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9月5日(土曜日)楓坂にバレちゃった

 土曜日。

 自宅で俺は夕食を食べていた。


 今日のメニューは豚キムチ鍋。


 簡単お手軽で、しかもうまい。

 疲れた時でも食事が進むので、男料理にぴったりだ。


 しかし、一人ではない。


「おいしっ。笹宮さんが作った料理は最高ですね」


 料理の出来ないお隣さんの大学生・楓坂が、また俺の部屋で飯を食っていた。


 一緒に鍋を食べるとか、どんだけくつろいでるの。

 しかも自分専用のクッションとか持ち込んでるしさ。

 ここ、俺の部屋だぜ?


 食べ終わった楓坂は箸を置いた。


「ところで笹宮さん」

「ん?」

「明日、結衣花さんとゆるキャラ展を見に行くんですよね。ついでにコーヒー豆を買ってきてくれませんか?」

「パシリ扱いか……て、……んん!?」


 楓坂が言った言葉の意味を理解し、俺は動揺を隠せない気持ちで訊ねた。


「なあ……、楓坂。……どうして俺達がゆるキャラ展に行くことを知ってるんだ?」


 楓坂は当たり前のように返答する。


「結衣花さんに聞いたからですけど?」

「マジか……」


「妹さんが二人をカップルにしようとしていることも伺っております」

「マジか……」


「ちなみに結衣花さんは私の部屋に何度か遊びに来ているので、笹宮さんがお隣さんだということも知ってますよ」

「マジっすか……」


 冷静に考えれば、結衣花と楓坂は一緒に旅行に行ったりする仲だ。

 部屋に遊びにくるのもおかしいことじゃない。


「しかし意外だな。俺と結衣花が一緒に出掛けるって聞いたら、怒り出すかと思ったけど」

「笹宮さんは女子高生に手を出さないでしょ? そこは信頼してます」


 出会って間もない頃はお互いに警戒し合っていたが、今ではこうして一緒に飯を食べ、『信頼』という言葉が出るようになっていた。


 人の関係はどう変化するかわからないものだ。


「それに結衣花さんが笹宮さんごときに、恋愛感情を持つわけありませんし」

「ごとき……って。……おまえ、本当に俺のこと嫌いだよな」


すると楓坂は俺の顔を覗き込むようにして訊ねてくる。


「……もしかして、隣人のことは隠しておいた方がよかったですか?」

「別にいいけど……。楓坂は嫌がると思ってたから」

「仕事に関してはあまり話しませんけど、それ以外のことなら何でも結衣花さんに話してますよ」


 楓坂はとにかく、結衣花に仕事中の姿を見られることを嫌う。


 真剣にやっている姿を知り合いに見られたくないだけと思っていたが、彼女の場合は少し事情が違うのではと思うようになっていた。


「前から思っていたが、なんで仕事のことを隠すんだ? ユーチューブの活動内容も詳しく教えてないんだろ?」


 すると楓坂は急に小声になり、弱腰な態度で下を見る。


「だって……、私って攻撃的じゃないですか。そういうところ、結衣花さんに見られたくないんです」


 ずっと疑問を抱いていたが、そんなことを考えていたのか。


 攻撃的とまでは思わないが、確かに楓坂は仕事になると強気の態度が目立つ。

 女性の彼女にとっては、あまり見せたくない姿なのだろう。


 落ち込んだ表情をする彼女を励まそうと、俺は言葉を捻り出す。


「まぁ……、その……なんだ。そんなに気にしなくていいと思うぜ。結衣花って何でも受け入れるところあるし」


 励まそうと思ったが、いい言葉が思いつかない。

 だが楓坂は俺の意図を理解してくれたのか、顔を上げてほほえむ。


「ふふふ。口ベタな人ってズルいですよね」


 ん? 俺、なにかズルいことをしたか?

 むぅ……。よくわからないが、とりあえず元気を回復してくれたみたいだ。


 すると彼女は下を向いて黙ってしまい、時折チラチラとこちらに視線を送ってくる。


 しぐさの一つ一つが普通の恋する女子大生そのものだ。


 っていうか、……なんか喋ってくれよ。

 微妙な空気が流れてんだけど。


「あ……あー、そうだ。ちょっと聞きたいことがあるんだが」

「強引に話を変えてきましたね」


 しかたないだろ。

 俺だって恥ずかしいんだ。


「女子高生がスイーツを食べたがるのって、食欲とは違うのか? 結衣花と話していると、その辺の会話がかみ合わなくてな」

「んー。食欲というところもありますけど、ちょっと違いますね」

「というと?」


 楓坂は指を立てて、俺にわかりやすいように説明を始める。


「女子高生にとってスイーツは、オシャレとかテーマパークと一緒なんですよ。みんなで楽しみたいんです」

「……その発想はなかったな」


 男の大半はスイーツと言うと美味いかどうかで判断しているが、女子の場合は別の楽しみ方をしているということだったのか。


 そういえばスイーツ男子って一人で食べているイメージがあるけど、女子は友達と一緒に食べているイメージがある。


「ああ見えて結衣花さんはスイーツ好きですからね。くれぐれも結衣花さんの機嫌を損ねないように注意してください」


 なるほどと、俺はうなづく。


「となると、俺のお笑いスキルが重要ってことだな」

「あなたって本当にアホですよね。すき」

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

☆評価・ブクマ、とても励みになっています。


次回、結衣花とお出かけ。笹宮は大丈夫なのか!?


投稿は、朝・夜の7時15分ごろ。

よろしくお願いします。(*’ワ’*)

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― 新着の感想 ―
[一言] (。-`ω-)ンー やっぱり楓坂ちゃんのデレが一番効くな…俺にw
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