2-66.不愉快な水曜日 4
1.帝国協会代表、キズカ・ハ・ナーガを、魔ーピングで失格とする。
2.現在、試合は、王都代表 2-1 帝国代表 の途中結果で中断しているが、王都代表 3-0 帝国代表 として扱う。 これは、ホゥスボール懲罰規程によるものであり、「魔ーピングを行った選手の公式試合への不正出場」に該当する。
3.帝国ホゥスボール協会は、金貨1000枚の罰金とする。
私たちが、帝国代表の控室へたどり着いた時、それは、王都ホゥスボール協会理事のコジョーン・キ・ノマート氏が、試合の裁定を通告したタイミングであった。
「これは、魔ーピング管理委員長による決定事項です。
今後、キズカ選手の大会への出場は認められません。」
両足の無い女性理事は、飛翔魔法で体を浮かしたまま、無情な決定を帝国代表の選手たちに告げた。
[美容師の娘] 【 2-66.私の美容魔法のせい? 】
「ちょっと、それは無いんじゃない?
キズカは、治療を受けてから戻ってきたところだったはずよ。
それまでのプレーでは、魔マーモグラフィーの異常はない。
試合で魔法が使われていないことは、明らかじゃないの?」
ふわりと浮いたノマートさんの肩を、ミラドールが掴んだ。
「あら? なぜ、西部の人間が、この控室にいるの?
部外者が、ここに入り込んでいるのは問題ね。
説明してもらえる?ミラドールさん。」
ノマートさんは、ミラドールのことを知っているのね。
まぁ、有名人だもの。当然か。
「こんにちわ。ノマートさん。お久しぶりです。」
私は、ノマートさんに説明するために声をかけた。
「あぁ、これは、ヘドファン家のご令嬢。
西部代表の関係者が、もう一人居たのね。
部外者の入室は、重大な違反よ。
アリーさん、どういうことかしら?」
「質問しているのは、私よ。
試合で魔法が使われていないのに、なぜ失格なの?」
ミラドールは、ノマートさんの肩を離さない。
「ルールはルール。ミラドールさん。
そして、ヘドファン家の令嬢。
王都での、ホゥスボールに魔法は、必要ないの。
神の息吹でゲームが左右されることは、無い。
キズカは、失格。その結論に変わりはないわ。
そもそも、あなたたちに、ここに立ち入る資格はないはずよ。」
キズカさんの失格は、私の美容魔法のせいみたいだし、どうにか彼女の処分を回避したいな。
「ノマートさん、私は、現在、王都飛翔師学院に所属しています。
フィリップス王子と同じですね。
オリンピュアス様と共に、大会のお手伝いをしております。
エペイロ伯爵家 オリンピュアス様と共に。」
オリンピュアス大祭は、王都のエペイロ伯爵家が主催するの祭典。
ホゥスボールの試合管理は、ホゥスボール協会が行うが、ホゥスボール競技も、オリンピュアス大祭の1種目でしかない。
エペイロ家の名前を使えば、大概の無理は通ってしまうのだ。
「ふうん。お手伝い?それはどのような?」
そうだ。私の美容魔法じゃなくて、氷に反応したことにすれば、キズカさんの失格処分は、回避できるかもしれない。
「医務室のお手伝いをしておりました。
氷が尽きたとのことで、魔法で氷を用意いたしました。
今は、治療後の選手の様子を、確認しに 参ったのです。
関係者と認識していただいて、よろしいですよね?
先ほど、キズカ選手の失格との言葉がありましたが・・・。
魔法で用意した氷を治療で用いたために、反応したのでは?
それは、魔ーピングと呼べるものではないでしょう。」
ノマートさんが、首を振る。
「ケガや、病気を治療する魔法と言うものは存在しない。
治療の副次的に魔法を使う場合は、事前申請が必要。
その原則は、覆せない。
Magic Use Exemption無き、魔法行使は、認められないわ。
魔力計測器が反応した以上、魔ーピングよ。」
Magic Use Exemption、MUE、魔法行使免除申請。
氷を使うだけのことに、そんな面倒なものが必要なのね。
「しかし、前日に フィリップス王子も 氷を使いました。
同じものですよ? 私が魔法で作った氷です。
MUEの申請を王子はしていませんでしたが?」
「少なくとも、王子は、治療後に試合に出ていない。
魔マーモグラフィーが反応した事実は、無い。」
あぁそうだった。王子は、今日の試合も出場していないし、前の試合も退場後は、医務室で安静にしていた。困ったな。
ミラドールが、肩から手を離し、その手で、そのままノマートさんの腕を掴んで言う。
「そもそも、王都代表は、飛翔兵の糖を使っているじゃない。
あんな薬物を使っている方が、不正よ。
治療に使う氷が、魔法で出来ていることより ひどいわ。
分かってるでしょ?そんなこと。」
飛翔兵の糖。それは、覚醒物質ヒロパノス入りのチョコ。
ナカヨシが、魔王草研究物質33号から作り上げた興奮剤だ。
「ミラドール、それ本当? 王子も使ってるの?」
「アリー、みんな知ってるわ。
王都代表がチョコを使っていることは・・・。
チョコは、パオラ妃が、下賜したと言われてる。
当然、フィリップス王子も使っているでしょうね。」
突然、ノマートさんが、ミラドールの手を振り払い、警備兵を手招きした。
「この人を捕まえて。不敬罪よ。
パオラ妃と、フィリップス王子に対する侮辱があったわ。
そのような証拠もない噂で、王家を侮辱するなんて・・・。」
え?証拠ないの?
