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9月4日(金曜日)恋のプロデューサー再び

 金曜日の夜。

 風呂から上がった俺は仕事部屋で情報誌を読んでいた。


 ピロリン♪ ピロリン♪


 電話が掛かってきたので取ってみると、それは中学一年生の妹・愛菜からだった。


「ちーっす。兄貴、生きてる?」

「今生き返ったところだ」

「マジで!? さっきまで死んでたの!?」

「すまん。この先のネタを用意してないんだ」

「いいね、その落とし方」


 初手から全力投球で元気をぶつけてくるところは全然変わらないな。

 いくら血が繋がっていないとはいえ、俺とは正反対の性格だ。


「それで要件はなんだ」

「明後日の日曜日って休みだよね?」

「ああ、家でのんびりする予定だ」

「じゃあ、結衣花さんと『ゆるキャラ展』へデートに行こう!」


 ゆるキャラ展のことは、さっきの雑誌にも記載されていた。


 全国のゆるキャラを集めたイベントで、以前流行したご当地キャラや、絵本・アニメなどの人気キャラが登場する。


 どうやら大手広告代理店が絡んでるらしい。


 だが、愛菜の話で問題なのはそこではない。


「……どうして俺と結衣花がデートする話になってるんだ」

「まぁ、まぁ。待ち合わせは、以前一緒に入ったカフェがある駅ビル。時間は午前十時半だから。じゃあねぇ、ばぁ~い!」

「あっ! おい!」


 一方的にデートの約束を決めて、一方的に電話を切りやがった。


 結衣花と愛菜はオタク友達で、とても仲がいい。

 問題は、愛菜はなぜか俺と結衣花をカップルにしようと何かにつけて画策してくることだ。


 もともと強引なところはあったが、最近特にその傾向が強いので困る。


 ピロリン♪ ピロリン♪


 再び電話が掛かってきた。


 今度は結衣花だ。

 おそらく愛菜の話を聞いて、確認のために連絡してきたのだろう。 


「こんばんは。お兄さん」

「よぉ。結衣花」

「さっき愛菜ちゃんから連絡があって、日曜日はお兄さんと一緒だって聞いたから電話をしたんだけど……」


 やっぱりな。

 ったく、俺だけならまだいいが結衣花まで巻き込んだら迷惑だろ。


「すまんな。妹が勝手なことを言って」

「ううん。ゆるキャラ展はどっちにしても行くつもりだったから」

「ったく、あいつ最近ずっとこんな調子で困ったぜ」

「愛菜ちゃんなりに、お兄さんへの愛情表現だとおもうな」

「そうなのかねぇ……」


 すると結衣花は「ん~」と考え込むような声を出した。


「ねえ。せっかく愛菜ちゃんが言ってくれてるんだし、デートっぽいことをしようよ」


 さすがにこの発言には驚いた。

 すかさず、俺は返事をする。


「いやいや……。俺とお前がデートしたらヤバいだろ」

「本当にするわけないじゃん。デートコースを散策するだけ。それならセーフでしょ?」

「それってデートと違うのか?」

「私達が違うって思ってるんだから違うんじゃない。わかんないけど」


 どうなんだろうか。

 俺の感覚ではもうデートだと思うが、しかし本人達にその気がないのなら、それはデートではなくただの散歩と言えなくもない。


 うーん。まぁ、いいか。


 妹のやったことに巻き込んでしまったんだ。

 罪滅ぼしというと大層だが、日ごろの感謝も込めてなにか喜ぶようなことをしてやろう。 


「だがデートコースと言っても俺はよくわからんぞ」

「そこは大丈夫。最初から期待してないから」

「ひどくない?」


 急に結衣花の声が遠くなり、なにか操作をしながら電話をしている様子が伝わってくる。


 おそらくスマホで情報を確認しながら、通話をしているのだろう。


「とりあえず、展望台とスイーツ。これは外せないかな」

「んん? ちょっと待て」

「おすわり」

「くぅーん……じゃねえよ」

「ノリいいね」


 なんか勢いでやってしまったぜ。


「そうじゃなくて、デートコースで展望台はわかるが、なんでスイーツなんだ」

「普通、そうじゃない?」

「マジで?」


 俺の感覚がおかしいのか?


 デートコースといえば展望台は定番のスポットだろう。

 しかしスイーツはスポットではなく、立ち寄った場所で食うだけのものだ。

 デートの目的にするのはおかしいと思う。


 これが世代による価値観のズレというものか……。


 すると結衣花は不思議そうに訊ねてきた。


「っていうか、せっかくお出かけするのに、なんでスイーツ食べないの?」

「別にコンビニでも買えるだろ」

「そういうのじゃなくて……。はぁ……、忘れてた。お兄さんってお兄さんだった……」


 まるで俺の存在が、特殊な生物かのような言い方だ。


「しょうがないなぁ。日曜日はスイーツの極意を教えてあげるよ」

「俺……そこまで甘党ってわけじゃないんだが……」

「いいから、いいから」


 そう言って結衣花は電話を切ってしまった。

 

 ひょんなことからデートっぽいことをすることになったが、やはり女子高生が考えるスイーツの立ち位置がわからない。


 さて、どうしたものか……。

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

☆評価・ブクマ、とても励みになっています。


次回、結衣花と出かけることが楓坂にバレてしまう!?


投稿は、朝・夜の7時15分ごろ。

よろしくお願いします。(*’ワ’*)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 愛菜ちゃん、相変わらず力業だw だが、それが笹宮くんには丁度いいね\(^o^)/ [気になる点] えっ?楓坂ちゃんに相談?
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