
そして、学院の学生証明。
「アリー様の今の恰好では、学院すら入れません。
それと、何かあった時には、ヘドファン家の名前が必要です。
問題が起こった場合は、この紋章の証を見せてください。
確認のための使者が、王都のヘドファン邸に出されます。
わたくしが、飛んでまいりますので、お待ちください。」
やだな。王都のヘドファン邸に使者が行くって言うのが・・・。
・・・問題が起こった時は、出さないでおこう。
「うんうん。じゃ、行ってくるねー。」
マーガレットに手を振り、飛翔学院に向かう。
予想された通り、学院の入り口で止められるも、学生証明で突破。
厩舎は、ヘドファン家の紋章で通過。
ベルぅ。お出かけだよー。
「ん? この子、ちょっと疲れてない?」
え? ずっと、厩舎に居たからストレスが溜まってるかもしれないけれど、疲れては無いでしょ? ベルの首筋を撫でながら、大丈夫だよね?って声をかける。
「なら、いっか。
王都の馬の状態は、こっちと違うから分かりにくいのよね。」
えーと、ベルは、西部と言うか、東ハルサの馬だけどね。 ミラドールの目が、節穴なだけって 言わない私は、空気が読める いい子だ。
じゃ、ミラドール行こっか?
ブースケパレーに乗ったアレックスは、すごいって思ったけれど、やっぱりミラドールには、敵わない。 飛んでる時間が長いって、このことを言うんだろうね。
「アリー、間違ってるよ。
脚が、地面についていない時間は、短い方がいいのよ。」
え? 飛んでる時間が長い方が、速く進むでしょ?
「ざんねーん。はずれ。
飛んでる時間は、短い方が速いのよ。」
飛ぶことによって、馬体は、上下動に余計な力を使ってしまう。その上、前へ進む推進力も、浮かんでいるために、継ぎ足せなくなる。 そのため、浮いている時間が、短い方が、速く走ることが出来るのだと言う。
へぇ、知らなかったね。
「馬に無駄な動きが一切ないことが、大切だと思うわ。
滞空時間というより、上下にも、左右にもブレがないことね。
だから、スーッと、そのまま飛んでいる感じになるの。
背中に乗っていても、全く揺れがない状態。
どこまでも、一直線に走るイメージ。」
確かに、ベルは、上下に揺れるね。
ミラドールを真似して、上下の揺れが小さくなるように動いてみる。
んー。なかなか、うまくいかない。
「そうだなぁ。
雲の上を走っているような感じで、乗ってみて。」
えーと、そんな雲をつかむような話をされてもね。
「まぁ、スグに出来なくても。問題ない。
ゆっくり覚えていけばいいわ。」
んー、すぐ覚えたいのよねぇ。
オリンピュアス大祭の競走馬11.5スタディオン走に出るから。
「無理無理。焦っても、いいことないわ。
ゆっくり、ゆっくり。
イメージだけでも、私の真似をしてれば、いつか出来るわ。」
上手くいかないので、色々試していたら、ベルの揺れが大きくなった。 私が、いつもみたいに乗らないから、不満みたい。
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ああん。ごめんって。
ベルっ。上下に揺れないで。
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高給取りの人は、高評価を押して次の話へ⇒
蛇足. 高給取りのトラウト選手の放出?
うんうん。19時45分開始だね。
3月29日のU24サッカー日本代表のアルゼンチン戦が、19:45開始だったんですが、あの試合は、3月26日、29日と、2試合連続でアルゼンチン戦だったため、テレビを見て、LIVEって表示しているのに、嘘じゃん。これ録画でしょ?って1回消した後、違うって気づいて見直した記憶があります。
さて、タイラー・ウェイン・スカッグス選手は、2019年のエンゼルス背番号45番の投手。ホテルで、吐いて、それが喉に詰まって亡くなった。そして、エンゼルスは、全員が45番をつけて、試合に臨み、継投で、ノーヒット・ノーランを達成した。んー。美しい。そういう風に報道されていたのですが・・・。
知らなかったのです。大量のアルコールと、オキシコドンが、出ていたそうですね。オキシコドンは、アヘン系の麻薬です。乱用者は、錠剤を粉砕して鼻から吸引するのが、昔は主流だったそうですが、今は砕いたら、液状化して、鼻から吸えないみたいです。このせいで、摂取量が増えて過剰摂取によりによる死亡が起こる場合もあるそうですね。
まぁ、それは、横に置いておいて、薬物入手のルートが、エンゼルスの広報職員からだったみたいで、スカッグス投手に、売人を紹介して小銭を稼いでいたそうです。この広報職員、他の選手にも薬物を調達していたと証言しているそうですが・・・大谷選手、使って・・・さすがに、その頃ケガをしていたとはいえ、ないですね。
遺族の方が、訴訟準備しているそうなので、敗訴して、懲罰的な感じで、エンゼルスに大きな金銭負担が出てくると、高給取りのトラウト選手の放出が、現実味を帯びてきます。大谷選手の後ろを(今は怪我でいませんが)トラウト選手が打つことで、大谷選手に対する四球が減り、打ちやすくなると思われますので、正直、そういう流れにはなってほしくないです。