ちょっとミラドール。 何 言っちゃってるのよ。
どうしよう。えーと。えーと。えーと・・・。
「ノマートさんっ。
ミラドールは、ヘドファン家の下にあります。
また、大会中は、エペイロ家の管理下にもあります。
いかに、王家への過ぎた言葉があろうとも、それはダメです。
彼女を捕まえるには、両家の許可が必要です。」
もう。焦って、早口になっちゃったわ。
いや、本当のところは、そんな許可が必要なんて話、聞いたこともないけどね。だけど、警備兵と、王都ホゥスボール協会理事 程度なら、ヘドファン伯爵家と エペイロ伯爵家の名前を使えば、押さえ込めるでしょ。オリンピュアス、名前 使わせてもらったよ。
「そうね。ミラドールの処分は、あなた方にお任せするわ。
だけど、ホゥスボールの試合は別。
こちらの管理下にあるものよ。
キズカは、失格。ゲームは3-0。
これは、変わりはないわ。」
ノマートさんは、そう言い放つと、ふわりと浮き上がりドアに手をかけた。
帝国協会代表の選手も、監督も何も言えない。
ただ、ドアの向こうに消えるノマートさんの背中を見つめるだけであった。
「なによ。偉そうに。
王都代表が負けそうだったから、理屈をこねただけでしょ。」
ミラドールが、ぶつぶつと、毒づく。
いや、ミラドール。あなた、危なかったんだからね。
王家への侮辱って、捕まってたら、絶対、重い罪になると思うよ。
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帝国代表の選手たちは、本当に優しい人たち。
彼女たちが、魔法を使った私を、責めることは無かった。
ごめんと、頭を下げる私に、キズカさんは、逆にお礼を言ってくれた。
抗議も、処分回避も必要ないと。
気持ちだけでうれしい。ありがとうと。
このようなことで、争うのは本意ではないと。
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ん-。
こんな彼女が、失格だなんて・・・。
どうにかならないのかしら?
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試合前、葛根湯を飲んだら、ドーピング違反なのを知っている人は、
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蛇足1.Jリーグ史上初の処分
選手の公式試合への不正出場
試合は、王都代表 3-0 帝国代表 として扱う
明治安田生命J1リーグ第18節。浦和vs湘南(6月20日)
7月1日に、この試合に対して、Jリーグから処分が、発表されました。
指定公式検査において「陰性判定を得ていない選手を試合に出場させた」ことが、懲罰基準、出場資格の無い「選手の公式試合への不正出場」に該当したということでの、けん責処分ということです。
浦和GK鈴木彩艷選手が、U24オリンピック日本代表活動をしていたため、Jリーグ指定公式検査において陰性判定を得ていなかったということで、新型コロナの検査義務違反のための処分です。
U24オリンピック日本代表の代表活動で必要とされる新型コロナの検査義務は、正しくできていたんですけどね。
試合は、2対3のスコアで浦和敗戦でしたが、「3対0として浦和の負け試合」扱いの処分が科されます。
今回は、もともと負けており、勝ち点0だったので、得失点の所でマイナス2と言うだけで、被害は軽微ですけれど、勝ち点3を得ているときに、この処分だったら・・・と考えたら、重すぎる気もしました。
規定では「出場した鈴木彩艷選手は1カ月の出場停止」「クラブ浦和も1カ月の出場停止」「試合は3-0の浦和敗戦」の所、鈴木彩艷選手の1カ月の出場停止と、浦和も1カ月の出場停止については、処分無しなので、コロナ下の混乱ということでの情状酌量はあったみたいですが・・・Jリーグマッチコミッショナーに、チェック義務があるのに、マッチコミッショナーに対しては、処分が無いことを考えたら、ん~処分重すぎ。
蛇足2.18人から22人に
その、浦和GK鈴木彩艷選手が、東京オリンピック代表に滑り込みました。
7月1日に、東京オリンピックの1チームの選手の数を男女とも18人から22人に拡大されたことが決まったと、日本サッカー協会が明らかにしたのです。
このため、バックアップメンバーだった鈴木彩艷選手が、追加のメンバーとして登録されたそうです。
人数の追加理由は、新型コロナの状態が収まらないため。
Jリーグの処分は、新型コロナの検査において陰性判定を得ていなかったため。
運がいいのか悪いのか分かりません。塞翁が馬って感じです。
蛇足3.1000万円返したんでしょうか?
帝国ホゥスボール協会は、金貨1000枚の罰金
2007年4月23日、20日から風邪気味で、21日に試合を行い、体調を悪化させていた川崎フロンターレ我那覇和樹選手は、風邪、下痢の症状が悪化し、水分や食事も摂れない状態に。
彼は、チームドクターの診察を受け、100mgのビタミンB1入りの生理食塩水200ccの補液をうけました。
この点滴治療行為が、ドーピング違反に該当するとして、Jリーグは、2007年5月10日、我那覇選手に対し、6試合の出場停止処分を、川崎フロンターレに対しては1,000万円の制裁金処分を科しました。
当時の世界アンチ・ドーピング機構(WADA)の静脈内点滴注入に関する規定によれば、「現場の医師が正当な医療行為であると判断した点滴治療は、ドーピングには該当しない」となっていました。
FIFAルールは、WADAに準じ、Jリーグルールは、FIFAに準じる。
ということは、Jリーグルールは、「現場の医師が正当な医療行為であると判断した点滴治療は、ドーピングには該当しない」はずでした。
Jリーグは、2007年5月に開催されたドーピングコントロール委員会において、誤ったルールを適用して、ドーピング違反の認定を行うというミスを犯したのです。
しかも、点滴をする場合は、「TUE(Therapeutic Use Exemption:治療使用特例)」の事前申請してからしてね♪と言ったとか。脱水症状で口から水分摂取が難しい時に、事前申請してからって・・・。
そもそも、前年2006年ドイツで行われた FIFAワールドカップでは、日本代表の中村俊輔選手が、大会前5月26日から発熱のため点滴を打ち、大会中クロアチア戦の前にも、同様の点滴を打っています。我那覇選手がアウトなら、この時の、中村俊輔選手も、ドーピングでアウトなんですよね。TUEも、その時出していませんし。(出す必要がないものですので、出してないのは問題ありません。)
まぁ、その話は横に置いておいて、この時の、川崎フロンターレに対しては1,000万円の制裁金処分が、利息をつけて返金されたという話を聞いていません。そろそろ15年。返していないなら、利息だけでも結構な金額になりそうですね。
蛇足4.覚せいざいOK法案
そもそも、王都代表は、飛翔兵の糖を使っているじゃない。
あんな薬物を使っている方が、不正よ。
飛翔兵の糖。それは、覚醒物質ヒロパノス入りのチョコ。
ナカヨシが、魔王草研究物質33号から作り上げた興奮剤だ。
東京五輪・パラ特別措置法といえば、祝日の変更ですよね。
「海の日」が7月22日に、「スポーツの日」が7月23に。
閉会式に合わせて「山の日」が8月8日となります。
あぁ、今月は、22日23日連休なんですね。
さて、2021年6月9日、覚醒剤の成分を含む薬の日本への持ち込みを認める特例法律が可決しました。
実は、これも、東京五輪・パラ特別措置の一つです。注意欠陥・多動性障害の治療薬として、覚醒剤の成分を含む医薬品「アデロール」を必要とする選手の参加が見込まれているんですね。覚醒剤取締法では、覚醒剤の輸入、輸出が禁止されていますが、過去の大会で持ち込みが認められ、代わりに別の薬を使うことも難しいため、改正特措法によって特例を設けたということですね。
もちろん使用には「TUE」の事前申請が必須みたいです。
蛇足5.陸上100メートル女王
7月2日、アメリカアンチドーピング機構は、陸上100メートル女王シャカリ・リチャードソン選手の尿から、大麻の陽性反応があったとして1か月の資格停止処分と発表しました。
先月の陸上の全米選手権の女子100メートルで優勝した選手です。
大麻は、TUEを申請しても、通らない禁止薬物。アウトですね。
蛇足6.ウイグルの綿
西部代表の関係者が、もう一人居たのね。
部外者の入室は、重大な違反よ。
中国の新疆ウイグル自治区の綿製品などが強制労働で生産された可能性。フランス当局は、人道に対する罪の隠匿の疑いで、「ユニクロ」を6月末に捜査開始。
7月2日、無印良品の良品計画は、直近の監査でも重大な違反はなかったということで、継続使用すると決算会見で発表し、ユニクロのファーストリテイリングは、強制労働がないことを再確認するため、捜査に協力するとコメント。
良品計画のコメント、違反は無かったではなく、重大な違反は無かったとなっているのが、少し気になります。これが、あとで、問題にならなければいいですね。
この問題、ウイグルから撤退したら、リスクは無くなるでしょうけど、ウイグルの綿産業は、潰れるまではいかなくても、かなり縮小するんですよね。そう考えると悩みどころです。